奥野修司著作のページ


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948年大阪府生、立命館大学卒。78年から南米で日系移民調査に従事。帰国後ジャーナリストとして活躍。2006年「ナツコ−沖縄密貿易の女王」にて大宅壮一ノンフィクション賞および講談社ノンフィクション賞をダブル受賞。

 


             

●「不登校児 再生の島」● ★★

  

 
2012年04月
文芸春秋刊
(1600円+税)

  

2012/05/23

  

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沖縄本島の南部沖に浮かぶ久高島(くだかじま)。その島にある“久高島留学センター”は、いわゆる農村留学施設です。
本書は、上記センターに入所してきた中学生の問題児あるいは不登校児たちが、センターでの共同生活を通じて再生していく姿を描いたノンフィクション。

意図した訳ではないが結果として不登校児が多く入所することになったと言います。
親たちの心境としては最後の砦のような気持ちで子供を託すものの、その一方で島に大切な子供を置き捨てるような責苦も感じるらしい。しかし、暫くの期間後に我が子たちに再会すると、その変化ぶりに驚愕するという。
家あるいは地元では他人とうまく関係が結べずに問題児、あるいは極め付けの不登校児たちが、この島に来ると何故健全化するのか。

子供たちにとっての現代社会の問題点が、本書において否応なく浮き彫りにされている気がします。
現代社会そのものが悪いとは言えないでしょう。でも、子供に与え過ぎて逆に奪っているものは何か、ということを考えてみるきっかけになる一冊でしょう。
大人にとって便利・好都合であっても、子供たちにとっては必ずしもプラスにはならない、ということが多いと気付かされます。
センター代表の
坂本氏、家が居心地良過ぎると、学校に行かなくても良いということになってしまう。センターでは、学校にいかないと掃除など用事を言いつけられるだけだし、遊ぶゲームもない、それなら学校へ行こうかとなるのだと。成る程なぁと感じる次第です。
集団生活である故に小さな島ですから、否応なく島民も含め人との関係が生じる。無視されていない、気遣われていると感じることが、子供たちにとっては救いなのだという。

スナック菓子もゲームもない代わりに身体を動かすこと多く、規則正しく、食事面からも健康的な生活。それらによって気持ちも変わり、子供たち同士から好影響も生まれる。
一人一人の子供たちのドラマを知るだけでも、考えさせられること大です。
本センターの生活が子供にとっては理想であると断定する気はありませんが、考えてみるべき様々な問題がこの一冊の中に凝縮されている気がします。その点でも本書の価値は大きい、と思います。

プロローグ:ゴンの告白/1.不倶戴天の敵/2.宇宙人の涙/3.ぼくには友達がいない/4.ふたつの顔をもつ少女/5.筋金入りの不登校児/6.なが〜い夏休み/7.ユウスケを連れ戻せ/8.センターの誕生/9.いまだ変身の途上/10.親が変われば子も変わる/11.不良少年の奇跡/12.最後の3000メートル/あとがき:子どもたちのその後

  


  

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