これは楽しい、そして、とても嬉しい一冊!
古本屋さんといえば、店主はまず男性、しかも年配の、と連想してしまうのですが、本書で紹介しているのは女性が店主を務める古書店ばかり。
そんな女性古書店主が増えたのは、ここ10年くらいのことなのだそうです。
本書で紹介される古書店はどれも魅力一杯。その理由は、その店を作り上げた女性店主自身がとても個性的で、かつ魅力的であるというに尽きます。
男性古書店主に比べて発想が自由なのでしょうか。型に嵌ったところがなく、皆さんどなたも実に伸び伸びと店作りしているという印象を受けます。
古書だけでなく、包装紙も古着も、良いと思えば一緒に店に並べる商う。雑貨店やカフェと一緒の店作りもOK。
ただし、必ずしも儲かるとは言えない。当初、店の赤字を補填するため郵便局でバイトしたという店主もいた程ですから。
それでも、どの店を見ても気分がすこぶる良くなるのは、店主の好きなように楽しく店作りをしているからでしょう。
まず、彼女たちが様々な経歴を越えて古書店経営に行き着いた、ということに注目したい。
それだけに、思考や行動の幅がとても広いし、自分のやりたいと思うままの店作りをしています。
昔ながらの古書店スタイル、儲けなくてはという固定観念に囚われていないところが最大の魅力、と私には感じられます(もっとも儲けようと思って古書店をやる人はいないと思いますが)。
個人でいきなりネット書店から起業、今も古書組合に入らないまま、というのがひとつの良い例でしょう。
本書を読んでいると、ただ読むだけに留まらない本の魅力を改めて見い出した気分になります。
他の何かと組み合わせることによって本はまた新たな魅力を発揮する。本って、良いですよねぇ。
革命的だったという古書日月堂、東京駅前の八重洲地下街にある八重洲古書館、ネット書店から始めて今は喫茶店と共同経営という海月(くらげ)書林、イベント会場に早代わりするというカフェスペースのある火星の庭、お客さんが店作りをしてくれるというトンカ書店を初め、
400字程度の解説を添えているという古本海ねこはさぞ大変なはず。
どれも行ってみたくなる店ばかり。いずれ本当に行ってみよう、と思います。
はじめに
・古本界の常識をくつがえした(古書日月堂・佐藤真砂さん)
港区
・女性だけで店をまかされて(八重洲古書館・渡辺明子さん)
中央区
・オンナコドモの本をネットで(海月書林・市川慎子さん)
杉並区
・メニューも本格派の古書カフェ(火星の庭・前野久美子さん)
仙台市
・古本と和雑貨が並ぶ(旅猫雑貨店・金子佳代子さん)
豊島区
・絵本と古本とギャラリーと(ブックギャラリーポポタム・大林えり子さん)
豊島区
・鉱石標本と愛猫にかこまれて(蟲文庫・田中美穂さん)
倉敷市
・若者もお年寄りも気軽に(トンカ書店・頓花恵さん)
神戸市
・400字程度の解説をそえてネット上に(古本海ねこ・場生松友子さん)三鷹
・新感覚のデザインワークで(興居島屋・尾崎澄子さん)
杉並区
・豆本、限定本、美しい本を売る(呂古書房・西尾浩子さん)
千代田区
・同時代を生きた映画たちと(石田書房・石田由美子さん)
千代田区
・父子二代で地元に根ざす(山猫館書房・水野真由美さん)
前橋市
女性が古書店主になるには
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