中曽根康弘著作のページ


1918年群馬県生、東京帝国大学法学部卒、内務省入省。海軍主計少佐、警視庁監察官等を経て、1947〜2003年衆議院議員。59年科学技術庁長官、67年運輸大臣、70年防衛庁長官、72年通産大臣、80年行政管理庁長官等を歴任し、82〜87年内閣総理年大臣。2012年現在公益財団法人世界平和研究所会長。

 


 

●「中曽根康弘が語る戦後日本外交」● ★★☆
 聞き手:中島琢磨・服部龍二・昇亜美子・若月秀和・道下徳成・楠綾子・瀬川高央


中曽根康弘が語る戦後日本外交画像

2012年10月
新潮社刊

(2800円+税)

  

2012/12/04

   

amazon.co.jp

外交・防衛分野における気鋭の研究者7人が、戦後日本外交に長く携わり首相の座にもあった中曽根康弘氏に戦後外交のポイントを質す、という形で語られた戦後日本の外交方針、外交交渉の内幕の一切を語る貴重な証言。

中曽根元首相については、佐藤栄作後の“三角大福”の頃から4人に次ぐ存在として認識していましたが、当時は“政界風見鶏”と言われ一般的には必ずしも評判は良くありませんでした。ところが首相になるや印象は一転、確かな見識とブレることない方針で日本を導き“大統領的首相”という評価をものにした政治家、というのが私の印象です。
政治家として特に何処が優れていたのかというと、海軍士官として太平洋戦争に従事した経験が大きかったのかもしれませんが、外交交渉・防衛分野で一貫した政治見識を備えていたからではなかったかと思います。
冒頭部分で、党人政治家が行う外交と官僚出身政治家が行う外交の違いについて言及されていますが、成る程と感じた次第。

「人間的信頼関係と友情がトップ間に結ばれているのが、他の国にも拡大していく。その基軸はアメリカなんだ」という元首相の言葉は強く印象に残りました。米国レーガン元大統領とのロン・ヤス関係だけでなく、韓国の全斗煥元大統領、中国の胡耀邦元書記、ソ連のゴルバチョフ元大統領らとの多元的な首脳交流は、極めて興味深いものがあります。
また政治家として、自主防衛、憲法改正、戦略的外交という方向性を常に考えていたとのことですが、その説くところは傾聴に値します。
一人の政治家だけの視点から語られたことですし、自画自賛もないとは言えませんが、その行った政治が適切なものであったかどうかは、事実が明らかにしていることと思います。

戦後の日本外交をつぶさにかつ実証的に知り、日本の今後を考えるうえでも価値ある書。
特に最後の
「中曽根外交を総括する」「外交と人生」は読み応えいっぱいです。なお後者では、自身以降の総理大臣評も外交・防衛政策面から語られており、見逃せません。
大部ですが、お薦めしたい一冊です。

はじめに/
第T部 首相就任まで
培われた外交意識/終戦直後と吉田外交/革新的保守主義/安保条約と岸内閣/キル・ザ・タイム/高度成長期の日本外交/非核三原則の成立/沖縄返還と密約/佐藤内閣の防衛庁長官/通産相として直面した石油危機/経済大国外交の模索/冷戦期の安全保障と首相就任前夜/
第U部 首相期
ダイレクト電話で始動した中曽根外交/ロン・ヤス関係の構築/ウィリアムズバーグ・サミット/軌道に乗る中曽根外交/戦後外交の総仕上げ/揺らぎ始めた冷戦構造/西側の結束強化と靖国問題/貿易摩擦と経済大国の役割/内憂外患にいかに対処したか/ソ連崩壊の予感と胡耀邦の失脚/ベネチア・サミット/中曽根外交を総括する/
第V部 首相退任後と外交概観
首相退任後の日本外交/21世紀の新潮流/外交と人生/
おわりに

   


  

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