松田哲夫著作のページ


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947年東京生、都立大学人文学部中退。70年筑摩書房入社、以後編集者として活躍。2006年現在筑摩書房専務取締役・ちくまプリマー新書編集長、パブリッシングリンク代表取締役社長。
著書に「印刷に恋して」(晶文社・第3回ゲスナー賞本の本部門銀賞)、「編集狂時代」(新潮文庫)、「これを読まずして、編集を語ることなかれ。」(径書房)等あり。

 


             

●「に恋して」● イラストレーション:内澤旬子 ★★

  

 
2006年02月
新潮社刊

(2200円+税)

 

2006/04/02

 

amazon.co.jp

一冊の「本のかたち」ができるまで、その仕組み・苦労を丹念な取材をもとに案内してくれる書。
子供の頃から本が好きで、よく出来ているなぁと思いつつも、それを本なら当たり前のように感じてそれ以上調べてみようと思ったことはありませんでした。
その仕組みが初めて明らかにされる、本好きならすぐ飛びついてしまう一冊です。
文章だけなら雲をつかむような説明に終わったでしょうけれど、内澤旬子さんのイラストによる図解付き。それがあって初めてほほぉー、となります。

編集者となると装丁のことが気になるらしく、まずは装丁の話題から。そして実際に本を解体する、と続きます。
松田さん自身も束見本の作成を自分で試したりしてみて、「中本作り」、その後本を寝かせた後で「表紙くるみ」の工程へ。今は少ないけれど全集本時代には当たり前だった「函」作り。
それから川上に遡り、まずは紙作りの現場、次いでインキの現場、最後に印刷後の水性ニス・コーティング。どの工程を知るにつけても、ただひたすら「へへー(ひれ伏す意)」のひと言。
コスト削減のため機械化が進んだといっても、本作りの世界はまさしく職人芸の世界と感じられます。
本の世界にも電子化の波が押し寄せ、いずれそれが当たり前になるのだろうなァと安易に感じていましたけれど、それはもうとんでもないこと。
本の世界は、それ自体が文化、そして大切な職人芸の世界なのです。それがあってこそ「本」を読むのが楽しく、また「本」を大切にしようという気持ちが生れます。
やはり本は「本の形」をしていなくっちゃ。それを改めて感じた一冊です。お薦め。

※「ファンシーペーパー」が「ファンがいっぱい欲シー」の略、印刷用のものをインキと呼ぶため「インクジェット用インキ」となる、という部分には思わず笑ってしまいました。

【目次】ぼくは「本」に恋してる/思い出深い本を解体してみる/束見本を自分の手で作った/中本作りの大切さを痛感する/均して寝かせていい本を作る/紙の反りを活かす函作りの知恵/紙を抄く−巨大製紙工場見学記(上)/紙を抄く−巨大製紙工場見学記(下)/装幀用の紙ができるまで/色鮮やかなインキの世界を知る/インキのことをもっと知りたい/印刷後の表面加工にはこんな方法が/「印刷」から本作りを見直す
【取材先企業】(株)DNP製本・(株)岡山紙器所・王子製紙(株)春日井工場・日清紡績(株)富士工場・特殊製紙(株)・東洋インキ製造(株)・東京色材工業(株)・凸版印刷(株)・錦明印刷(株)

  


  

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