槇村君子著作のページ


雑誌ライター。ご本人曰く「原稿を原稿料ではなく原稿量で計るような女」であるとの由。30過ぎて結婚、嫁入り後の体験をまとめた「エラいところに嫁いでしまった!」にて単行本デビュー。

 


   

●「エラいところに嫁いでしまった!」● 




2006年5月
新潮社刊

(1200円+税)

 

2006/06/16

書店店頭で見て面白そうだと思ったのですが、実際読んでみると予想していた内容とだいぶ違う。
都会育ちの女性が、田舎の旧家の次男坊と結婚したばかりに味わわされた驚き、苦労の数々、とばかり思っていたのです。
ところが、このヨメ(著者のこと)自身、かなりの問題児。
まぁ、旦那となった磯次郎と共に2人とも常識外れなのですが、よく考えもしないでお台場の公団住宅に申し込んで当たった挙句家賃負担の重さに喘いだり。結婚式場をあてずっぽうに予約したり、招待客の数はせいぜい80人と言われて 300人だった姉ばかり贔屓していると怒ったり、と。
相当に誇張、自虐もあるのでしょうけれど、こんなヨメに迎え入れさせられた相手の方も大変だなァと感じた次第。
(嫁という考え方自体が相当古臭いのですけれど、本書の騒動はまさに“嫁入り”だからこそなのです)

都会育ちで自分本位な著者と田舎の旧家である舅・姑・旦那。双方の考え方の違いは真に大きく、バトルが繰り広げられてもそれはもう当然のこと。要はどっちもどっち、と言う他ない。
私は都会育ち、親戚も全て東京という具合なので判らないのですけれど、田舎の旧家の有り様というのはこういうものなのでしょうか・・・?
と思いつつ読み進むと、この旦那の実家自体も相当に度外れであることが判ってきました。この過激なヨメに同情したくなってしまうくらい。
お盆に帰省してお墓の掃除を命じられて裏山に登ったら、50近くの墓碑が全て家のお墓だったというのはまだ序の口。姑が6時過ぎに呻吟してから作り始めた夕飯が出来上がったのは、何と11時近く。その後皿洗いを引き受け終わったらもう丑三つ時だったとか。何なんでしょう、この生活は?!
嫌がったのに再び帰省させられた大晦日・正月は・・・・。
次々と怒りを爆発させたくなることが槇村さんの身に降りかかってきます。嫁というものをどう考えているのでしょう、田舎の旧家というのは??
傑作なのは、長男夫婦の影すら登場しないこと。長男の嫁はしっかりと実家の風習から逃げ回っているのです。

なにやら暴風雨のようなヨメ奮戦記を読んだ気分。著者の物言いはすこぶる過激なのですが、旦那の実家も遠慮するということがない。
我が家の場合は都会育ち同士で良かったなァ。これから結婚しようとする若い女性の皆さん、本書を読んで相手が田舎の旧家かどうか、十分に気をつけましょう。

釣り書きってなんですか?/学歴VS士農工商/会議室で嫁面接/足の臭い男と婚約/地味婚三百人で!/その結婚は待て!/蛭子様で式場バトル/ハネムーンは戦争気分で/嫁は一言も口をきいてはならないの掟/お好きに活けてよろしいのよの拷問/丑三つ時にゆずの種を拾う嫁/お大師講ってなんですか?/果てしなく広がる墓から/家宝の解説/逃げろ、槇村/ひたひたと嫁に迫る正月の影/ブリ、それも巨大な/ドンペリはこう飲むもんだ!/代理母まで突き進めの指令/試練は続くよ、どこまでも

   


   

to Top Page     to エッセィ等 Index