黒川祥子
(しょうこ)著作のページ


1959年生、福島県出身、東京女子大学文理学部史学科卒。弁護士秘書、ヤクルトレディ、デッサンモデル、業界紙記者等を経てフリーライター。家族の問題を中心に執筆活動を行う。息子2人を持つシングルマザー。2013年「壁になった少女・虐待−子供たちのその後」にて第11回開高健ノンフィクション賞を受賞。。

     


   

「誕生日を知らない女の子 虐待−その後の子どもたち ★★☆
  
                       開高健ノンフィクション賞



 
2013年11月
集英社刊
(1600円+税)

  

2014/01/25

  

amazon.co.jp

母親から虐待を受け児童養護施設に保護された子供たちが行った先は、何人もの里子たちを家族のように世話する“ファミリーホーム”。
そうしたファミリーホームの現場を取材し、母親から虐待された子供たちの痛ましい姿を知らしめた傑作ドキュメント。

先月、同じ内容のノンフィクションであるキャシー・グラス「ジョディ、傷つけられた子を読んでショックを受けた後に読んだ所為か、もうショックということはありませんでしたが、だからといって子供たちを痛ましく感じて堪らなくなる気持ちが変わる訳ではありません。
親と一緒にいられない事情から子供が施設にという事情なら、
佐川光晴「おれのおばさんにも描かれていて、それはそれなりに同情するところはあってもそれ以上のことはありません。
しかし、母親の虐待により保護された子供たちというのは、それとは全く異なります。風呂に入っても身体を洗うことを知らない、トイレを使っても尻の拭き方さえ知らない、などとはおよそ想像したこともありませんでした。そういうことが事実としてある訳です。
子供が子供らしく扱われたことがない、だからどう振る舞っていいのか学習していない。本能的に身に付けたことは、母親からの暴力に備えること、自分の感情のスイッチを切ること・・・・何ということでしょうか。

虐待を受け続けてきた子供たちのいたいけな姿、そして家庭と言える場所であるファミリーホームに引き取られて徐々に子供らしさを表していく姿。
“ファミリーホーム”の存在、こうした子供たちにとってはどんなに有り難い存在だろうと思うのですが、ファミリーホームが増えることよりも、本来は親による子供の虐待が無くなることが一番望ましいことでしょう。
本書は、子供たちを救うための最低限の努力かもしれませんが、大きな子供たちへの愛情があってこそ成り立つもの。
是非読んでいただきたいノンフィクションの一冊。


はじめに/1.美由−壁になっていた女の子/2.雅人−カーテンのお部屋/3.拓海−「大人になるって、つらいことだろう」/4.明日香−「奴隷でもいいから、帰りたい/5.沙織−「無条件に愛せますか」/おわりに

    


     

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