高 英起(コウヨンギ)著作のページ


Kou Youngki 1966年大阪府生、在日コリアン二世。大阪朝鮮高級学校から関西大学へ進み、大学在学中から北朝鮮問題に関わる。卒業後大阪市水道局に勤務するが、退職し98〜99年にかけて中朝国境の町・中国吉林省の延辺大学に留学。当時殆ど知られることのなかった北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮の内部情報を発信。帰国後はTVディレクターとして活動しながら北朝鮮取材を進めるが、中朝国境での活動が北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受けている。2010年からは北朝鮮情報専門サイト「デイリーNK」の東京支局長に就任。フリージャーナリストとして取材活動を続けながらTVやラジオのコメンテーターも務める。

 


 

●「コチェビよ、脱北の河を渡れ−中朝国境滞在記−」● ★☆


コチェビよ、脱北の河を渡れ画像

2012年10月
新潮社刊

(1300円+税)

  

2012/11/25

  

amazon.co.jp

たまたま蓮池薫「拉致と決断を読了したところで北朝鮮関連本が続くことになりましたが、「拉致と決断」が北朝鮮内部から見た観察記であるのに対し、本書は北朝鮮国外ながら極近接した現場からの観察記。両書を続けて読むと、北朝鮮に住む人々の生活苦の状態が立体的に浮かび上がって感じられます。

著者は在日コリアン二世で、父親は在日本朝鮮人総聯合会の熱心な活動者。しかし著者は、母親の強い意思の下で日本の学校に進学したものの、高校での学業不振から朝鮮学校に転入、但し大学はまた日本の大学へ。そこで知己となった李英和教授が8ヵ月間北朝鮮に留学して帰ってきた途端、「あの国はヤバい。一日も早くなんとかしなければ大変な事になる」「このままの食糧事情が続けば、間違いなく餓死者が出る!」と。そこから生まれ、著者も一員となったのが北朝鮮の民主化を訴えるNGO=RENK(救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク)だそうです。そして金正日時代となり、著者が脱北者の実情を知りたいと留学名目で向かったのが中朝国境の町「延吉(ヨンギル)」。
本書は、著者の延吉での体験とその後について語ったルポ。題名の
「コチェビ」とは、脱北難民孤児のこと。

延吉市で著者が何を見聞きし、それらについてどういう思いを抱いたか、またその後の出来事については本書を読んでもらう他ありませんが、元は父祖の故国であり、かつては北朝鮮=理想の国と信じた在日コリアン一世・二世の思いは複雑なようです。
生活苦に追われていると体制のことなど考えている余裕はない、というのは蓮池薫さんも語っていたこと。
プロローグは、
2011.12.19金正日総書記死去のニュースが飛び込んできた日のことですが、本書内容を象徴する書き出し。
即ち、金正恩時代になって北朝鮮は変わるのか変わらないのか、という問い掛け。そして、北朝鮮内で食糧難、生活苦に喘ぐ人々へ向かっての、何があっても生き延びて欲しいというエール、願いが本書に籠められていることを感じます。

プロローグ−Xデー/そうだ、延吉へ行こう!/脱北の町へ/脱北者との日々/衝撃映像/脱北者のその後/北朝鮮デジタル革命/金正恩の実母/エピローグ

   


  

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