10歳の時に子供特派員としてソ連のモスクワを訪れた著者が、25年を経て再び現ロシア第二の都市であるサンクトペテルブルク(ソ連邦時は「レニングラード」)を訪れてのルポ。
当然ながら25年前の記憶と現在を照らし合わせての現在ロシアについて語るルポと予想したのですが、その予想は簡単に外されます。
主内容は、サンクトペテルブルクという特異な(ピョートル大帝が強引に湿地地帯に作った人工的な)街についての語り。
その中でも、突然に行われたドイツ軍の侵攻、その結果としてのレニングラード包囲戦の歴史が、あたかも現在の出来事のようにリアルに語られていきます。
そして、その包囲戦の最中に作曲され演奏された、ショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」と呼ばれる曲のこと。
この部分、良くも悪くも、レニングラードっ子の意識の高さを強く感じさせられます。
さらに上記に追加して、ゴルバチョフ大統領とその後のクーデターによるソ連邦崩壊という歴史事実について、小林さんは知り合ったロシアの人たちの生の声を聞き取ろうとします。
そしてさらに、ソ連邦時代と現在ロシアとを比較しての声を聞いてみる、という内容。
いわば、レニングラード包囲戦の歴史+ソ連邦崩壊というドラマについてのルポ、と言って良いでしょう。
私においてレニングラードと言えば、すぐ思い出すのは35年前に読んだNHK取材の単行本化「レニングラード物語」と、本書中でも触れられたプーシキンの物語詩「青銅の騎士」。
思えば、ソ連邦時代についての本もそれなりに読んできました。ソルジェニツィンは別として、エレンブルクの小説「雪どけ」、川崎浹の家族滞在記「複眼のモスクワ日記」等と。
ですから私にとって本書は、それらに連なる一冊という次第。
※現在の大統領プーチンのことも語られていますが、別の本にてロシアという国は常に独裁者の元にある、という意見を読んだことがあります。如何にもと、今でも強く印象に残っている言葉です。
はじめに/1.ナチスの進撃/2.レニングラードのいちばん長い日/3.死のコンサルタント/4.街はまだ生きている/5.人生の奇跡の贈り物/最終章.グッバイ、レニングラード/あとがき
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