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米国人。外国暮しが長く、同志社大学でも教鞭を執った。アメリカ映画「ビカミング・ジェーン」の歴史考証を担当。

 


 

●「ビカミング・ジェイン・オースティン」● ★★☆
 
原題:Becoming Jane Austen”     訳:中尾真理




2003年発表

2009年03月
キネマ旬報社
(3200円+税)

 

2009/05/14

 

amazon.co.jp

表題は、ジェイン・オースティンになる、という意味。
彼女になったつもりで、ということでしょうか。
ジェイン・オースティンとは、英国を代表する女性作家。本書はフィクションに非ず、あくまで彼女の評伝です。
(映画「ビカミング・ジェーン」の原作とも言われる)

彼女の折々の心境をかなりつっこんで大胆に解釈しているところがありますので、読んでいくとつい彼女自身になったような気分になります。
ただし、そうした感想を抱けるようになるのは後半になってから。
前半は、オースティン家の系類・縁戚状況、経済状況が前の世代に遡って詳細に語られていきます。オースティン家の経済状況が、女性作家オースティン誕生の根源的な出発点と言わんばかりに。
ただ、一族だからなのでしょうか、名前は同じだけれど異なる人物というケースが幾度もあるので、前半はかなり混乱し、頭を悩ませます。

本書の白眉は、折角あった求婚を何故彼女は断ったのか、何故作家の道を選んだのか(必要があったのか)、何を小説の素材にしていたのか、何故あれだけ見事な物語を生み出すことができたのか、という点。
そしてさらに、作家としてどれだけの自信を持ち、作品発表にどんな計画をもっていたのか。
それは即ち、ジェイン・オースティンとはどのような作家なのか、という答えに繋がっています。

繰り返しになりますが、本書は大胆にオースティンの心境を推し量り、断定的に描いています。
だからこそ本書後半、小説家として立たんとする彼女の姿を、小説を読むようなスリリングさ、興奮をもって味わうことができるのです。
前半はかなりシンドイかもしれません。でも作家として歩み出す最後の3章はそれを補って面白い。
オースティン・ファンなら、たっぷり楽しめる一冊です。

遺贈/家庭/情景/十分な見習い/歴史/恋愛と技法/場所/脱出の方法/お金/仕事/世間/肉体

     


 

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