故郷オハイオ州ベクスレイで過ごした少年時代、アレン、ボブ、チャック、ダン、ジャック(ABCDJ)
の5人は親友だった。
そして57歳になったある日、その内の一人ジャック・ロスが末期癌の宣告を受ける。彼に残された時間はそう長くない。かつての親友たちはジャックのため再び故郷に集まります。
そして著者ボブ・グリーンは、ジャックの散歩に付き添い、かつての少年時代の思い出をひとつずつ確かめ歩くような時間を一緒に過ごす。 決して本書は暗い内容ではありません。親友たちと過ごした日々のこと、そして現在の日々が淡々と描かれています。
ちょうど先日読んだばかりの重松清「カシオペアの丘で」も、癌宣告を受けた主人公が故郷に戻って少年時代の友人たちと過ごす最後の日々を描いた作品でした。しかし、同作品が小説であるのに対し、本書は実際のこと。
ジャックは特にドラマティックな人生を送った訳でも、何かを成し遂げて有名になったという人物でもありません。ですから、本書の内容は極めて地味なものです。
しかし、著者がジャックという親友のことをひとつずつ思い出していくに連れて、彼がいつも他人のことを気にかける、いかに篤実で得難い人柄の持ち主であったかが伝わってきます。
体調が悪化して辛い状況においてさえ、見舞いに来てくれた人たちの気持ちを思い、がっかりさせたくないと気遣っているのですから。
筆者はジャックになるべく多くの時間寄り添おうとし、ジャックはできるだけ最後まで平常な日々を過ごそうとする。
私の年代になるとこうした本を読むたび、いつか自分にも起きることかもしれないと思いながら読むようになってきました。所詮どんな人物にもいずれ死は訪れるもの。そうであれば、どう生きたか、どう死を迎えたか、そして自分自身が納得できるものだったかが大切なように思われます。
静かで、そしてあっさりとした終局。それもまたジャック・ロスという人物に相応しいこと。そこに至って「you
know you should be glad」という原題が如何に本書に相応しいものであるかを感じます。
しみじみとした味わいを心に深く感じる作品です。
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