薬丸 岳
(がく)作品のページ


1969年兵庫県明石市生、駒澤大学高等学校卒。2005年「天使のナイフ」にて第51回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。16年「Aではない君と」にて第37回吉川英治文学新人賞、17年「黄昏」にて第70回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。

  


       

「刑事弁護人 ★★☆   


刑事弁護人

2022年03月
新潮社

(1950円+税)



2022/05/28



amazon.co.jp

かねてから薬丸岳さんの存在は知っていましたが、今回が初読。
薬丸さんの他作品を読んでいないので比較はできませんが、迫真かつ重厚で、読み応えたっぷりのリーガルサスペンス。

事件は、ホストの
加納怜治が自部屋で殺されて発見されたもの。被疑者として逮捕されたのは、現職警察官の垂水涼香・33歳
そして弁護を引き受けることになったのは、刑事事件には新米の
望月凛子・30歳と、同僚弁護士の西大輔・37歳
この西大輔が変わり者。元警察官で、被告人の弁護をせず、その本性を暴き立てて法廷で被告人から激昂される等々、検察側から歓迎すらされている弁護士。

拘留された涼香、加納の部屋で乱暴されそうになり、思わず酒瓶で頭を殴ったところ、死んでしまった、と説明。
しかし、どこか不自然。何かを隠しているのではないか。
被告人の利益のために行動するのが弁護士、と考える凛子に対して、西は真実を明らかにすることが責任だと主張し対立。

凛子と西が調べていく中、次々と思いがけない事実が明らかになっていきます。その先には全く異なる真相があるのか?

法廷ミステリで私が好きなのは小杉健治作品。ヒューマン・ミステリとも言われる作品が多い。
本ストーリィにおいても、各人の過去、その人間性が浮かび上がってきますが、小杉作品が人間に主眼を置いているのとは違い、本作はミステリ、サスペンスという処にやはり主眼があるように感じます。
その分、弁護士である凛子、西それぞれが抱えた過去、思い。被告人となった垂水涼香が抱えてきた、あるいは隠してきた思い。そして、玉ねぎの皮を剥くようにして二人が事件の真相に迫っていく展開と、まさにてんこ盛り。

何といっても冒頭から最後の最後まで、登場人物(
日向清一郎、須之内彩等々)も多彩で、読み応えたっぷりです。
被害者、加害者、被告人、証人、それぞれの思いが交錯して複層に満ちたストーリィを作り上げています。
したがって、一時も気を抜けない力作。お薦めです。

           


  

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