辻堂ゆめ作品のページ No.2



11.ヒマワリ高校初恋部!
(改題:初恋部 恋はできぬが謎を解く)

12.
あの日の交換日記

13.またもや片想い探偵 追掛日菜子

14.十の輪をくぐる

15.ようこそ来世喫茶店へ

16.トリカゴ

17.二重らせんのスイッチ

18.君といた日の続き

19.答えは市役所3階に 

20.サクラサク、サクラチル 

【作家歴】、いなくなった私へ、コーイチは高く飛んだ、あなたのいない記憶、悪女の品格、僕と彼女の左手、片想い探偵追掛日菜子、今死ぬ夢を見ましたか、お騒がせロボット営業部!、君の想い出をくださいと天使は言った、卒業タイムリミット

 → 辻堂ゆめ作品のページ No.1


山ぎは少し明かりて

 → 辻堂ゆめ作品のページ No.3

 


                

11.
「ヒマワリ高校初恋部! ★☆
 (改題:初恋部 恋はできぬが謎を解く)


ヒマワリ高校初恋部!

2020年01月
LINE文庫

(630円+税)

2021年06月
実業之日本社文庫


2021/05/31


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新任校長の、生徒は全員何らかの部活動を、という方針に慌てたのが、帰宅部の東風晴香(ハル)
それならと、事実上の帰宅部継続狙いで「初恋部」を立ち上げたのですが、あろうことか3人の入部志願者が現れ・・・。

自分よりかっこいい男子がいないという
葛西菜摘(なっちゃん)、歴史人物より教養ある男性がいないという長南千晶(アキ姉)、学年一の美少女ですが人を好きになったことがないという北海芙由子(ふゆりん)の3人、それぞれの理由により未だ初恋経験がないと言い、初恋部入部条件をクリア。

ハルの思惑に反して3人に気おされるように初恋部の活動が始まるのですが、初恋ができる方法を探し当てる代わりに、毎度ミステリの謎解きを請け負う羽目に。
そのうえ、4人の活動の結果はというと・・・・。

愉快な、というより微笑ましい学園青春ミステリ。


でも恋愛成就なんて、稀な出来事だと思いますよ。
実際は、特に初恋もしたことがない、という生徒の方が大半なのではないでしょうか。
そのことも踏まえ、がんばれ、初恋部!


プロローグ/1時間目:恋は盲目と言うけれど/2時間目:幽霊だって恋をする/3時間目:古典は恋の入門書/4時間目:嗅ぎ分けて恋/エピローグ

            

12.
「あの日の交換日記 ★★★


あの日の交換日記

2020年04月
中央公論新社

(1600円+税)

2024年03月
中公文庫



2020/04/28



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好いなぁ、辻堂ゆめさん。素敵だなぁ、本作。
7つの交換日記に隠されたミステリ、そしてその真相が判った時にもたらされる温かな感動。

連作日常ミステリ。でもそこにはミステリを超えた優しさ、温かさがある感動、ふと初期の加納朋子作品に親しんだ頃のことを思い出させられます。
とはいえ、加納朋子さんと辻堂ゆめさんの間には、ミステリの趣向においてかなり違いがあると思いますし、辻堂ゆめ作品にはいつも若々しさを感じます。
その中でも本作は、清冽さと熟練を感じます。是非お薦め!

「入院患者と見舞客」:長期入院している小学生の愛美と担任女性教師との間に交わされる交換日記が中心。第2話以降のストーリィ全ての始まり、そして感動の始まりとなる篇です。
 
「教師と児童」:同級生の女子を殺したいと交換日記に書いた生徒と担任女性教師との交換日記。
「姉と妹」:一卵性双生児である姉妹間の交換日記。双子なのにこんなに憎み合うなんてあり得るのでしょうか。
「母と息子」:自閉症の晃太と母親との交換日記。大好きな井上先生が交換日記を続けられなくなり、母親が代役に・・・。
「加害者と被害者」:交通事故で重傷を負わせてしまった女性教師の元に、謝罪のため毎日通う礼二。彼女から依頼され、交換日記を始めるのですが・・・。
「上司と部下」:オフィス家具を販売する小さな会社が舞台。何と営業日報がまるで交換日記のような有様に・・・。ちょっとした可笑しさとロマンスが嬉しい。
 
「夫と妻」:切迫早産で入院した妻と夫との間に交わされる交換日記。それまでの6話を総括するような篇。
7話に登場した全ての人たちに幸あれ、と祈りたくなります。
 
どの章にも、直接あるいは間接に、交換日記という方法を提案した、ある女性教師の姿があります。
こんな教師がいてくれたらと思う程、素晴らしい女性教師。たとえストーリィの中のことに過ぎないといっても、彼女の姿に接することができたことは、読み手にとっても幸せなこと、そう思います。

 
1.入院患者と見舞客/2.教師と児童/3.姉と妹/4.母と息子/5.加害者と被害者/6.上司と部下/7.夫と妻

                   

13.
「またもや片想い探偵 追掛日菜子 


またもや片想い探偵 追掛日菜子

2020年10月
幻冬舎文庫

(750円+税)


2020/10/17


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“推し”イノチの余りストーカー的行動に走る女子高生子を探偵役に据えた片想い探偵 追掛日菜子シリーズ第2弾。

ライトノベル的ミステリですが、辻堂ゆめ作品とあれば、読み逃しはしたくない処で、読書。
前巻同様、なんだかんだと批判しつつも妹を心配して巻き込まれる大学生の兄=
翔平がワトソン役。
ストーリィの趣向、事件の発生&解決パターンは、前巻どおりです。

「特撮俳優に恋をした。」:日菜子推し(以下同)の人気特撮ドラマ<スーツアクター>が強盗致傷容疑で逮捕、真相は?
「お巡りさんに恋をした。」:交番勤務の巡査が背後から殴られ昏倒。その犯人は、理由は?
「クイズ王に恋をした。」:TV番組で話題のクイズ王、事前に問題を横流しされていた疑惑。さてその真相は?
「友達のパパに恋をした。」:同級生の父親が営むラーメン店にコバエ混入というネット書き込み。果たして真相は?
「人間国宝に恋をした。」人間国宝の陶芸家が弟子の作品を自分名義で発表?  日菜子の行動で明らかになった真相は?

1.特撮俳優に恋をした。/2.お巡りさんに恋をした。/3.クイズ王に恋をした。/4.友達のパパに恋をした。/5.人間国宝に恋をした。

           

14.
「十(とお)の輪をくぐる ★★★


十の輪をくぐる

2020年11月
小学館

(1700円+税)

2023年12月
小学館文庫



2020/12/20



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まず驚きました。
あの日の交換日記も素晴らしかったのですが、これはもう一段も二段もステップアップした、母・自分たち夫婦・高二の娘と三世代を結び、2つの時代を描いた感動長編。
20代でこれだけの作品を辻堂さんが書き上げたことに驚くと共に感嘆します。これはもう、凄いこと。

舞台となる時代は、2回目の東京オリンピックが開催される筈だった前年の2019年と、1958年から東京オリンピックが開催された1964年まで。その2つの時代が交互に綴られます。
題名「十の輪」の意味は読むまで分かりませんでしたが、オリンピックの五輪x2ということでしょう。

現代の主人公である
佐藤泰介は定年間近の58歳。子どもの頃から母親に特訓されバレーボールに熱中してきましたが、大学バレー部で見切りをつけスポーツジム運営会社に就職、今は苦手なデータ管理の部署に異動させられ、パソコンに悪戦苦闘の日々。
大学バレー部で出会った妻の
由佳子は、両親に似てバレー好きな娘のサポートに尽力し、その萌子は今バレー強豪校で2年生ながらエースアタッカー。
しかし、母親の
万津子は認知症となり、仕事のストレスに加えて泰介は毎日苛々するばかり。
そんなある日、母がふと漏らした
「私は・・・東洋の魔女」という呟きに、母はどんな人生を送って来たのだろうかと、初めて知ろうとします。

母の万津子、息子の泰介、それぞれの時代での、人生における幾つもの困難事が描かれます。
まず万津子の時代、九州の農家で6人兄姉妹の三女に生まれ、中卒で愛知県にある紡績工場で女工、呼び戻されて見合い結婚してからの苦労、そして何のあてもないまま東京に出て、女手ひとつで2人の息子を育て上げる。そこにどんな決意と勇気があったのか。
一方、息子の泰介は、身勝手で短気で怒りっぽく、認知症の母親に対しても命令口調で何の優しさもない、酷い性格の人物と思えてしますのですが・・・。

ミステリ作家の辻堂さんにしては、初の非ミステリ作品? いやいや本作にもミステリ要素はあるのです。
泰介、何故あんな酷い性格をしているのかという疑問もありますが、それよりももっと奥深いミステリは、泰介が母=万津子の辿って来た人生を知ろうとする処にあります。

辻堂さんには珍しい人生劇だなぁと思って読み始めたのですが、最後は万津子の我が子を思う強靭な愛情と信念、そして万津子から夢を引き継いだ孫娘=萌子の試合での奮闘に胸が熱くなり、感動でいっぱいになる心を抑えられませんでした。
 是非、お薦め!

               

15.
「ようこそ来世喫茶店へ−永遠の恋とメモリーブレンド− ★☆
  Welcome to the coffee shop of the next world


ようこそ来世喫茶店へ

2021年01月
スターツ出版文庫

(630円+税)



2021/02/28



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カフェの店員になることが夢だった女子大生の未桜・18歳は、人気カフェの面接へ向かう途中、10歳くらいの少年から声を掛けられます。
何と、八重樫未桜はもうすぐ死去するので、その時を迎えたら速やかに来てくださいと、
「来世喫茶店」のチケットを手渡してきます。しかし、チケットの年月日が誤り。
その少年=
アサくん(笹子旭)の背を押し、生ける身で来世喫茶店にやってきた未桜は、超イケメンのマスター・静川にうっとり、理想の喫茶店だったこともあり、ここで働きたいと強引に主張し、まんまと店員に収まります。
そこから始まる、死んだばかりの人を迎え、来世に向かって送り出す来世喫茶店を舞台にした、連作ファンタジー&ミステリ。

来店者に提供するのは3種類の飲み物とサービスのスイーツ。
それぞれの説明を聞いてから来店者は飲み物を選び、その効用を元に、来世での生き方を決めるという仕組み。
メモリーブレンドは、思い出をもう一度。そして来世でも。
相席カフェラテは、会いたい人ともう一度。そして来世での生き方を2人で相談する。
マスターのカウンセリングティーは、マスターに話をじっくり聞いてもらい、来世の生き方を委ねる。

いずれもちょっとした人生ドラマ。
来店客のいずれも、自分の過去に何らかの後悔を抱えています。そんな来店客が抱えてしまった誤解を解き明かし、来世に向けた希望を抱かせるのが、来世喫茶店の店員である3人の役割。

しかし、未桜は生きている身で何故この店に留まることができているのか。そして、未桜に対するマスターの謎めいた振る舞いは何故なのか。そこが本作最大のミステリ。

好み次第でしょうけれど、ファンタジーとミステリをブレンドした本作、私は好きです。
でもなぁ、未桜のお父さんは気の毒だよなぁ。


プロローグ/1.メモリーブレンド/2.相席カフェラテ/3.マスターのカウンセリングティー/4.ホットスカウトチョコレート/エピローグ

                 

16.
「トリカゴ ★★          大藪春彦賞


トリカゴ

2021年09月
東京創元社

(1800円+税)



2021/10/17



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辻堂作品では初めて、女性刑事を主役に据えた警察もの。

蒲田署の
森垣里穂子・31歳は、育児休暇から復帰したばかりの巡査部長。
折しも傷害事件が発生。被疑者の
叶内花を尾行すると、ある食品会社の工場内に置かれたコンテナに行き着きます。
それは、無戸籍者15人が共同生活を送るコミュニティだった。

25年前に起きた
“鳥籠事件”。それは母親がアパートの鳥小屋のような一室に幼い息子と娘を閉じ込め育児放棄をしていた事件。兄妹は救出されたが、その1年後、何者かに児童養護施設から誘拐され、二人は今も行方不明のまま。
その事件がきっかけで警察官を志した里穂子、
リョウハナの兄妹が鳥籠事件で行方不明となった2人ではないかと直感し、本来の業務を越えて彼らのコミュニティに関わっていきます。
その里穂子が協力を求めたのは、警視庁の特命捜査対策室で現在その事件を担当する
羽山圭司、34歳の巡査部長。
里穂子と羽山、25年前の事件の真相を解明できるのか。

一応警察ものミステリの体裁は取られているものの、真のテーマは無戸籍者問題の提起にある、と言って良いでしょう。
彼らにその原因があるのではない。彼らを産み、育てあるいは捨てた親が彼らに戸籍を与えなかったことに、彼らの不遇な境遇の原因があるのですから。
世間からはじきだされた自分たちは、自分たちでユートピアを作るしかないと思い定めている様子なのですが、本当に彼らを救う道はないのか。 


社会に十分認識されているとは思えない、無戸籍者問題を題材として社会的関心を高めようとした辻堂さんの意欲を、高く評価したい。

なお、終盤、思いも寄らぬ真相が一気に明らかになります。
警察ミステリとして、最後にきちんと決着を付けた処もまた、評価したいところです。

プロローグ/1.ここはユートピア/2.ここはユートピア?/3.開け、トリカゴ/エピローグ

                    

17.
「二重らせんのスイッチ ★★☆


二重らせんのスイッチ

2022年04月
祥伝社

(1700円+税)



2022/05/08



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面白いと思った辻堂ゆめ作品は、冒頭から一体どんな設定なのだろうかと驚かされるのが殆どなのですが、本作もそのひとつ。

大学院を出て今は大手システム会社でシステムエンジニアとして働く
桐谷雅樹、恋人もいてそれなりに順調な日々を送っていましたが、唐突に訪れてきた刑事によって強盗殺人の容疑者として逮捕されてしまう。
全く身に覚えのない容疑、懸命に潔白を訴えますが、防犯カメラに映り、しかも現場からDNAまで検出されているという。
そして防犯カメラの映像を見せられると、まさにそれは・・・自分?

幸いにもアリバイが実証され、雅樹は釈放されますが、アパートにいきなり押し込んできた男2人によって拘束され、監禁されてしまう。しかも、片方の男は雅樹そっくり・・・。
 
前半、いやあ、怖いです。
押し入って来た男たちによって拘束されるばかりか、次々と雅樹の全てが奪われていく。自分の存在すら奪われてしまうのではないかという、底知れない恐怖感。
しかし、一ヵ月以上ひとつ住居の中で過ごしていくうちに、雅樹とそっくりな男との関係が微妙に変化していく、そこが読み処。

そして後半、終盤、局面ごと全く予想もしなかったことが次々と起こり、明らかになっていく展開に、翻弄されるばかり。

怖かったです、ずっと追い詰められた気分でした、そして間一髪の行動はスリル満点で興奮しっ放し。
最後の最後までたっぷり堪能できるミステリ、サスペンスです。
お薦め!

※なお、「らせん」とはDNAのこと。

プロローグ/1.冤罪/2.犯人/3.計画/4.真実/エピローグ

                

18.
「君といた日の続き After the Days With You ★★


君といた日の続き

2022年10月
新潮社

(1600円+税)



2022/11/08



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愛おしくて愛おしくて、そして切ない物語。

愛娘の
美玖を10歳で亡くした友永譲は、妻の紗友里との気持ちの差をから離婚、今はワンルームでの一人暮らし。
雨が上がって外に出た譲は、ずぶ濡れかつ泥だらけの格好で道の隅に座り込んでいた小さな女の子を見かけ、放っておけず声を掛けます。
ちぃ子と名乗ったその女の子から事情を聴き取った譲は、ちぃ子が1980年代からタイムスリップしてきたらしいと知ります。

そんな譲とちぃ子の、一ヵ月に亘る疑似親子ストーリィ。
2人のやりとりの、何と愛おしく切ないことか。
最初は、辻堂さんとしては新趣向のタイムスリップものかと思ったのですが、読み終えてみれば、ミステリ要素も絡めた如何にも辻堂さんらしい作品。

ちぃ子との共同生活が始まってすぐ、譲はちぃ子という名前に心当たりがあることに気づきます。
そしてそれは37年前、譲の初恋と、少女連続誘拐殺人事件の記憶に繋がるものだった・・・。

読み進むうち、ちぃ子が譲にとってどんな存在だったのか、何となく判ってきましたが、それに比例するように譲、ちぃ子、そして本ストーリィへの愛おしさがつのり、堪らない気持ちになってきました。

辻堂ゆめ作品、本当に好きだなぁ。
譲、ちぃ子、そして紗友里。彼らがまた新しい歩み、幸せを手に入れることを心から願います。


1.雨、ときどき、女の子/2.似ているようで/3.父と娘と/4.ちぃ子、君は/5.ささやかな時の/6.だから、ここに/7.明日へ

               

19.
「答えは市役所3階に−2020心の相談室− ★★


答えは市役所3階に

2023年01月
光文社

(1600円+税)



2023/02/17



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コロナ禍、飲食業、観光業、学生、医療従事者、改めて多くの人々に過酷な影響を与えたものだと改めて思います。
本作は、新型コロナ感染流行を踏まえて立倉市役所が市役所内に起ち上げた<
2020こころの相談室>、悩み事を抱えてそこを訪れた人と、カウンセラー2人の対応ぶりを描いた連作ストーリィ。

コロナのお陰でどれだけ自分が辛い目に遭っているか、その胸の内をカウンセラーに洗いざらいぶちまけると、少しだけ気持ちが軽くなった気がする。
そしてそこから、先に進む道が開けてくる、というハートウォーミングなストーリィ。
でも、それだけで満足していてはいけません。その後、相談者は実は嘘をついていた、というカウンセラーの言葉に驚かされ、さらなる面白さを味わえるのですから。

カウンセラーは2人。30代半ば女性=
臨床心理士の晴川あかり、そして定年退職後に資格を取ったという、70歳間近の男性=認定心理士の正木昭三
この晴川あかりが、優しさと慧眼の持ち主。一方、正木は添え役ですが、人の好さで晴川と良いコンビになっています。

絶望から希望、そして心温まるストーリィ+ミステリ、という面白さ。
辻堂さん、このところ読む度に魅了させてくれます。

「白戸ゆり(17)」:コロナ禍で求人が激減。シングルマザーの母親にこれ以上迷惑は掛けられない、でもどうしたらいい?
「諸田真之介(29)」:コロナ禍でローン返済ピンチ。おかげで婚約者の愛花と心ならずも喧嘩別れ・・・。
「秋吉三千穂(38)」:出産、親子3人で幸せな家庭を築く筈だったのに、健司は全く家に帰って来ず・・・。
「大河原昇(46)」:コロナ禍で稼ぎ減少、ついにホームレス。その自分を誰かが狙っているらしい・・・。
「岩西創(19)」:自分の名を騙って誰かが相談室に面談予約。いったい誰が、何の目的で・・・?

1.白戸ゆり(17)/2.諸田真之介(29)/3.秋吉三千穂(38)/4.大河原昇(46)/5.岩西創(19)

                  

20.
「サクラサク、サクラチル ★★☆


サクラサク、サクラチル

2023年07月
双葉社

(1700円+税)



2023/08/24



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両親から東大合格を義務付けられるばかりか、受験勉強を5分単位でスケジュール管理され、全く自由のない生活を送っている高校三年生の染野高志
一方、ろくに働かない母親から、バイト稼ぎ、家事を押し付けられている
星愛璃嘉(えりか)
ともに友だちもおらず、親から自由を奪われている二人が、同級生として声を交わした時から、2人の気持ち、世界が少しずつ変わっていく・・・。

最近、ヤングケアラーとか、「躾」を口実にした親による虐待とか、異常な親によって子どもたちが犠牲になっている事件が後を絶ちませんが、本作もそれに連なるストーリィと言って良いと思います。

ミステリ要素を幾つも含んだストーリィですが、それはおまけのお楽しみのようなもので、根幹は、自己救済、青春版親からの逃走ストーリィ。
追い詰められた2人が立てた、<復讐計画>とは何なのか?
また、冒頭、包丁を振り回した女は誰? そして刺されたのは誰なのか?

一人では気づかなかったことが、2人だから相手を客観的に見ることができ、お互いが置かれた状況が判る。だからこそ、2人の結びつきが愛おしい。

高志と
愛璃嘉の2人は、どう救われるのか。
そして、部屋にヒキコモリとなった姉の
奈保は救われるのか。
読み応えいっぱい、胸熱くなる青春ミステリ。お薦めです。


プロローグ/1.出会い/2.助走/3.桜一輪/エピローグ

        

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