田丸雅智
(まさとも)作品のページ


1987年愛知県生、東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。2011年「物語のルミナリエ」に「桜」が掲載され作家デビュー。同年樹立社ショートショートコンテストで「海酒」にて最優秀賞を受賞。ショートショート作家。


1.日替わりオフィス

2.ショートショート千夜一夜

3.インスタント・ジャーニー

4.おとぎカンパニー−妖怪編−

5.遅刻する食パン少女
−おとぎカンパニー− 

6.白線以外、踏んだらアウト
−おとぎカンパニー− 
 
※参考:“おとぎカンパニー”シリーズ
     ・おとぎカンパニー
     ・おとぎカンパニー 日本昔ばなし編
     ・おとぎカンパニー 妖怪編 
     ・おとぎカンパニー モンスター編  
     ・遅刻する食パン少女
     ・白線以外、踏んだらアウト  

     


     

1.
「日替わりオフィス ★☆


日替わりオフィス

2015年09月
幻冬舎刊

(1300円+税)

2018年12月
幻冬舎文庫化

2016/07/31

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仕事、職場、会社員を共通項としたショートショート集、18篇。

星新一さん逝去後はショートショートの楽しみが失われてしまったような気がしているのですが、時折りこうしてショートショート集に出会えるのは嬉しいこと。
ただ、どれを読んでも星さんのショートショートとはどうも違うなぁと思うのは、星さんの文章が独特なものであったからなのでしょう。

ともあれ、奇想天外な発想がショートショートの持ち味。
その点では
「奉公酒」「背中をさすると」「人材派遣」「来世研究所」など面白いですし、「恋子レンジ」「印鑑騒動」「もち肌の女」「客観死」などはオチの一文が面白い。
また、
「発電女子」は、最近の女子パワーを感じさせる一篇で、インパクトは強いなぁ。

ポケットのあいつ/奉公酒/アイデア、売ります/靴の蝶/背中をさすると/恋子レンジ/副業/指猫/印鑑騒動/人材派遣/来世研究所/もち肌の女/黒の会社/ガラスの心/移ろい/客観死/放浪の人生/発電女子

              

2.
「ショートショート千夜一夜」 ★☆

ショートショート千夜一夜

2016年07月
小学館刊
(1300円+税)

2018年07月
小学館文庫化

2016/08/22

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多摩坂神社、その参道に出ている屋台等を舞台にした、ちょっと幻想的な処のあるショートショート集、20篇。

“ショートショート”というとどうしても星新一さんと比較してしまうのですが、本書は幻想的な趣向である所為か、田丸さん独自の世界を感じます。少々堀川アサコ作品を連想させる処もありますが。

私が特に気に入ったのは、
「燈明様」「ヒモくじ屋」「雨ドーム」「指輪投げ」「夕焼き屋」「さくら隠し」といった篇。

いずれにせよ本書、満足できるかどうかは、読み手の好み次第という処が大きそうです。


燈明様/ヒモくじ屋/雨ドーム/人魚すくい/絵描きの八百屋/粉もん体質/ストライプ/神輿の神様/ラムネーゼ/バベルの力/皮財布/鼻ガンマン/巻舌/獅子舞の夜/指輪投げ/壺のツボ/人面屋/九須/夕焼き屋/さくら隠し

      

3.

「インスタント・ジャーニー Instant Journey ★☆


インスタント・ジャーニー

2017年02月
実業之日本社

(1500円+税)


2017/02/15


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日本全国、世界各地、主人公たちが出かけた先で出会った不思議なこと等々を描いたショートショート。

出版社の紹介文を読んで、旅行にまつわるショートショートと思っていたのですが、どうも私の勝手な思い込みだったようです。その点は少々期待外れでしたが、それはそれで楽しめるショートショート集。

ショートショートの魅力はその着想にもありますが、私としては最後のオチがあってこその面白さ。
その点で面白かったのは、
・ホームが列車のように走り出す
「ホーム列車」
・ペルーの土地売りに学んだ女性の結婚戦略を描いた
「ペルート土地売り」
・最後の妻の一言が痛快な
「理屈をこねる」
・ちょっぴりホラー風味の
「火の地」
・この着想は凄い、と感じたのは
「帰省瓶」
そして最後の
「セーヌの恋人」は、幕を下ろすのに相応しい篇。

ホーム列車/ペルーの土地売り/ポートビア/生地屋のオーロラ/理屈をこねる/シャルトルの蝶/火の地/風の町/東京/Blue Blend/虚無缶/マトリョーシカな女たち/花屋敷/Star-fish/帰省瓶/竜宮の血統/砂寮/セーヌの恋人

       

4.

「おとぎカンパニー−妖怪編− ★☆


おとぎカンパニー 妖怪編

2020年12月
光文社

(1550円+税)



2021/02/09



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題名どおり、日本の妖怪を題材にしたショートショート集。
軽い気分で楽しめるのがショートショートの良さですし、鬼太郎ファンには馴染みある妖怪の世界ですから、沈鬱な雰囲気の今等々、気分転換にはぴったりです。

現代社会に妖怪たちを添わせるとこんな感じになるのか、というところも面白いですし、現代社会で妖怪がビジネスを展開するとこうなる、というところも機知に富んでいて楽しい。

・「重くなる」・・・・・・・子泣き爺
・「壁とともに」・・・・・・ぬりかべ
・「N肉」・・・・・・・・・ぬっぺふほふ
・「川の陶工」・・・・・・・河童
・「砂をまく」・・・・・・・砂かけ婆
・「かまちゃん」・・・・・・かまいたち
・「いた」・・・・・・・・・ぬらりひょん
・「座敷男」・・・・・・・・座敷童子
・「目の代行」・・・・・・・百目
・「スノービューティー」・・雪女
・「海と野球」・・・・・・・海坊主
・「のっぺら嬢」・・・・・・のっぺらぼう

妖怪と人間の親交を描いた風の
「川の陶工」「かまちゃん」「のっぺら嬢」、好きですねぇ。
妖怪によるビジネス譚としては
「目の代行」が楽しめました。

重くなる/壁とともに/N肉/川の陶工/砂をまく/かまちゃん/いた/座敷男/目の代行/スノービューティー/海と野球/のっぺら嬢

       

5.

「遅刻する食パン少女−おとぎカンパニー− ★☆   


遅刻する食パン少女

2022年12月
光文社

(1600円+税)



2023/01/20



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“おとぎカンパニー”シリーズ第5弾。

しかし、「遅刻する食パン少女」ってお伽話?と困惑していたところ、これって少女漫画において、少年少女が恋に落ちる出会いの定番なのだという。
全く知りませんでした。でも、知らなくて当たり前かと思う処ですが、この題名に惹かれて読んだ次第です。

楽しみは、ストーリィ最後のオチ。これが面白い。

本作中、そのオチを特に楽しめたのは、次の4篇。
「街角の恋(遅刻する食パン少女)」、「お客様の中に(お医者様はいらっしゃいませんか)」、「自供の崖(崖の上で殺人を自供)」、「嵐の研修(孤立した洋館で事件が起こる)」

なお、発想の妙に拍手を贈りたいのは、
「自供の崖」、「肩車士(前の車を追ってください)」、「スカイレザー(屋上で空を見上げる一匹狼)」の3篇。

そのうえで、一番楽しめたのはやはり「街角の恋(遅刻する食パン少女)」かな。


街角の恋  (遅刻する食パン少女)
お客様の中に(お医者様はいらっしゃいませんか)
自供の崖  (崖の上で殺人を自供)
つながれた窓(窓から行き来する幼馴染み)
嵐の研修  (孤立した洋館で事件が起こる)
本の二人  (本をとろうとして手が触れ合う二人)
肩車士   (前の車を追ってください)
天使と悪亜、それから私(天使と悪魔)
グラスレース(あちらのお客様からです)
スカイレザー(屋上で空を見上げる一匹狼)

       

6.

「白線以外、踏んだらアウト−おとぎカンパニー− ★★   


白線以外、踏んだらアウト

2024年03月
光文社

(1600円+税)



2024/04/20



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“おとぎカンパニー”シリーズ第6弾。
子どもの頃、親等からよく聞かされた定例文句(今ではもう誰も信じていないでしょうけれど)、それらを題材にした10篇。

まず冒頭の
「緊張の“人”」が傑作。
緊張する性格の新人女性社員、初めて一人で取引先に営業する直前、手のひらに「人」と書いて飲み込もうとしたら、その<人>が擬人化。主人公以上に緊張していて、「飲み込むのを待って」と訴えます。そうなると、主人公はどうしたらいい?

これはファンタジーな設定に楽しさあり、と気に入ったのは、
冒頭作を含め、
「牛さん」「イタミの蝶」「てるてるの仕事」「ソウルスペース」の5篇。
中でも「牛さん」はユーモラスで気分が良くなります。また「ソウルスペース」は新たな友情を開くストーリーで爽快。

なお、
「鳩の通信」はSF+コメディ。

シリーズの中でも趣向の幅広さで群を抜いているのではないでしょうか。気分転換に恰好、お薦めです。

1.緊張の"人"(手のひらに三回「人」と書いて飲むと緊張が解ける)
2.白線の民 (白線以外を踏んだら死ぬ)
3.机の工房 (給食のパンを机にため込む)
4.三秒以内に(食べものを墜としてもすぐに拾えば大丈夫)
5.牛さん  (食べてすぐ横になると牛になる)
6.イタミの蝶(痛いの痛いの、飛んでいけ)
7.原稿中  (締切に追われる)
8.てるてるの仕事(てるてる坊主、明日天気にしておくれ)
9.鳩の通信 (ベランダに鳩が巣を作る)
10.ソウルスペース(写真を撮ると魂を抜かれる)

      


  

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