田牧大和作品のページ No.2



11.盗人

12.翔ぶ梅−濱次お役者双六 三ます目−

13.とうざい

14.鯖猫長屋ふしぎ草紙

15.甘いもんでもおひとつ−藍千堂菓子噺No.1−

16.とんずら屋請負帖−仇討−−とんずら屋請負帖No.2−

17.半可心中−濱次お役者双六No.4−

18.酔ひもせず−其角と一蝶No.1−

19.長屋狂言−濱次お役者双六No.5−

20.八万遠(やまと)


【作家歴】、花合せ、三悪人、緋色からくり、数えからくり、散り残る、春疾風、三人小町の恋、とんずら屋弥生請負帖、質草破り

 → 田牧大和作品のページ No.1


まっさら、彩は匂へど、晴れの日には、錠前破り、銀太恋糸ほぐし、鯖猫長屋ふしぎ草紙(二)、錠前破り銀太−紅蜆、鯖猫長屋ふしぎ草紙(三)、鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)、鯖猫長屋ふしぎ草紙(五)

 → 田牧大和作品のページ No.3


錠前破り銀太−首魁、あなたのためなら、縁切寺お助け帖、鯖猫長屋ふしぎ草紙(六)、鯖猫長屋ふしぎ草紙(七)、かっぱ先生ないしょ話、縁切寺お助け帖−姉弟ふたり−、鯖猫長屋ふしぎ草紙(八)、鯖猫長屋ふしぎ草紙(九)、大福三つ巴

 → 田牧大和作品のページ No.4


紅きゆめみし、古道具おもかげ屋、想い出すのは、鯖猫長屋ふしぎ草紙(十)、子ごころ親ごころ   

 → 田牧大和作品のページ No.5

     


                       

11.

●「盗 人」● ★★


盗人画像

2012年11月
新潮社刊
(1500円+税)



2012/12/12



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ピカレスク小説(悪漢小説)と簡単に言ってしまうには、本書主人公の甲斐、凄味があり過ぎます。
ゾクゾクっとするような怜悧な凄味を感じさせる処がこの主人公の魅力。しかも、どこに本心があるのか誰も掴み切れない、という底知れ無さあり。
本書の魅力は、
この甲斐というキャラクターの魅力に尽きる、と言って良い作品。
 
江戸で評判の良い口入屋=
えびす屋。ところがその裏の姿は盗賊「幻一味」。頭目は当然ながら主の源右衛門なのですが、実質的に一味を仕切っている裏の頭目は、店では愚鈍な下働きと思われている甲斐に他なりません。
一味の誰も、裏頭目の存在、しかもそれが甲斐であるとはまるで気付いていない、という手の込んだ設定。しかも甲斐は源右衛門が旅先で関わった女に産ませた庶子で、父子であるとは誰も知らず。そして実の父子とはいえ、源右衛門と甲斐はかなり微妙な力関係のバランスの上に乗っている、という風。
そんなえびす屋の面々に加え、歴史上の人物=
高野長英が甲斐を超える悪辣なキャラクターとして顔を並べ、さらに盗賊「鬼火」の少年頭領=秀宝が甲斐と張り合うといった、見事な顔ぶれ。
この3人の連環はただものではありません。
三悪人をはるかに凌駕する凄さあり、と言って間違いないでしょう。

さてその甲斐、江戸市中をどんな風になって吹き抜けるのやら。
本作で田牧さん、新たな段階へ一歩踏み出したという印象です。

 
螺旋/侘びる椿/葉月の桜/鬼が翳す灯/昔語り−ことのはじめ/梅蛇香/鬼が焚く灯/紅の蓮

                  

12.

「翔ぶ梅−濱次お役者双六 三ます目− ★★☆


翔ぶ梅画像

2012年12月
講談社文庫刊
(629円+税)



2013/01/15



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“中二階”と呼ばれる大部屋役者ながら周囲はその将来性を買っている、それなのに本人はまるで欲のないのんびり屋という若手女形の梅村濱次を主人公とした濱次お役者双六”シリーズ、第3弾。
  
「とちり蕎麦」は前菜というところ。森田座の二枚目立役である野上紀十郎が芝居で2度もしくじりをしでかし、お詫びにと役者仲間に配った“蕎麦札”。そこに秘められた謎は? ちょっとしたミステリ趣向に人情話、失笑が加わった、楽しめる篇。
そして主皿が
「縁(よすが)」。何と濱次に天下の中村座から引き抜き話が持ちかけられます。当然ながらそこには裏事情があるのですが、人によってその裏をどう見るかも色々。さてこの引き抜き話、濱次にとって吉と出るかそれとも凶と出るのか。
そこにまつわる人間模様、役者模様の色合いが多様で濃くて、役者話としても絶品です。
「翔ぶ梅−香風昔語り」はおまけのデザートというべき篇。濱次の話ではなく、今は亡き初代有島香風とその弟弟子である仙雀の若き頃の話。香風の伝説となった舞“翔ぶ梅”の誕生秘話です。

この“濱次お役者双六”シリーズ、巻を追う毎にますます面白さに磨きがかかっていると感じます。
何かと能力主義を標榜する現代世情があるからこそ、出世欲がない、のんびり屋という役者=濱次のキャラクターが映える、そんな気がします。
現在の濱次は役者としてまだまだ未熟者、でも伸び盛り。そしてその周囲には濱次を押し上げていこうとする人たちが多くいる。いわば発展途上者の成長物語であるところに本シリーズの楽しみが有ります。
濱次だけでなく、奥役の
清助、座元の森田勘弥、騒がしい中二階役者の面々が醸し出す綾が楽しい。それに加えて師匠の仙雀、曲者幽霊の先代有島香風の存在感が味わいを深めています。
★★☆は、本シリーズの今後への期待を含めての評価です。

 
とちり蕎麦/縁(よすが)/翔ぶ梅−香風昔語り

                 

13.

「とうざい ★☆


とうざい画像

2013年02月
講談社刊
(1400円+税)



2013/03/13



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濱次お役者双六の相似形となる時代小説。濱次における舞台が歌舞伎であったのに対し、本ストーリィの舞台は文楽、すなわち人形浄瑠璃。
主人公はどうも2人の人物に託されているようです。一人は人形遣いの
吉田八十次郎、もう一人は若き紋下太夫の竹本雲雀太夫。ともに新参の浄瑠璃小屋=松輪座の所属。
八十次郎が“氷の八十次”と異名をとって女性客に人気沸騰中であるのに対し、雲雀太夫は自分の芸に自信がなさそうでふらふらしている風。その理由は、師匠が自分を置き去りにして上方に戻ってしまい、芸が足踏みしてしまっていることにあるようです。
そんな松輪座に上方から、座元の知り合いだという
正兵衛駒吉という童を伴って訪ねてきます。その2人が訳有りのようで、そこからがストーリィの始まり。

雲雀太夫の足踏みに周囲がじりじりした思いを抱いている処は、濱次とも共通するところ。本書は、雲雀太夫の成長課題のうえに複数の難事が松輪座の面々に降りかかってくるという展開。
しかし、残念ながら中途半端に終わってしまった印象は拭えません。主ストーリィは何だったのか。事件ものストーリィなのかそうではないのか。その辺り、主人公が誰か的を絞れていないところ、雲雀太夫の心許無さがそのまま作品に反映されているように感じます。
本格的なシリーズ展開に先だつプロローグ的なストーリィということであればそれなりに納得もできますが、さてシリーズものになるのやら。
私としては、シリーズものはまず濱次に絞って欲しいと思うところです。


※文楽に興味ある方は → 三浦しをん「あやつられ文楽鑑賞」へ。

              

14.

「鯖猫長屋ふしぎ草紙 ★★☆


鯖猫長屋ふしぎ草紙

2013年06月
PHP研究所刊
(1600円+税)

2016年11月
PHP文芸文庫化



2013/07/05



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これは、面白い。趣向そして仕掛けの巧みさ、そして語りおよび展開の上手さ。そのうえに登場人物たちの人物造形がすこぶる良い。
特筆すべきは、人間ではない、本書の一方の主役というべき猫の“
サバの大将”と犬の“アジ”の造形である。動物を主役に据えた作品には漱石「吾輩」等々いくつもの名作がありますが、物言わぬという前提での本書における描き方は、もう絶品という他ない。

江戸は
鯖猫長屋と呼ばれる長屋に住む、猫の絵ばかり描いて売れない絵師の青井亭拾楽と何故か飼主より威張っている猫のサバというコンビを主人公に、長屋の人々の間に起きた様々な出来事を描いた連作形式の長編というと、典型的な江戸市井小説だろうと思うところ。
しかし、各章冒頭に
「問わず語り」と題した何者かの独白が入るという構成が、どこかミステリアス。
その「問わず語り」にどんな意味が隠されているのか。その謎は読み進むに連れ次第に明らかになってくるのですが、その塩梅が凄く良いのです。本ストーリィの邪魔にならず、表の出来事とは別に裏の出来事が密かに進行していることをいみじくも語り、興趣はますばかりです。

まず長屋に一人身の美人=
お智が引っ越してきます。そこから平穏無事だった長屋連中の間に少々さざ波が立ち始める。
そして差配の
磯兵衛を差し置いて実質長屋を仕切っている大工の女房=おてるが、拾楽を想う娘=おはまの胸の内を思ってそんなお智にちょいと眉を顰めます。
事件のすべての鍵は何人かの人物が握っているのですが、それは誰なのか。
サスペンスというと最後に全ての謎が一気に明らかにされるという展開が多いのですが、本作品の場合は中盤において凡その事実関係が明らかにされるところがまた良い。読み手は、全てを知る人物と、何も知らない長屋の住人たちの間に居て、興味は尽きることがありません。
ところが、拾楽の予想外にも鋭い眼力をもった人間が長屋にもちゃんと居て、というところが本作品の心憎いところ。
すべて自分たちだけが知っていると思いきや、意外にも間が抜けていた、すっかり見透かされていた。それが当人たちにとって悪い方向にも良い方向にも転がっていくのですから、いやはや人生とは面白いものです。

田牧大和、本当に上手い! 時代小説を好きかどうかにかかわらず、お薦めの時代小説エンターテインメント。

 
猫描き拾楽/開運うちわ/いたずら幽霊/猫を欲しがる客/アジの人探し/俄か差配/その男の正体

         

15.

「甘いもんでもおひとつ−藍千堂菓子噺− ★★


甘いもんでもおひとつ画像

2013年10月
文芸春秋刊
(1500円+税)

2016年05月
文春文庫化



2013/11/19



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小さな菓子司“藍千堂”を営む晴太郎幸次郎の兄弟を主人公にした、江戸版スイーツもの連作風時代小説。

元々2人の生家である“
百瀬屋”は江戸で評判の菓子司。しかし両親の死後、それまで優しかった叔父夫婦が豹変。晴太郎は濡れ衣を着せられて生家を追い出され、そうと知った幸次郎も生家を飛び出して、亡父の元で菓子職人だった茂市の処に身を寄せて藍千堂を立ち上げたという次第。茂市は職人に戻って2人を助け、さらに亡父の友人であった薬種問屋の伊勢屋総左衛門が2人の後ろ盾になっている、というのが現在の状況。
ところが百瀬屋の主人に収まった叔父は事々に藍千堂の商売を妨害しようとし、2人の苦労は絶えることがありません。
そんな2人を応援するのが強欲な叔父の娘=従妹の
糸に、甘い物好きな定町廻り同心=岡丈五郎、という顔ぶれ。

美味しい菓子を作るしか能がない兄=晴太郎に、商才に長けている弟=幸次郎というコンビ。その度に振りかかる苦労、困難に負けず一歩一歩藍千堂の評価を高めていく兄弟の奮闘を描いたストーリィ。
というパターンなら他にも似たような話は幾らでもあると思いますが、晴太郎の生み出した菓子が如何にも美味しそうなうえに、2人のキリリとして若々しい姿がとびきり魅力。
上記2つが面白さの主要素であることはもちろんですが、2人を囲む人物たちも個性豊か。ストーリィの頭からシッポまでたっぷり面白く、そして楽しいこと、間違いなし。
時代小説を余り読まない方にも是非お薦めです。


四文の柏餅/氷柱姫(つららひめ)/弥生のかの女(ひと)/父の名と祝い菓子/迷子騒動/百代桜(ももよざくら)

            

16.

「とんずら屋請負帖−仇討− ★★


仇討画像

2013年12月
角川文庫刊
(600円+税)


2014/02/08


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男に身をやつした娘船頭=弥生(表向き=弥吉)が活躍するとんずら請負帖シリーズ第2弾。

船宿の
松波屋、その裏稼業はとんずら屋。
その松波屋に新しく雇われた女中=
は、幼い子の徳松を抱える寡婦との触れ込みだったが、どうも出自は武家らしい。
一方、京の呉服屋の若旦那=
進右衛門という触れ込みで松波屋に長逗留している各務丈之進の元に、来栖藩城代家老である父親から「小瀧の仇討」の助太刀をせよとの指示が届きます。
そしてその仇である
澤岡佐門と知り合った丈之進は、相手が自分と気の合うことに気付く。

仇討を主題材としたストーリィ、時代小説ならそう珍しいものではありませんが、そもそもその仇討自体が曰くありげ、何やらきな臭い秘密が隠されている風です。
鈴音と澤岡佐門に隠された秘密、家老の次男という姿を隠して町人の若旦那を装っている丈之進に、娘であることを隠して男のふりを装っている弥生と、皆に裏表があるからこそ互いの心情も複雑に絡み合う、という構成に本作品の読み応えがあります。

なお、前作に比して弥生の成長している姿も見逃せません。

           

17.

「半可心中−濱次お役者双六− ★★☆


半可心中画像

2014年04月
講談社文庫刊
(750円+税)



2014/05/21



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“中二階”と呼ばれる大部屋役者ながら周囲はその将来性を買っている、それなのに本人はまるで欲のないのんびり屋という若手女形の梅村濱次を主人公とした濱次お役者双六”シリーズ、第4弾。

新作芝居「咲良姫」の配役が決定済だというのに、看板役者である
野上紀十郎がヒロインである咲良姫役に中二階役者の濱次を抜擢して欲しいと突然言い出したことから、芝居小屋の裏幕では大揉め。
既に姫役に決まっている名題女形が途中体調を崩したことにし、その代役として濱次に10日間だけ演じさせるということで妥協策が密かにまとまります。その分、自分の将来ばかりか紀十郎への責任までが濱次の身にのしかかり、ただでさえのんびり屋の濱次はうろたえ、逃げ出したくなるばかり。
そんな折も折、偶然助けた心中未遂の若い娘の熱さに心を乱されて濱次の芝居は絶不調。そんな状態で濱次は大役をやり遂げることができるのやら。

前3作は多少なりともミステリ風味が入り込んでいましたが、今回作はもう芝居一筋。
まさしく役者としての濱次が迎えた正念場、胸突き八丁、という舞台設定です。
“濱次”ファンならずとも、時代小説ファンならずとも、芝居に多少でも興味があればハラハラドキドキ、スリリングさ一杯で面白いことこの上なし。
役者という道の険しさ、役作りの難しさ、期待を集める重さの一方で応援してくれる仲間の有り難さ、役者小説としての読み応えたっぷりです。
この第4弾をいきなり読んでも何ら支障ありません。お薦め!


−事の始め−/1.濱次の拾いもの−再び/2.立作者の出来心/3.半可心中娘の置き土産/4.奥役、奔走す/5.女職人の心意気/6.千丈桜始末(せんどうはなのしまつ)/7.そして、夢の向こう/結び−兄弟子と弟弟子−

             

18.

「酔ひもせず−其角と一蝶− ★★


酔ひもせず

2015年03月
光文社刊
(1600円+税)

2017年11月
光文社文庫化


2015/04/14


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実在の著名人物、芭蕉第一の弟子である宝井其角と、絵師であり幇間でもあった“暁雲”こと多賀朝湖(後の英一蝶)コンビによる時代小説ミステリ。

面白き話を集めてはその謎解きをするという遊びをつるんで楽しんでいた上記2人に持ち込まれたのは、「屏風に描かれた犬が動く、それを見た遊女が消える」という謎。
現に3人の遊女たちが姿を消しているのだと、3人の身を案じる吉原は大黒屋の人気花魁=
紅葉太夫花房太夫から依頼され、2人が謎の解明に挑みます。

遊び心をもった其角と暁雲という探偵コンビに、絶世の美女である花魁2人という組み合わせが何とも心を躍らせます。
また、廓内世界に閉じ込められて生きる遊女たちは、幸せというものの姿をどう心の中に捉えているのか。そうした彼女たちの心の中を覗く部分も、本作品にあって注目したい妙味です。

其角と暁雲というコンビ、とても魅力的なのですが、本作品もまた単発なのでしょうね。いつも田牧大和作品について思うことですが、何と勿体ない。
でもその惜しげもない気風の良さがまた田牧さんの魅力でもあるのですが。


事の始め−其角ひとり語り/1.動く屏風と赤い花/2.太夫二人/3.町狩野/4.微笑む骸/5.幸せの在り処/6.妖しの匂い/7.極楽の景色/8.犬のからくり/9.名幇間の後始末/事の終わり−暁雲むかし語り/それから−其角ひとり語り/結び−英一蝶

          

19.

「長屋狂言−濱次お役者双六− ★★☆


長屋狂言

2015年05月
講談社文庫刊

(750円+税)



2015/06/07



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“中二階”と呼ばれる大部屋役者ながら周囲はその将来性を買っている、それなのに本人はまるで欲のないのんびり屋という若手女形の梅村濱次が主人公。江戸を舞台にした役者成長記濱次お役者双六”シリーズ、第5弾。

前作
半可心中で、大竹松馬渾身の力作「千丈桜始末」の咲良姫を濱次が演じて森田座花形女形の片瀬秋泉を喰ってしまい、同作品興行は短期間で終幕。それ以後、森田座の興行がもうひとつぱっとしない。理由は何なのか、皆が頭を悩ませている状況から本巻はスタートします。
そして肝心の濱次は、何故かすっかり役を干されてしまい、流石ののんびり屋も気にせずにはいられない。
そんな中、
烏鷺入長屋仲間である仁野忠吾が義妹から悩まされている問題の解決に、長屋の女連中から持ちかけられて一芝居打つことになる・・・・。

本書は、濱次がようやく自ら覚悟を決め、名題女形へ向けて大きな一歩を踏み出す見逃せない巻。
本シリーズの魅力は、濱次がひとり頑張るという筋立てでなく、濱次を囲む森田座の幹部や中二階仲間、
仙雀師匠、長屋仲間らがこぞってのんびり屋の濱次を応援するというところにあります。
今後の展開がますます楽しみです。


事の始め−濱次、干される。/1.立役者、閃く。/2.大茶屋、動く。/3.後家、企む。/断章−町場狂言/4.立女形、思案す。/5.女形、競う。/6.青鬼、ほくそ笑む/7.中二階、騒ぐ。/結び 壱−暇乞い/結び 弐−門出

              

20.

「八万遠(やまと) ★★☆


八万遠

2015年05月
新潮社刊

(1600円+税)

2018年01月
新潮文庫化



2015/06/24



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日本列島を小さく変形したような島国“八万遠”が本ストーリィの舞台。
その八万遠は、建国した天神の子孫である
王族が支配する天領と、王族の近衛兵的存在である“上道”の上道領、直轄八州等から成り立っていた。
その八州の内で新興領の“
墨州”が勢力拡大を図って侵攻を開始したことから、本ストーリィは大きく動き出します。墨州の領主である奥寺甲之介が一方的に仲間扱いする、“雪州”の領主である巽源一郎とその正室である珠姫らをも巻き込んで。

架空の世界を舞台にした点ではファンタジー冒険? いや他国を攻略して領国拡大を目指すという点では戦国国盗り物語? といった折衷もののようなストーリィなのですが、これがとても面白いのです。
何しろ登場人物がどれも個性的。登場人物の魅力でストーリィを引っ張っているという風です。
墨州の甲之介と雪州の源一郎、性格は違えど朋友として展開していくのかと思えば、対照的な人物像としていずれは敵対することになるのか?という雰囲気へ。
甲之介の股肱の臣である
東海林市松に、源一郎を囲む雪州の臣たちも決して引けを取りません。
そして、甲之介と源一郎以上に魅力を感じるのは、源一郎の正室=
珠姫とその嫡男である6歳の徳之進。この2人に関してはまだまださわりの登場に過ぎないという印象です。

終盤、思わぬ展開に、湧き上がる興奮を抑え切れず。
もちろん続編があるんですよね、田牧さん?

    

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