高嶋哲夫
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1949年岡山県玉野市生、慶應義塾大学工学部卒、同大学院修士課程修了。日本原子力研究所研究員を経てカルフォルニア大学に留学。79年日本原子力学会学会技術賞を受賞。94年「メルトダウン」にて第1回小説現代推理新人賞、99年「イントゥルーダー」にて第16回サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞。

  


     

「ライジング・ロード Rising Road ★★




2013年03月
PHP研究所刊

(1700円+税)

  

2013/05/06

  

amazon.co.jp

野口陽子29歳が自力存続断念寸前の東北科学大学に非常勤講師として雇われたところからストーリィは始まります。
シングルマザー、啖呵を切って大企業の研究員を辞めた陽子には今、その非常勤講師の口に縋り付くしかない状況。
そんな陽子に押しつけられた難題は、ソーラーカーを新に作り上げ、予選会で勝ち残り、最終的には鈴鹿サーキットで行われる全日本ソーラーカーレースで優勝すること。ただし失敗したらその時点でクビ、という否応ないもの。

ソーラーカーレースといえば高専生たちを主人公にした濱野京子「レッドシャインが思い出されますが、同作のような青春部活小説とは異なり、本書はかなりハードなもの。つまり、5歳の娘=加奈子との生活をかけ、陽子が眦を釣り上げてソーラーカーレースに挑戦する、というストーリィです。
そのため大学の研究室というよりベンチャー企業、もしくはビジネスさながらといったし烈さ、競争原理がそこには繰り広げられます。
その厳しさの故に、主人公である陽子のみならず、ノホホンとしていてでも個性的な学生たちの潜在能力を極限まで引き出していく処にスリリングな面白さがあります。
面白いのは、陽子の傘下に集まったのが決して優秀な学生たちとは言えないこと。元々四流大学の学生なのですから。それでもどこか取り柄があるもので、各自がその持ち味を発揮してチームとして機能していく、というところが楽しい哉。まぁ、チームとして成果を出せるかどうかは陽子のマネジメント能力次第として、最後は陽子に全て追わせられるのですけど。

乏しい予算の中で、陽子の知り合いの会社、地元の中小企業たちの協力を受けてのソーラーカー作り、レース参戦。
ライバルは長年にわたる蓄積・実績のある学校や資金力のある大企業等々。それでも何とかステップアップを続けていくものの、その都度好事魔多し。しかし、その最大のものが3.11東日本大震災だったとは。第8章で描かれる震災の様子はかなりリアル。

エンタテイメント作品として存外の面白さあり。お薦めです!

1.海の見える町/2.太陽の七人/3.チェリー1/4.ファースト・レース/5.海辺の実験室/6.セカンド・レース/7.悲鳴、そして・・・・/8.希望の灯/9.ライジング・ロード

 


  

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