清水杜氏彦
(としひこ)作品のページ


1985年生、群馬県前橋市出身、千葉大学大学院工学研究科修了。2015年「電話、その日の服装等を言い当てる女について」にて第37回小説推理新人賞、同年「うそつき、うそつき」にて第5回アガサ・クリスティー賞を受賞。

  


       

「少女モモのながい逃亡 ★★




2020年11月
双葉社

(1500円+税)



2021/01/10



amazon.co.jp

1930年代のヨーロッパ某国。
農場や家畜、すべての私有財産を取り上げた国家主導による集団農場化。農業や農民のことを何一つ知らない少年たちが集まった青年団は、農民家族たちへ暴力と搾取を繰り返す。
そして密告。家長の連行あるいは処刑により家族は引き裂かれ、残った家族はますます窮乏化していく。

集団農場化、その失敗といえば、ソ連以外の何ものでもないでしょう。
母は病死。姉、続いて父親も青年団に連行され、生死不明。
少女
モモ(15歳?)は、弱った弟オルセイを懸命に守りながら、姉や父の帰りを待ちますが、ついにオルセイは死去。
そしてついにモモは、村を離れることを決意します。

村を出たからといって救われる訳ではありません。むしろ過酷になったと言うべきでしょう。
そして生き残るためにモモは権力に屈し、それでも脱出を試みますが、収容所に送られてしまう。

何と過酷な少女の逃亡劇でしょうか。
クライン「孤児列車」、ホワイトヘッド「地下鉄道」、ジェイコブズ「ある奴隷少女に起こった出来事等、少女の過酷な逃亡劇を描いた作品は幾つもあります。
しかし、それらの物語には彼女たちを助けてくれる人たちも存在しました。
それに引き換え本作では、どこに希望を見出したら良いのかまるで分からない、という処に悲惨さがあります。

さて、モモの旅は一体どこへ行き着くのでしょうか。胸が詰まる思いです。


<プロローグ> 1932年から1933年
第一部 <A> 1930年まで/<B> 1933年/<C> 1933年から1934年
第二部 <D> 1934年から1935年/<E> 1937年/<F>
第三部 <G> 1937年/<H>/<I>/<J>
<エピローグ>

   


  

to Top Page     to 国内作家 Index