柴田よしき作品のページ No.1


1959年東京都生、青山学院大学文学部フランス文学科卒。1995年「RIKO−女神の永遠−」にて第15回横溝正史賞を受賞し、作家デビュー。警察小説、本格ミステリ、伝奇ロマン、恋愛サスペンスと作品ジャンルは多彩。現在京都市在住。


1.RIKO−女神の永遠−−RIKOシリーズ−

2.聖母(マドンナ)の深き淵−RIKOシリーズ−

3.月神(ダイアナ)の浅き夢−RIKOシリーズ−

4.ワーキングガール・ウォーズ

5.窓際の死神

6.所轄刑事・麻生龍太郎

7.小袖日記

8.朝顔はまだ咲かない

9.やってられない月曜日

10.いつか響く足音


夢より短い旅の果て、愛より優しい旅の空、風のベーコンサンド、さまよえる古道具屋の物語、ねこ町駅前商店街日々便り、草原のコック・オー・ヴァン

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1.

●「RIKO−女神の永遠− ★★       横溝正史賞


RIKO画像


1995年05月
角川書店刊

1997年10月
角川文庫



2009/11/15



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柴田よしきさんについては、ミステリという面ではマイルドという印象を持っていたのですが、本書を読んでぶっ飛びました。

残虐な輪姦シーンを映した裏ビデオが出回る。しかもそれは、複数の男たちが少年たちを犯すというシーン。
そのビデオの出元を探っていた新宿署の村上緑子警部補鮎川巡査部長は、晴海殺人事件と関わりありとした警視庁の特別捜査本部に組み入れられ、引き続きビデオの出元を追求することになります。やがて、事件は単なる裏ビデオ販売に留まらず、もっと根の深いものであることが明らかになっていく・・・。

数多いミステリ作品中でも、事件のショッキング性という点では群を抜いていると思いますが、読み始めて直面したのは、事件よりもっとショッキングな内容が本作品には含まれていること。
それは、主人公である村上緑子の身の上に起こり、今もそれから緑子が放免されていないという事実。
男性優位の警察社会。その中で能力を発揮し、先輩たる刑事たちを追い越して抜擢された緑子は、上司との不倫発覚という事件をきっかけに、信じ難い報復を同僚である刑事たちから受ける。
そして左遷された新宿署で緑子は、刑事課の有能な係長としてその能力を遺憾なく発揮している一方、今や性の面では放埓に生きる女性となっていた。

ハードな警察サスペンスであると同時に、性愛小説としても絶賛を浴びたというのは、当然のことでしょう。
むしろ、事件部分より性愛部分の方がはるかにショッキングであり、サスペンスチック、ドラマチック。
最初から最後まで、本人が捜査上で陥った危険までも含めて、主人公である村上緑子という女性警部補の存在感が抜群。
題材に対する好みの問題ということはありますけど、本書を読み上げてしまうと、このヒロインはクセになります。
本書は“RIKO”シリーズの第一作。この後の作品にも気を惹かれます。

※偶然でしょうけど、誉田哲也作品に登場する女性警部補=姫川玲子と、似るところがある一方で実に対照的。キャラクター像を読み比べてみるのも一興です。

  

2.

●「聖母(マドンナ)の深き淵 ★☆


聖母の深き淵画像


1996年05月
角川書店刊

1998年03月
角川文庫

(762円+税)



2009/12/04



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“RIKO”シリーズ第2弾。第一作RIKOの印象が強烈でしたので、続きも読みたくなりました。
文庫本で 500頁を超える大部な一冊ですが、かえって病院の時間待ちにちょうど良い。おかげで一気読み。

前作で苛酷な宿命に翻弄された観のある女性警部補・村上緑子、本作では一児の母となり、下町の辰巳署に移動。事件の少ない署のため穏やかな日々を送っている。安藤明彦とは籍を入れていないものの、一つ家族のような日常という設定。
ストーリィの始まりは、性同一性障害の女性=磯島豊を知ることとなり、その豊から親友だという牧村由香の失踪について相談を受けたことから。その関連で登場するのが、元天才的な捜査官で現在は私立探偵の麻生龍太郎
一方、辰巳署内でやたら緑子を敵視する同僚が城本洋介刑事。緑子はかつての同僚から、城本が本庁から左遷される原因となった、未解決の幼児誘拐事件のことを知る。
そして辰巳署管内で起きた事件は、閉鎖された工場跡で輪姦・殺害されて発見された、神田郁子という主婦29歳の事件。
それらと関係するのか、再び新宿署管内で殺人事件が発生する。

ヤクザが操る麻薬+売春の闇世界、同性愛、そして母性を問う物語。そして捜査に当たる緑子を再び魔の手が襲う。
しかし、何で毎度こういう展開になるのかなぁ。自分の身にふるまわれた暴行を乗り越えて闘う、戦士というイメージは確かに植え付けられるのですけど。
本作では前作になかった母性が緑子に加わっています。
ただし、ストーリィ出だしが大きな事件を呼ぶ風だったのに、結末としては小さな問題に収斂してしまったという印象あり。性の問題は別として、サスペンスとしては今一つもの足りず。

なお、今や同性愛、性同一性障害という事柄は今さら驚くようなものではありませんが、本作の刊行は13年前。そうした問題が取り上げられるようになった初期の頃だったのかなぁと、時代・社会の変化を改めて感じます。

   

3.

●「月神(ダイアナ)の浅き夢 ★★


月神の浅き夢画像


1998年01月
角川書店刊

2000年05月
角川文庫
(838円+税)



2009/12/11



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“RIKO”シリーズ第3弾。
前作から約1年、入籍は未だであるものの、既に緑子達彦明彦と同居、一つ家族としての生活を営んでいる。そして緑子は警官を辞めることを考えている。
そこに連続殺人事件の捜査指揮をとる高須義久警部から、珍しく弱音を吐き、怖いとすすり泣く電話が入る。
事件は、独身の若い男性刑事ばかり5人が、手足、性器を切り取られた姿で木にぶらさげられるという、猟奇的なもの。そして高須自身、独身でハンサムという点で被害者たちと共通する。
高須の強い要請で、緑子は捜査本部に呼ばれ、捜査陣に加わるという警察サスペンス。

前2作では、女性の性、性愛という要素がストーリィの前面に出ている観がありましたが、本作品においてそれは薄い。
むしろ、何の手がかりもつかめないという困難な捜査の中、僅かな手がかりを探り、錐で穴を少しずつこじ開けていくような緑子の捜査ぶりが実に読み応えあります。
警察サスペンスとしても長大、読み応えたっぷり。女性警部補=村上緑子のまさに真価を問う巻、といって過言ではありません。

同時に、警官を辞めるというのは本当に自分の望みなのか、何の為に自分は警官であることにこだわり続けたのか、全篇を通じて緑子が自身に問うストーリィともなっています。
前作に引き続き、私立探偵業に復帰した麻生龍太郎、緑子と麻生と因縁のある暴力団春日組の若頭=山内練も再び登場。ただし、この面は、緑子という女性キャラクターの特異性を際立たせるため、また前作の決着をつけるための登場という気がします。その点で、“RIKO”シリーズ”の卒業編、と感じました。

※なお、本ストーリィでインターネット上の情報が重要な鍵となりますが、緑子はじめ大方の捜査員は不案内。98年刊行のストーリィですからねぇ、あの頃はそんなものだったかも。

       

4.

●「ワーキングガール・ウォーズ ★★


ワーキングガール・ウォーズ画像


2004年10月
新潮社刊

(1400円+税)

2007年04月
新潮文庫化



2004/12/25



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「働く女の本音と弱音をリアルに描いた、本格“負け犬”小説、誕生!」というのが、帯の宣伝文句。

主人公は「37歳、入社15年目、独身バツなし。恋人・人望ともにナシ・・・」という墨田翔子
その翔子がいい加減若い女子社員の陰口にうんざりし、衝動的に海外旅行に行った先がオーストラリアのケアンズ。そのケアンズでボヤキながらツアー・コンダクターをしているのが、もう一人の主人公・嵯峨野愛美、29歳
本書は、その翔子と愛美が代わる代わる主人公を務める連作短篇風の小説。
前半、如何にもお局さま的雰囲気で登場する翔子ですが、実はその正体、結構カッコイイのです。一流会社の企画部係長で仕事もかなりできる。それなのに、負け犬といじけているのは周辺のなせることか、それとも翔子自身の屈折感にあるのか。
その翔子の“正体”を知る人物が登場してから、ストーリィは活気がでてきます。一人は直属部下の男性社員・八幡、もう一人は愛美。やはり、自分を知ってくれる人間がいないといくら有能でもやってらんない、ということでしょうか。
後半、ミステリ風味に活劇風味までスパイスとして加わり、俄然面白くなってきます。決め台詞もカッコイイ!
読み終わった後は、スカッとした気分になれること間違いなし。

※1.この“負け犬”という言葉、どこから出てきたのか。酒井順子さんの負け犬の遠吠え
※2.男性である私には判らないものの、女性ならうんうんと頷ける部分が細部に沢山ありそうです。
※3.ふと篠田節子「女たちのジハードを思い出します。本作品の方が、間違いなくリアルですね。

ピンクネイル・ジャーニー/ペリカンズ・バトル/リバーサイド・ムーン/ホリデー・イン・ディセンバー/ブラディマリーズ・ナイト/バイバイ、ロストキャメル/ワーキングガール・ウォーズ/エピローグ

     

5.

●「窓際の死神(アンクー) ★☆


窓際の死神画像


2004年12月
双葉社刊

(1500円+税)

2008年02月
新潮文庫化



2005/01/18

もし会社の窓際に座っている同僚が死神だったら・・・。本書はそこから書き起こされた、ブラック的な内容の寓話。
幕間話を前後にはさみ、中篇ストーリィ2つという構成です。

本当にもし死神が自分の魔の前に現われたら、いったいどうするでしょうか。
本書に登場する死神は、いかにも冴えない窓際族社員といった風采で、島野と名乗ります。
何故死神が主人公に見えるのか。それは主人公その人の死期が近づいているから?
薄気味悪いような話ですけれど、本書に登場する島野と名乗る死神から、あまり暗さは感じません。どこかのほほんとしているからでしょう。
第1話の主人公・多美は、島野から選択肢を与えられ、選ぶことを迫られます。一方、第2話の主人公・麦穂は、別の誰かと命の綱引きをしていると言われ、思い悩む。
死期が間近に迫っていると告げられることは、残酷なことでしょう。でも逆に考えると、自分次第でその運命を変えることができるかもしれない、という希望も生まれます。本書ストーリィは、その後者のパターン。
主人公2人が各々今後への希望を見出していく結末には、ほっとします。
本書を前向きに楽しむか、それとも暗い話と重く受け留めるか。それはきっと読み手の心持ち次第でしょう。
ちょっとブラックで、ちょっと洒落た、現代的寓話。おしゃべりで説明好きな死神の存在がユニークです。

幕前/おむすびころりん/幕間/舌きりすずめ/幕後
※「Ankou:仏・ブルターニュ地方に伝わる死神。アンクーを見ると、自分または自分の愛する人が死ぬ、とされている」

         

6.

●「所轄刑事・麻生龍太郎 ★☆


所轄刑事・麻生龍太郎画像


2007年01月
新潮社刊

(1500円+税)

2009年08月
新潮文庫化



2009/08/31



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私は未読なのですが、本書の主人公である麻生龍太郎は、柴田さんの代表作である警察小説RIKO(村上緑子)”シリーズに登場する名脇役の私立探偵なのだそうです。
本書は、その麻生龍太郎が駆け出し刑事だった頃を描いた連作短篇集、“RIKO”シリーズの番外編。

事件は基本的に、所轄警察署が扱うものらしく、地味なものばかり。
「大根の花」は、民家の鉢植えが相次いで壊された事件。
「赤い鉛筆」は一人暮らしの女性の自殺とみられたが、肝心のロープの端が見当たらない、という事件。
「割れる爪」は、女子高生が通りがかりのホームレスの女性から顔をひっかかれたという事件。
「雪うさぎ」は、母親が心臓麻痺で死んだのは間違いないが、幼女のおまるが何故みつからないのか、という事件。
「大きい靴」は、唯一殺人事件らしい、飼い犬がどこかで人間の手首を見つけてきた、という事件。

主人公の麻生龍太郎、ほんのつまらないことでも、気になったことは面倒くさがらず地道に調べようとする刑事。
その姿勢が、見過ごされてしまったかもしれない事件性をクローズアップし、きちんと結末をつける。
所轄らしい事件の地味さと、それに相応しい生真面目にコツコツ調べるという捜査姿勢が清新で気持ち良い。

5篇の中では、主人公の地道な捜査姿勢がとりわけ生き、かつ少女に対して向き合う優しさの感じられる「割れる爪」「雪うさぎ」の2篇が、特に私は好きです。

大根の花/赤い鉛筆/割れる爪/雪うさぎ/大きい靴/エピローグ

     

7.

●「小袖日記 ★☆


小袖日記画像


2007年04月
文芸春秋刊

(1524円+税)

2010年07月
文春文庫化



2007/05/15



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不倫相手に捨てられて死んでやろうかと思っていた主人公、雷に撃たれたショックの所為か、なんと平安時代の女性の身体にタイムスリップ。
その女性、小袖「源氏物語」の作者である紫式部こと香子に使える若い女房というだけでなく、実は「源氏物語」の元ネタ提供者であった。
たまたま思いつきで書いた「源氏物語」がブレイクして少々困惑気味の香子。さらなる物語を書くにはネタが必要という訳で、香子のため小袖がネタ探しに奔走。その中で、源氏物語の元となる様々な事件に遭遇するといった設定です。

ホームズ役の香子にワトソン役の小袖という平安朝探偵コンビ。その2人が、源氏物語の元ネタとなる現実に起こった事件(?)を鮮やかに謎解きしてみせるというストーリィ。
平安時代、それも源氏物語を舞台にしたミステリというのですから興味津々、魅力たっぷりですが、主人公が現代からタイムスリップしたというだけに感覚的には現代に近い。
そんな主人公ですから、当時の貴族らの恋愛関係を現代娘の感覚から眺めるという趣向も本書の面白さのひとつです。
ただ、平安朝の男性は身勝手、女性はまるで玩具扱いではないかという批判姿勢がかなり強いと感じます。

平安ミステリということでは諸田玲子「髭麻呂も面白かった。同作品の主人公は元々平安時代の人物であるが故に、平安時代の雰囲気をもっと楽しめた観があるという点で、本書とは好一対。しかし、どちらの作品も色事ばかりにうつつを抜かしている男共より女性登場人物の方がしっかりしているという展開に、男性としてはやや首をすくめながら読書するばかり。

プロローグ/夕顔/末摘花/葵/明石/若紫/エピローグ

         

8.

●「朝顔はまだ咲かない−小夏と秋の絵日記− ★★


朝顔はまだ咲かない画像


2007年07月
東京創元社刊

(1500円+税)

2010年09月
創元推理文庫化



2007/09/14



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高校1年の時イジメにあって以来ひきこもりとなっている小夏。その小夏の元に度々通ってくる元同級生で現短大生の
本作品は、そんな2人が見聞きした謎めいた出来事を、2人で解き明かすという連作短篇ミステリ。

ヒキコモリの小夏に対し、天真爛漫なイマドキ娘の秋。対照的な性格の2人ですが、ヒキコモリだからといって小夏が暗い性格という訳ではありません。なんとなく外に出る気がなくなった、というのが小夏の弁。
謎解きするのは、専ら小夏の役回り。その点では新しいタイプの安楽椅子探偵といえます。とにかく見聞きしただけでパッと真相を見破ってしまうのですから、小夏のひらめきたるや相当なものです。とても読者が及ぶところではありません。
見聞きした事実と真相との間の隔たりの大きさ、そこが本ミステリの魅力です。そして、篇を重ねる毎徐々にひきこもりから脱却していく小夏の姿、そこには青春ストーリィとしての魅力があります。
アッケラカンとしていますが、秋には小夏に対する強い友情、思いやりがあります。そんな秋に尻押しされて少しずつ外へ出ようとする気持ちを小夏が取り戻していく姿が愛おしく、見逃せない部分です。
ひきこもりは悪いこと、問題あるものと一概に決め付けるのは間違いなのかもしれない(無理やりにではなく、徐々に解決していくべきこと)。本書を読んでいるとそんな気がしてきます。

冒頭の「ひまわりの誘惑」は、よくまぁこんな真相に気付いたものだと呆れるばかり。「黒い傘、白い傘」の真相もこんなことだったの?と呆れますが、いいなぁ、コレ。私は好きなパターンです。
各篇のストーリィはさておき、小夏と秋をはじめ、小夏の母親、謎解きから知り合うこととなった有沢巽と、登場人物のふと洩らす言葉に深い想いが篭っていて、とても好いんだなァ。
日常ミステリというより、青春物語の佳作としてお薦めしたい作品です。

ひまわりの誘惑/黒い傘、白い傘/さくら、さくら/朝顔はまだ咲かない/見えない人/窓を閉めて/新学期−エピローグ−

      

9.

●「やってられない月曜日 ★★


やってられない月曜日画像

2007年08月
新潮社刊

(1400円+税)

2010年07月
新潮文庫化



2007/09/07



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主人公は、人気ある出版社にコネ入社して8年になる高遠寧々
なんとワーキングガール・ウォーズの主人公、墨田翔子の従妹。
ただし、翔子のように美人でも仕事が特にできる訳でもない。その点、翔子の物語と対になるフツー版OLの物語と言ってよいでしょう。
その寧々の、のっけから堂々と開き直っている口ぶりが痛快。
「あたしはブスである」
。だからといって「いったい、誰が迷惑しているというのだ」「ほっとけ」
さらに言う。「男なんていらない、とは言いません」「しかし、今現在、男が欲しいかと問われれば、欲しくない」
今は男より、Nゲージ用の 1/150スケールの住宅模型作りの方が余っ程楽しいから。
そんな寧々の相棒は、同じコネ入社の百舌鳥弥々。身長差大きいでこぼこぶりと合わせ「男との縁がない」2人組として社内で有名らしい。その弥々の楽しみは、ホモ官能小説を書いてコミケで売ることというのですから、笑えます。

若いのに恋人がいなかったら不幸、なんて余計なお世話というもの、喜びは人各々なんですから。私も一人で読書している方が楽しかったし(苦笑)。
美人かつ仕事のできる翔子タイプより、アキバで安売りの模型材料を買い込んで嬉々としている寧々の方が、同じようにフツーで平凡なサラリーマンにとっては共感できるところ、大なのです。

営業社員相手に突っ張って喧嘩したり、うつ病で自殺した社員の不倫相手とその娘に誤解されて逆上したり、社内イジメに義憤を感じたりと、オタクな寧々であっても結構忙しい。
それでも考え方を切り替えてさえみれば、会社勤めも結構楽しくやっていける、という寧々の言葉は納得できるんだなぁ。
本書は、地道に働いて生活している独身女性の本音ストーリィ。寧々と弥々の個性も合わさって、気軽に楽しめます。

やってられない月曜日/誰にもないしょの火曜日/とびきりさびしい水曜日/甘くてしょっぱい木曜日/それでもうれしい金曜日/命かけます、週末です。/またまた、やってられない月曜日〜エピローグ

    

10.

●「いつか響く足音 ★☆


いつか響く足音画像


2009年11月
新潮社刊

(1300円+税)

2012年05月
新潮文庫化



2009/12/07



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私が小学生だった頃、近所に大型団地が完成しました。
建物と建物の間にある空はとても広く、芝生は青々とし、個性溢れた公園が幾つも配置されていました。
それも30年経ってから見たときには、昔の光景は一体何だったのだろうと思うぐらい、寂れた風景になっていました。
本書はそんな寂れた団地の一つを舞台に、そこで孤独に暮らす老女や、訳ありでそこに逃げ込んできた若い女の子らの人生模様を描く連作短篇集。

各篇で主人公となるのは、借金の督促に追われ無一文で友人の部屋に逃げ込んできた元キャバ嬢の鈴木絵理、離別していた父親の部屋に絵理を受け入れた元同級生にして現キャバ嬢の川西朱美、嫁にあれこれ口出した結果孫も息子も嫁も失った塚田里子、三度結婚し2回も夫と死別(1回目は離婚)して孤独になった宮前静子、野良猫の写真ばかり撮っていて薄汚い印象のカメラマン=米山克也、そして一人暮らしの老人=仲島
各人、現在孤独に暮らしているのには、それなりの事情、経緯があったという次第。

何故彼らは団地で暮らし続けるのか、団地を居心地良いと感じたのか。
出来上がった頃の団地の住人たちの間には、ここで一緒に暮らすという一体感があったに違いありません。
その残影が今もあるから、それぞれ残った人たちの間に繋がり合おうとする気配があるからなのか。
今この団地にいる哀感と、擬似家族のような繋がりにささやかな救いを感じる連作ストーリィ。
なお、相手に直接向ける表情と本心を表す裏の表情を、巧みに使い分けている登場人物の曲者ぶりが愉快。人間はそんなところもなくっちゃ。

最後のブルガリ/黒猫と団子/遠い遠い隣町/いつか響く足音/闇の集会/戦いは始まる/エピローグ

    

 柴田よしき作品のページ No.2

 


  

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