大崎 梢作品のページ No.3



21.よっつ屋根の下

22.本バスめぐりん。

23.横濱エトランゼ

24.ドアを開けたら

25.彼方のゴールド

26.さよなら願いごと

27.もしかしてひょっとして

28.めぐりんと私。

29.バスクル新宿

【作家歴】、配達あかずきん、晩夏に捧ぐ、サイン会はいかが?、片耳うさぎ、平台がおまちかね、夏のくじら、スノーフレーク、ねずみ石、背表紙は歌う、かがみのもり

 → 大崎梢作品のページ No.1


キミは知らない、プリティが多すぎる、クローバー・レイン、ふたつめの庭、ようこそ授賞式の夕べに、忘れ物が届きます、だいじな本のみつけ方、空色の小鳥、誰にも探せない、スクープの卵

 → 大崎梢作品のページ No.2

 


         

21.
「よっつ屋根の下 ★★☆


よっつ屋根の下

2016年08月
光文社刊

(1300円+税)

2018年12月
光文社文庫化



2016/09/11



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内科医の父親=平山滋は、勤務する病院で起きた医療ミス問題をきっかけに体制改善を直訴しますが、経営陣の怒りを買って銚子市内の病院へ左遷、用意された住まいは更に先の犬吠崎にある古アパートという次第。
父親、家族に事情を打ち明け一緒に来てほしいと願いますが、付いていったのは中学受験を控えていた小6の息子=
史彰だけ。
大手製薬会社の重役令嬢だった母親の
華奈は、家族の都合を考えず自分だけの正義感で突っ走った滋を非難、東京を離れることなど考えられないと、私立小3年の娘=麻莉香と共に白金の自宅に残ります。
華奈の実家である江藤家では滋をクソミソに攻撃。田舎の公務員一家育ちの滋と重役令嬢の華奈では、そもそもに無理があったのか。
千葉県銚子と東京の白金に家族が分かれての10年間を、家族それぞれを主人公にして描く連作風長編ストーリィ。

滋には滋の思いが、華奈には華奈の思いがあり、それが相容れなかったからこその別居生活。それに巻き込まれた2人の子供である史彰、麻莉香にもそれぞれの思いがあります。

別れて暮らすことになったからこそ、家族について考え、それぞれの思いを理解しようという姿勢が生まれた(時間はかかりましたが)と言えます。その過程で大事な友達を見つけたり、再確認することもできたと言えます。そしてそれらを経て、一人一人が自分らしい道を見つけ、自立していくという結末。

一人一人のドラマも胸熱くなりますが、別居10年という長い時間を経ても最終的に家族がバラバラに成らずに済んだということに感動を覚えます。
清冽な家族ストーリィ、私好みです。


海に吠える/君は青い花/川と小石/寄り道タペストリー/ひとつ空の下

           

22.

「本バスめぐりん。」 ★★


本バスめぐりん。

2016年11月
東京創元社刊

(1300円+税)

2019年10月
創元推理文庫



2016/12/25



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移動図書館を舞台にした、ささやかな本にまつわる日常ミステリを描く連作もの。

定年退職して暇を持て余していた
照岡久志(テルさん)、友人に勧められて種川市立図書館の移動図書館“本バスめぐりん号”の運転手を務めることになります。
相棒となるのは若い女性司書の
梅園菜緒子(ウメちゃん)、テルさんとの年齢差は40歳余り。
移動図書館でめぐる幾つかの先で出会うちょっとした謎解きに、そんな2人がコンビとなって挑む連作日常ミステリ。

本書を読みながら思い出すのは、大崎さんの出世作となった
成風堂書店事件メモ”シリーズ。本書は、その書店から外へ飛び出して、杏子&多絵のコンビに変えてテルさん&ウメちゃんの老若コンビを据えた、という印象です。
外へ飛び出したことによって面白いのは、そのあちこちで現代の住宅事情、家族事情等の問題が明瞭に描かれていること。
かつてはハイクラスの住宅地、でも今や高齢者と人口減少という悩みをもった殿ヶ丘住宅街。1950年代に建てられた公団住宅は今や住民の高齢化と建物の老朽化が大きな課題、等々。
そのどれもが現在あるいは近い将来、他人事では決してありません。

ミステリとしてはもう一歩の観がありますが、本を介して人と人との繋がりが生まれるところに、本書の温かさと楽しみを感じます。
もちろん、本書中に登場する幾多の作家名、作品名を目にすることも、本好きにとっては大いなる楽しさです。


テルさん、ウメちゃん/気立てがよくて賢くて/ランチタイム・フェイバリット/道を照らす花/降っても晴れても

              

23.

「横濱エトランゼ Yokohama Etranger ★☆


横濱エトランゼ

2017年06月
講談社刊

(1400円+税)

2020年03月
講談社文庫



2017/07/05



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横浜にある、あるいはあった名所を題材に、それらの場所にかかる人々の深い思いを描いた、横浜という土地ならではの連作ストーリィ。

主人公を務めるのは、高3女子の
広川千紗。推薦で進学する大学が決定済であることから、家が隣同士で幼い頃から好きな相手=小谷善正の傍に少しでもいたいと、善正が勤務するフリーペーパー「ヨコハマ・ペーパー・コミニュティ」編集部(略して「ハマペコ編集部」)で押し込みバイト中。
その千紗が関わることになった、横浜のかつての名所にかかる謎や疑問を、千紗と善正が解き明かしていくというのが、本書のストーリィ・パターン。

「元町ロンリネス」:関東大震災前にあったという“元町百段”。それに関わる謎解き。
「山手ラビリンス」:ビストロ・ランタンのシェフは、ネット上の“洋館七不思議”話に何故顔色を変えたのか?
「根岸メモリーズ」:友人である菜々美の祖母からの依頼。その亡父がかつて亡母にいつか連れて行ってあげると言っていた、海までの見晴らしが良い場所とは何処なのか?
「関内キング」:ハマペコの重要支援者である寿々川喜一郎が、いきなりハマペコに怒りの声、応援を止めると言い出す。その裏にあった事実とは・・・?
「馬車道セレナーデ」渡米していた従姉の恵里香が帰国。果たして恵理子と善正の2人は結ばれてしまうのかと、千紗は心配したり落ち込んだり。

横浜のかつての名所案内+思い出ストーリィ。それなりに楽しめますが、もう一歩物足りずという思いも残ります。

元町ロンリネス/山手ラビリンス/根岸メモリーズ/関内キング/馬車道セレナーデ

            

24.
「ドアを開けたら ★☆


ドアを開けたら

2018年09月
祥伝社

(1600円+税)

2022年04月
祥伝社文庫



2018/09/30



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住んでいるマンションで起きた、遺体が消えてしまった?の謎を、発見者の中年男性と高校生のコンビが解き明かそうとする、ご近所探偵譚。これは、面白いというべきか、それとも不自然かつ非現実的と捉えるべきでしょうか。

主人公の鶴川佑作は54歳 511号室で独り暮らし。親しかった70代男性=串本英司の 502号室を訪ねると、串本が倒れて死んでいるのを発見してしまいます。しかし、今日は警察に事情聴取されたくない事情ありと自室に戻っていると、佐々木紘人という高校生が 502号室の出入りを目撃したとやってきます。
さて翌日、思い直して再び紘人と共に串本宅に入り込むと、何と遺体が消えていた?
ところが、他の住人が串本の姪に連絡し、その
律子がやって来ると遺体はちゃんとあり、普通に葬儀が営まれる予定に。
一体、串本さんの身に何が起きたのか。
気にしない訳にはいかず、佑作と紘人は2人でいろいろ調べ始めます・・・。

遺体は警察事件になるどころか普通に葬儀が営まれることになるし、中途半端なご近所ミステリ、幾ら何でもこれじゃ?と感じていたのですが、串本さんの想像もできなかった不審な行動を証言する人物が現れ、事態は思わぬ方向へ・・・。

失業した佑作に不登校の紘人というコンビ、実際には紘人から指示されるまま佑作がご近所に聞いて回るという設定は苦笑せざるをえなくなるところですが、2人に協力する人たちが現れるところが見逃せません。
マンションというとご近所付き合いがない、というのが一般的ではないかと思いますが、逆に輪が繋がっていくような展開が、大崎さんらしい温かさを感じさせてくれます。

そう、会社が学校で何があっても、温かくいつものように迎えてくれる場所があるのは、救いですよね〜。
※ちなみに、私にとっての救い場所は読書の世界だったかな。


1.まずはチャイムを押してみる/2.今度はノックを/3.カップ麺をすする/4.さっぱりわからない/5.作戦会議はドアの内側で/6.千客万来/7.まさかあの人が/8.踏み込む/9.過去にできなかったこと/10.ちょっとはその気に

                

25.
「彼方のゴールド ★☆


彼方のゴールド

2019年10月
文芸春秋

(1450円+税)

2021年07月
文春文庫



2019/11/24



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“出版社お仕事小説、第3弾”とのこと。

第1弾はというと、老舗出版社<千石社>でローティーン向けファッション雑誌「ピピン」の編集部に放り込まれた新見佳孝を主人公とした
プリティが多すぎる、第2弾は「週刊千石」事件班に放り込まれた信田日向子を主人公としたスクープのたまごだろうと思います。
第3弾は、信田日向子と同期、入社3年目、営業部から
総合スポーツ誌「Gold」編集部に異動となった目黒明日香

スポーツ全般に疎く、こんな自分で大丈夫かと不安を抱える明日香ですが、そんなことは斟酌しないのが会社というもの、ともあれ新部署での仕事がスタート、上司、先輩、外部のライター、さらには取材相手のスポーツ選手にまでまれながら成長していくストーリィ。

いつもながら本シリーズの良さは、新人編集部員の成長を描くと共に、注目されているスポーツ選手の胸の内、編集者とタッグを組む外部のスポーツライター、カメラマンの姿も描いて群像劇となっている処です。
興味を惹かれつつ軽い気分で楽しめる連作ストーリィ。

「勝利の方程式」:取材相手は高校バスケの女子選手、プロ野球のリリーフ投手。
・「
水底の星」:小学生時、幼馴染2人と通ったスミングスクールでのこととその後。
「スタート・ライン」:陸上部、長距離走。
「キセキの一枚」:社内写真部所属のカメラマン=凡野ゆかり(3年先輩)と仕事ぶりを描く篇。
「高みを目指す」:サッカー。
「速く、強く、熱く」:水泳。かつての幼馴染は?

※スポーツ選手への取材となると、ライター、編集者、カメラマンという3者の協力が欠かせないとのこと。
鍋島恵美子という、40歳前後のフリーライターが魅力的。
※明日香の同期=
信田日向子、桑原雅紀も登場します。

1.勝利の方程式/2.水底の星/3.スタート・ライン/4.キセキの一枚/5.高みを目指す/6.速く、強く、熱く

                         

26.
「さよなら願いごと ★★


さよなら願いごと

2020年05月
光文社

(1400円+税)



2020/06/03



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白沢町に住む琴美たち小学生3人が遭遇する日常ミステリ。
その謎を解き明かしてくれたのは、ほそぼそと農業を続ける祖父の手伝いに来てくれた、季節労働者の「
佐野くん」。
しかし、その佐野くんには人に言えぬ秘密が?

上記
は冒頭篇、「願いごとツユクサ」の内容。
その後、
「おまじないコスモス」の主人公は、白沢中学校に通う永瀬祥子土屋拓人たちに。
そこで祥子の母親から、30年前に起きた少女絞殺事件のことが語られます。
さらに
「占いクレマチス」に至ると、主人公は白沢高校2年、新聞部副部長の呉沙也香に。その沙也香たちが文化祭で新聞部が発表するテーマにしようと選んだものは・・・。

小学生、中学生、そして高校生と、まるで少年少女たちがバトンを繋ぐようにして綴られる連作風ミステリ。
そして彼らが調べ始めることになったのは、30年前に起きた少女絞殺、逮捕された男性が無実を主張し裁判中に死去したため真相が明らかにならないまま終結した事件。さて・・・・。

ストーリィ構成の珍しさと、少年少女たちの行動が思わぬ事件の真相追及となるという意外性が本作の面白さ。

冒頭ストーリィに脅かされましたが、大崎さんの仕掛けは多分○○の設定にあるのだろうなぁと早めに気付いたので、割と安心して読めました。
子供と大人のいずれも、また一緒に楽しむこともできる作品だと思います。


願いごとツユクサ/おまじないコスモス/占いクレマチス/花をつなぐ

             

27.
「もしかしてひょっとして ★★


もしかしてひょっとして

2020年10月
光文社

(1300円+税)



2020/11/10



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日常生活におけるちょっとした出来事、何となくひっかかりを覚えること・・・・もしかしてひょっとしたら? という日常ミステリ短篇集。
収録された6篇は、別々に書かれた作品を集めたもの。そのため主人公像、舞台設定、ストーリィ傾向等々バラバラです。
それだけに、かえってお菓子の詰め合わせのような面白さが楽しめます。

「小暑」:1歳の那々美を抱いて実家へ向かう電車内、話しかけてきた老婦人が考えていたことは・・・。
「体育館フォーメーション」:高校バスケ部で2年部員の酒々井がパワハラ紛いの暴言を繰り広げ、生徒会に苦情が殺到。一体何があったのか・・・?
「都忘れの理由」:15年も働いてくれて来たお手伝いの紀和子さんが突然に辞めてしまい、残された老主人公はアタフタ。本気で辞めるのか、一体何故なのか・・・?
「灰色のエルミー」:高校の同級生から預かった猫エルミー。でも預かったことを何故内緒に・・・?
「かもしれない」:メールに添付されていたファイルを開けて社内をウィルス感染させた責任を追及されて左遷させられた同期の菅野。何故彼は甘んじて出向に応じたのか?
「山分けの夜」本書で唯一の殺人事件。伯父の遺体を発見した主人公、誰かの罠に嵌められたのか?

「体育館インフォメーション」と「灰色のエルミー」の2篇が私好み。


小暑/体育館フォーメーション/都忘れの理由/灰色のエルミー/かもしれない/山分けの夜

               

28.
「めぐりんと私。 "Megurin" and Me ★☆


めぐりんと私。

2021年04月
東京創元社

(1300円+税)



2021/05/05



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本バスめぐりん。続編。

今回、移動図書館
“本バスめぐりん号”のスタッフである図書館司書のウメちゃんこと梅園菜緒子、運転手のテルさんこと照岡久志は脇役。
本書題名にあるように、本作で描かれるのは移動図書館と自分との関わり、思い出といった内容。そのため各篇ごと、その主人公に関するストーリィとなります。

本好きにとっては、本にまつわるストーリィとなればどうあれ楽しいものですが、ウメちゃんがお薦め作品を上げる場面があり、リストアップ作品を知るのも嬉しい限りです。
(※ミステリとなると読んでいない作品が多いのですが、少なくとも作品名は知っていた、と少々ホッ。)

「本は峠を越えて」:老女の節子。自動車文庫との出会いから始まる人生ストーリィ。幸せだったのかどうか。
「昼下がりのみつけもの」:紛失したと言われていた種川図書館からの借出本を、優也が天袋から発見。その謎の真相は?
「リボン、レース、ときどきミステリ」:人形のドレス作りが趣味の派遣社員=佳菜恵、めぐりん号を利用していたことから営業部社員の桐原から本好きと思い込まれ、親しく話しかけられます。そのお陰でミステリを読むことになりますが・・・。
「団地ラプンツェル」:70歳の征司、めぐりん号で小学校の同級生と偶然再会。それが機となり、小学生2人のいなくなった友だち探しを手伝うことに。ラプンツェル絡みが楽しい。
「未来に向かって」ウメちゃん同僚の司書=速水典子、自分の地元で移動図書館が廃止になると知りショック。移動図書館を救う道は無いのかと調べ始めますが・・・。

※私の住む市にも移動図書館(バス)がありますが、中央図書館徒歩圏内に居住しているので、移動図書館を目にしたことはありません。一度くらい、どんな本が搭載されているのか見てみたいものです。


本は峠を越えて/昼下がりの見つけもの/リボン、レース、ときどきミステリ/団地ラプンツェル/未来に向かって

               

29.
「バスクル新宿 BUSKURU SHINJUKU ★★


バスクル新宿

2021年08月
講談社

(1500円+税)



2021/09/07



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地方から到着する人もいれば、ここから出発していく人もいる。大勢の人が行き交う長距離バスターミナル<バスクル新宿>
長距離バスの車内、バスクル新宿を舞台にした、連作形式による群像劇。

冒頭2篇を読んだところでは、ちょっとした日常ミステリの連作ものというだけの印象だったのですが、それ以降が面白い。
というのは、各篇の設定・展開が実に様々で、それぞれ趣向の違いが楽しめる。例えればお菓子のバラエティセットを味わう、といった楽しさがあるからです。

また、各篇の登場人物がまた個性的で楽しい。
各篇を舞台化したらさぞ面白いに違いない、と思う次第です。

最終篇がこれまた嬉しい。これぞ連作ものの醍醐味ですね。
 

「バスターミナルでコーヒーを」:山形発のバス、SAで女性乗客が一人姿を消す。一体何が?
「チケットの向こうに」:探し中の大学サークル仲間、果たしてバスクルに姿を現すか?
「犬の猫と鹿」:自宅に刑事。一体何の関わりが?
「パーキングエリアの夜は更けて」:新潟発のバス、その乗客の中に警察が探す犯人が?
「君を運ぶ」:小五男子の行方不明事件。バスクルで度々見かけられた男の子がその少年?

1.バスターミナルでコーヒーを/2.チケットの向こうに/3.犬の猫と鹿/4.パーキングエリアの夜は更けて/5.君を運ぶ

       

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