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1.本物の読書家 2.旅する練習 3.皆のあらばしり 4.パパイヤ・ママイヤ |
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「本物の読書家」 ★★ 野間文芸新人賞 |
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「本物の読書家」は、大叔父が老人ホームに入居するに当たり、その最寄り駅まで送っていくことを言いつけられた主人公=間氷が遭遇した、その途中、車内での出来事。 その大叔父は、川端康成からの手紙を持っているというのが親戚中の噂。途中の車内で間氷にそのことが打ち明けられるのか。 ところが、車内で隣り合わせた30代らしい恰幅の良い男、主人公と大叔父に遠慮なく話しかけてきます。 その男、相当な読書家なのか。有名な小説家の誕生年月日をすらすらと答えます。そして話題は数々の有名作品を経て、川端康成へと。そこで大叔父が明らかにしたのは、驚くべき事実・・・。 「未熟な同感者」は、大学文学部のあるゼミが舞台。 サリンジャーの手紙等について講義するその先生、何故かいつも講義中にトイレへと席を外す。 一方、主人公の阿佐美は、同じゼミ員である美少女=間村季那と親しくなるのですが、彼女には不思議なところもあり。 ストーリィは、ゼミでの現実と合わせるかのように、サリンジャーや二葉亭四迷らの著述断片がコラージュとして数多く挿入されています。 私自身、川端康成やサリンジャーは余り入れ込んだ作家ではないということもあって、ストーリィへの興味は今一つといったところ。 それでも前者については、登場人物3者の思いがそれぞれ微妙に絡み合う展開が少々スリリングで、結構面白かったです。 それに対して後者、伝えようとしているのはこういう処かなと感じたものの、今一つ読みこなせなかったという思いです。 本物の読書家/未熟な同感者 |
2. | |
「旅する練習」 ★★ 三島由紀夫賞 |
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中学受験が終わったサッカー好きの姪と小説家の叔父というコンビが、利根川堤防沿いに徒歩で、千葉県の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅を描いた作品。 元気な姪の亜美はサッカーボールをドリブルしながら、小説家である私は途中、思いついたことを書き留めながら、というロードノベル。 徒歩というのは勿論大変そうですが、同時にいかにも楽しそうです。 私も元々独身時代の一人旅では、行った先で長く歩くことを好んでいましたが、列車やバスあるいは車と違って、歩いて目にする景色は全く別のものがあります。 この2人の旅も、まさにそうしたもの。 ロードノベルとなれば、見慣れぬ景色への興奮があったり、思わぬ出会いがあったりするものですが、その点は本作も変わりありません。 こうした旅を経験できたこと、経験させてくれる親しい叔父がいること、何と亜美という女の子は幸せなことか、と感じます。 それなのに、最後の頁は・・・。 ただ、そのことによってこの旅が、輝きを増すように思えます。 |
3. | |
「皆のあらばしり」 ★★☆ |
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なんとなく面白い・・・読み終わって思わずニヤリとしたくなる面白さ、と言うところでしょうか。 主人公は歴史研究部に属する高校2年生(浮田)。 栃木駅からかなり離れた皆川城址、部活動のため訪れた主人公はそこで、長期出張の会社員だというがうさん臭いところのある男に出会います。 ところがこの男、歴史をはじめ諸々のことにとても詳しい。 主人公、大阪弁で口八丁といった感じの男に翻弄され、その言葉に篭絡されたようです。 いったいこの男の正体は? そしてその狙いは? 本ストーリィ、登場人物は僅かに3人だけ。 歴史研究部の後輩である竹沢という女子が一度登場するだけで、半年間にわたり、主人公と男のやりとりだけで本ストーリィは成立しています。 その意味で本作は、2人の対話劇か、いや対決劇かも。そしてその内容はと言ったら・・・ミステリ? そしてその男がついに口にしたのは、どこにも記録されていないのだという小津久足(実在の人物)の著作「皆のあらばしり」のこと。 おいおい高校生、小隊の正体のよく分からない男の口車に乗っていいのか?と思う処。 最後はどういう展開になるのか。その結末が、喝采したくなる程面白い、痛快です。 歴史を探る面白さと、ミステリ風味と、高校生と男の対決劇といった面白さ。 読み手の好み次第とは思いますが、お薦め。 |
4. | |
「パパイヤ・ママイヤ」 -- |
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2022/05/-- |
近日中に読書予定 |