野口 卓
(のぐちたく)作品のページ


1944年徳島県徳島市生、立命館大学文学部地理学科中退。様々な職業を経験した後、ラジオ・ドラマ脚本・戯曲を執筆。93年一人芝居“風の民”にて第3回菊池寛ドラマ賞を受賞。「軍鶏侍」にて時代小説デビュー。

  


     

「遊び奉行 ★★




2012年12月
祥伝社刊

(1700円+税)

  

2013/02/04

  

amazon.co.jp

専横に振る舞い、商人と癒着して私腹を肥やす筆頭家老を排するため、藩主=九頭目斉雅は深慮遠謀の計画を立てます。その一環として斉雅の妾腹の長子である主人公=亀松は、家臣である家老の家に婿養子として出され、正室の弟である千代松が藩主の座に就きます。
江戸から国許に戻った亀松改め
永之進を待っていたのは、藩内で人気の高い永之進を藩主の座に押し上げ、筆頭家老を排除して藩政を改革しようと企てる若侍たち。
そんな折、義父の跡を継いで家老となり
九頭目一亀と名乗った主人公は、藩が庶民のみに許している盆踊りに内緒で加わって踊りに興じているところを発見されてしまい、家老から降格かつ家禄を半減され、遊び奉行に任じられます。
さて一亀、それは意図したものだったのか。そして狙いは・・・という長篇時代小説。

“遊び奉行”とは正式名称を裁許奉行と言い、町奉行や郡代奉行の手に負えない訴訟を採決し、時によっては許可を与えるというのが主な役目。実は裏方の大変な仕事なのだが、月に一度の勤めで良いことから羨ましがられそんな通称がついた、とのこと。

気さくで明朗、伸びやかな主人公のキャラクターもあって楽しく読み進むことができるのですが、ストーリィは実父である藩主に課せられた目的完遂のため主人公はどう行動するのか、に絞られていますから、その点ではまるで戦略ゲームのよう。池宮彰一郎「四十七人の刺客を彷彿させるところがあります。
本書の面白さは、難関を如何に突破していくかという攻略ゲーム要素にあるといって間違いないでしょう+主人公キャラクターの楽しさ。

※明朗な性格の主人公という点では山手樹一郎「又四郎行状記が浮かびますが、ゲーム性に相応して主人公像は現代的です。

 


  

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