仁木英之作品のページ No.1


1973年大阪府生。信州大学人文学部に入学後北京に留学し、2年間を海外で過ごす。1年間の会社員生活を経て99年より個別指導塾を経営。2004年から小説を書き始め、06年第12回学研歴史群像大賞最優秀賞、同年「僕僕先生」にて第18回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビュー。


1.
僕僕先生

2.薄妃の恋−僕僕先生No.2−

3.胡蝶の失くし物−僕僕先生No.3−

4.千里伝

5.高原王記

6.さびしい女神−僕僕先生No.4−

7.先生の隠しごと−僕僕先生No.5−

8.海遊記

9.鋼の魂−僕僕先生No.6−

10.童子の輪舞曲−僕僕先生No.7−


水平線のぼくら、仙丹の契り、ちょうかい、恋せよ魂魄、神仙の告白、立川忍びより、千夜と一夜の物語、師弟の祈り、立川忍びより−忍ビジネスはじめました!−

仁木英之作品のページ No.2

   


    

1.

●「僕僕先生」● ★★       日本ファンタジーノベル大賞


僕僕先生画像

2006年11月
新潮社刊
(1400円+税)

2009年04月
新潮文庫化



2006/12/10



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これはもう、楽しい小説!
春風駘蕩の中、自然と気持ちが和んでくるような、そんな気分の良さ、楽しさを心から味わえる作品です。
これぞまさに私好み!

中国は唐の時代、官吏の家に生まれた王弁が主人公。この王弁、父親が蓄えた資産で充分に一生過ごせていけると悟って以来、勤勉など捨て去り、毎日ぐーたらに過ごしている青年。
その王弁が父親から命じられて、黄土山に住む仙人を訪ねていくことになります。そこから王弁の生活は一変、本書の物語が始まります。
仙人といえば、枯淡の境地にある白髪の老人というイメージですが、本書に登場する仙人はまるで違う。
風体はといえば、十代半ばの美少女。それでいて何千年も生きているらしい。自分を“僕”と言うことから称して“僕僕先生”
仙骨はないけれど仙縁はあると言われた王弁は、どこが僕僕先生から気に入られたのか、弟子にされて2人で広い世界を旅することになります。

この少女仙人、ちっとも枯淡としていません。
可愛らしい少女姿に、そこは年頃の若者、王弁はついつい師に劣情を抱いてしまう。そんな王弁を彼女がからかう場面は幾度もあり、さらに身体の関係まで結んでも良いようなことまで匂わせるのですから、ますます王弁としては堪りません。
天上世界に何故いないのかと言えば俗世間への関心があるからこそ地上に留まっていて、仙人と呼ばれているのだという。そうであるからには気疲れすることもあるようで、王弁に寄りかかって安らぎを得ているシーンなど、何故僕僕先生が王弁を弟子にしたのか、判る気がします。
ぐーたら息子だった王弁が最後には人に尽くす人間になる、といった展開もあるのですが、率直に言ってそんなことは本作品においてどうでも良いこと。元々あくせくするのが嫌という点で、王弁と僕僕先生は相通じるところがあるのです。

ストーリィ上幾つかの事件もあるのですが、読んでいる間和やかな気分でいられたという印象は少しも変わりません。
なにかとあくせくする日常、小説ストーリィが多い中で、これだけのんびりと寛げる本作品はとりわけ貴重と思います。
春風の中に立っているような、少女姿の僕僕先生と王弁のコンビはとても魅力的です。

畠中恵「しゃばけファンには是非お薦めしたい作品です。

   

2.

●「薄妃(はくひ)の恋−僕僕先生−」● ★☆


薄妃の恋画像

2008年09月
新潮社刊

(1400円+税)

2010年09月
新潮文庫化



2008/10/05



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中国歴史ファンタジー僕僕先生シリーズ第2弾。
本書は、可愛らしい少女仙人の僕僕先生と、その弟子となった人間の青年=王弁とのロードノベル連作短篇集。

ロードノベル=道中記、もちろん私は大好きですが、作者である仁木さんへのインタビューによると、どうもその動機は仁木さんがファンだったというTVドラマ「西遊記」(夏目雅子・堺正章ら出演)にあるそうです。そう聞くと納得できますね。

ロードノベルとなれば、新しくお目見えする妖異もあり、いろいろな事件との遭遇もあり、人間界のトラブルも神仙界のトラブルもあるという面白さが楽しめます。
ただ、意表を付くと同時にどんな展開になるのか予想もつかない面白さがあった前作のように興奮する面白さまでには至らず、安心して楽しめる安定感ある面白さ、という風。
それでも、可愛らしさと辛辣さを兼ね備えた少女仙人の僕僕と、生真面目な割りについつい僕僕先生に劣情を催してしまう王弁のトボケぶりは、常に楽しい。
その点では畠中恵“しゃばけ”シリーズと好一対。片や江戸ファンタジー、片や中国ファンタジー。本シリーズも“しゃばけ”に負けない、楽しめるシリーズになりそうです。

さて肝心のストーリィはといえば、表題にある薄妃の恋を描いた「飄飄薄妃」、あんなストーリィとは思いもよらず。
でもその結果として、僕僕・王弁・吉良・第狸奴の一行に新しく薄妃がメンバーとして加わり、一行の奇妙さをさらに高めることになるのですから、本篇は見逃せません。
気になるのは、「陽児雷児」で姿を現した謎の導士。どうも「奪心之歌」にも絡み、南嶽衡山の女神=魏夫人を酒浸りにした原因ともなった人物のようで、次作以降が楽しみです。

1.羊羹比賽(王弁、料理勝負に出る)/2.陽児雷児(雷神の子、友を得る)/3.飄飄薄妃(王弁、熱愛現場を目撃する)/4.健忘収支(王弁、女神の厠で妙薬を探す)/5.黒髪黒卵(僕僕、異界の剣を仇討ちに貸し出す)/6.奪心之歌(僕僕、歌姫にはまる)

  

3.

●「胡蝶の失くし物−僕僕先生−」● ★☆


胡蝶の失くし物画像

2009年03月
新潮社刊

(1500円+税)

2011年06月
新潮文庫化



2009/04/09



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美少女仙人の僕僕とニート青年の王弁コンビによる中国歴史ファンタジー、僕僕先生シリーズ第3弾。

僕僕と王弁に、駄馬という見かけながら実は天馬という吉良、庵にも化けてくれるので道中には便利という第狸奴、前巻から登場した皮一枚の女性=薄妃というメンバーによるロードノベルは依然として好調。
少女仙人の見目麗しさにいつも惑わせられてばかりの王弁、そんな王弁をからかいながらも実は弟子を愛している僕僕。
そんな2人を薄妃が評して言うところの「師弟よりも近く、恋人よりも遠い距離にいる」とは、まさに言い得て妙。
王弁、いい年してすぐ拗ねるのですが、僕僕は王弁のそんなところが気に入っているらしい。そこが薄妃評の所以でしょう。

こうして皆で旅している今が楽しくて仕方ない、という僕僕の言葉は、そのまま本シリーズを堪能している読者の気持ちに通じています。
春風駘蕩、たゆたうようなのどかさ。細かいストーリィなど気にすることなく、この雰囲気に浸っているだけで充分楽しい。

表題の「胡蝶」とは暗殺者のこと。暗殺者集団である“胡蝶房”の首領から僕僕を狙うよう命を受けた暗殺者=劉欣と僕僕ら一行との関わりが、本巻の中心となる部分です。
そのほか、薄妃と同じく叶えられない恋に苦しむ新人女神が登場したり(「主従顛倒」)、少女の面影を見せる蚕蛾が登場したり(「天蚕教主」)と、あいかわらず顔ぶれは賑やかです。
最後には、これまでの一行の他に新たな顔ぶれ2つが加わりますので、次巻はこれまで以上に賑やかになりそうです。楽しみ。

1.職業兇徒(闇に囚われた者)/2.相思相流(せっかちな女神)/3.主従顛倒(夢に笑えば)/4.天蚕教主(惑う殺し屋)/5.回来走去(誰かのために流す涙)/6.恩讐必報(失くし物、見つけた物)

  

4.

●「千里伝−五嶽真形図− TALES of SENRI」● ★☆


千里伝画像

2009年10月
講談社刊

(1600円+税)

2011年11月
講談社文庫化



2009/11/21



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ほのぼのしたファンタジー僕僕先生シリーズと打って変わって、壮大なスケールで構想された中国ファンタジー・英雄譚。
スケールは壮大でも、面白さまで壮大という訳にはいかない、のが小説の難しいところ。

冒頭は紀元前2世紀の漢王朝・第7代皇帝の武帝の頃。
武帝の前に天地創造の女神である西王母が姿を現し、天地の平穏をもたらす力と同時に、世界を一新してしまう力を持つ“五嶽真形図”について語ります。
しかし、武帝は西王母の信頼を得るに足りず、五嶽真形図に相応しい器は誰かという問題は、1千年後に先送りされます。
その1千年後、異世界に閉じ込められていた異形の“人”たちが五嶽真形図を手に入れ、この世界を自分たちが生きていける場所に一新させようと暗躍する。
それに対して“器”となる可能性を秘めた3人が、五嶽真形図を探し求めて旅立ちます。
人間の父と異形の人である母との間に生まれた千里吐蕃の狩人であるバソン、少林寺の僧である絶海の3人。それに加えて彼らの指南役ともなる道士の趙帰真
どちらの側が
五嶽真形図の選ぶ器になりうるかで、世界は一変してしまうという状況下、3人は現世界を救うことができるのか、というストーリィ。

前半部分、どうストーリィが展開していくのか読めない中にあって、舞台設定および登場人物紹介の部分が判りにくく、ちょっと難あり。
旅と戦いという経験を通じて3人が成長する姿と合わせ、“異形の人”と“人”との間にどれだけの違いがあるのか、という点が本ストーリィの鍵。
しかし、ストーリィ構想が大きかった割りに、最後の展開はそれ程盛り上がる訳でもなかったなぁという印象に終わったのが、惜しまれるところ。
※もしかすると、ファンタジーゲーム向きなのかも。

     

5.

●「高原王記」● 


高原王記画像

2010年02月
幻冬舎刊

(1500円+税)

2013年06月
幻冬舎文庫化



2010/04/28



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壮大な冒険ファンタジー・・・・・なのだろうか?

巨大な高原の中にある幾つかの王国。人間と妖魔の絶え間ない闘い。
英雄となった戦士は精霊と盟約を結び、精霊と協力して更なる闘いに臨む。
高原を司る大総官王は今、次の脱皮をすべく蛹の状態にあり、その間隙を狙って破門された元聖者は、美しき魂を集めその力で更なる脱皮を果たし大いなる力を得ようとする。
何やら、上橋菜穂子「精霊の守り人シリーズを連想させる舞台設定です。
しかし、・・・判らん。

まず、主人公が誰なのか、はっきりしません。
美しき魂を奪い取られた英雄=タンラなのか、タンラと盟約を結んだ精霊=ジュンガなのか。それとも、大総官王の息子と竜王の娘との間に生まれ異能の力をもつ神の子=ジュエルなのか。
表題の「高原王」が、このジュエルを指しているのはまず間違いないところ。
結局は、人間と妖魔の闘いというより、元聖者と彼に狙われた魂の持主たちとの闘い、と言うべきなのでしょう。
だからとしても、そもそも何のための闘いなのか、その闘いに何の意味があったのか、判らない。
闘いは描かれても、主要人物たちが抱くべき志が何も描かれていないから、ではないか。
結局、何だったのだろう、このストーリィは? と思います。

   

6.

●「さびしい女神−僕僕先生−」● ★☆


さびしい女神画像

2010年04月
新潮社刊

(1400円+税)

2013年01月
新潮文庫化



2010/05/11



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美少女仙人の僕僕とニート青年の王弁コンビによる中国歴史ファンタジー、僕僕先生シリーズ第4弾。
従来の連作短篇風と異なり、今回は本格的長篇です。

僕僕と王弁一行が行き着いた土地は、ひどい旱魃に悩まされていた。その原因はというと、前作から登場した蚕嬢が、巫女の役目を放りだして山を下りたために、大きな災いを引き起こす凶悪な神の封印が解かれてしまった、という訳。
王弁が偶然出会ったその女神は、汚く貧しいなりをした少女、という風体。人の好い王弁、思わず同情に駆られ、その女神と友情を交わしてしまう。
しかし、その女神「」を何とかしないと、その地域は旱魃で全滅してしまう。
そんな中、僕僕、王弁は、如何に行動するのか。

珍しく僕僕は余り登場せず、王弁と天馬の吉良が大活躍。最後の最後まで王弁がストーリィ展開の鍵を握ります。
何と王弁、僕僕と対立し、その怒りまで買うのですから、最後はハラハラドキドキ。

そこに至る途中では、王弁が古い神々に会うため、星の彼方までワープして旅するという場面もあり、中国歴史ファンタジーにSFファンタジー要素まで加わったという風です。
星々をまたぎ、古い神々まで登場し、舞台はこれまでになくスケールアップ。しかも長篇、さらに王弁が主役。
それでも、どこかほんわかしたファンタジーという本シリーズの魅力は、何ら変わりません。
1〜3作を読んだ方であれば、本巻も読み逃しなく!

        

7.

●「先生の隠しごと−僕僕先生−」● ★☆


先生の隠しごと画像

2011年04月
新潮社刊
(1400円+税)

2014年01月
新潮文庫化



2011/05/11



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美少女仙人の僕僕とニート青年の王弁コンビによる中国歴史ファンタジー、僕僕先生シリーズ第5弾。
今回も前作に引き続き本格的長篇ですが、趣向が大いに異なります。

今回、僕僕先生王弁たち一行(他に薄妃、劉欣、蒼芽香、吉良)が辿り着いたのは、漢民族の横暴・搾取に対抗し、中原に蛮族の理想国家を打ち立てようとしているラクス王(光の王)が創り上げた街。
住民皆が自由に、屈託なく暮らせる国という、まさにラクス王が理想国家として掲げる目標どおりの街という雰囲気なのですが、王弁たち、何か納得できないものを感じます。
ところが僕僕先生、王弁たちの思いとは正反対に、ラクス王の妻となることを承諾し、王弁たちと距離を置く行動に出ます。
僕僕先生、何故王弁たちと袂を分かつような行動に出たのか、仙人である僕僕先生でも目を曇らすことがあるのか。そして、意気消沈する王弁はどう行動するのか、というストーリィ。
そしてある意味、王弁の真価を問う巻となっています。

本シリーズは、いつも穏やかで温かいユーモアに包まれた昔の中国を舞台にしたロードノベルで、本巻もまたその雰囲気は変わるところありませんが、ストーリィの内容としてはこれまでにない真剣なものを含んでいます。
つまり、漢民族と彼らから“
蛮夷”と呼ばれる南方民族との対立構図、そして、人々にとって理想国家とはどのようなものか、というのがそのポイント。
そうした点で、本書はこれまでにない読み応えがありました。

※本書冒頭で、漢軍に襲われて全滅した村でただ一人生き残った少女=蒼芽香が、新しく一行に仲間入り。楽しみです。

1.蚕嬢の結婚/2.蛮夷の官軍/3.光の国/4.影探し/5.銀の病/6.古き想い/7.拠比の剣

         

8.

●「海遊記−義浄西征伝−」● ★☆


海遊記画像

2011年09月
文芸春秋刊
(1500円+税)

2014年03月
文春文庫化


2011/10/18


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かの有名な三蔵法師(玄奘)が陸路で天竺を目指した物語=「西遊記」(もっとも孫悟空が出てくる伝奇小説ですが)の向こうを張ったかのような、海路で天竺を目指す僧を主人公とした海洋冒険譚。
よって題名は、「西遊記」ならぬ
「海遊記」という次第。
てっきりフィクションと思っていたら大間違い、本書の主人公となる
義浄という僧、実在の人物でした。実際に一人で海路インドへ行き、25年間に30余国を遊歴し、沢山の仏典を持ち帰った人物とのこと。

しかし、そんな歴史上有名な僧を主人公にしたとしても、そこは仁木英之さん、本書はコミカルな味わいに溢れています。
義浄の風貌自体、四角く大きな顔の割に体は細く小さい、さらに足は短くがに股と、まるで滑稽漫画のキャラクターのようです。そのうえ性格の上でもかなりの変わり者、といった具合。
また、お供の小坊主=善行も中々愛嬌があって、楽しいキャラクターです。

そして繰り広げられるストーリィといえば、ペルシャの小さな貿易船に乗り込み、海賊船に追われ、さらに怪人物との対決。
冒険譚という点では、孫悟空の西遊記に引けをとっていないような気がする・・・。

      

9.

●「鋼の魂−僕僕先生−」● ★☆


鋼の魂画像

2012年04月
新潮社刊
(1500円+税)

2015年01月
新潮文庫化



2012/05/06



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美少女仙人の僕僕とニート青年の王弁コンビによる中国歴史ファンタジー、僕僕先生シリーズ第6弾。

一行は雲南省の中央に位置する大きな湖=程海に至ります。
そこで一行が知り合い滞在することになったのは、幼い子供たちに厳しく接して働かせ、子供たちだけの砦を作り上げている観のある
宋格之呉紫蘭という男女コンビと子供たちの元。
ところがこの地を差配する
馬銀槍の武骨な奮闘空しく、隣国=南詔が武力をもって侵略して来ようとします。その背景にあるのは南詔を手先として利用し勢力拡大を狙うと、唐と争う吐蕃との対立。2大国の勢力争いに小国が犠牲にされようとする危機の構図です。さて、僕僕たち一行はどう対処するのか。
そもそも唐帝=李隆基の狙いは、大いなる力をもつという程海の宝=鋼人を手に入れることが狙いという次第。

元々ファンタジー要素が魅力の本シリーズですが、本書ではかなり戦国時代の索漠とした雰囲気が漂い、微妙な思い。
そうした中で救われるのは、孤児になった子供たちを統率して子供たちの生きる道を作ろうとしている宋格之と呉紫蘭と子供たちの姿。ただし、胡蝶の一員である
“捜宝人”の宋格之は、女剣士の呉紫蘭から父親の仇と狙われる関係であるというところが、本作品における妙。
その他、吐蕃の医師である
ドルマとの再会、ジ海から月の女神である“嫦娥”が登場、そして最後には湖底からこの地の守り神として言い伝えられていた首のない“鋼人”が登場と、登場人物&登場神の多彩さには事欠きません。

さらに一行の旅は続き、本シリーズの面白さも続きます。

1.捜宝人/2.南詔風景/3.程海に、宝あり/4.女神は見た/5.それぞれの決意/6.湖底の迷宮/7.鋼人たち

         

10.
「童子の輪舞曲(ロンド)−僕僕先生− ★☆




2013年04月
新潮社刊
(1400円+税)

2016年04月
新潮文庫化


2013/05/11


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美少女仙人の僕僕とニート青年の王弁コンビによる中国歴史ファンタジー、僕僕先生シリーズ第7弾。
今回は久々の短篇集なのですが、以前のような連作短篇趣向ではなく、純然たる短篇6作。しかも様々に趣向が凝らされた短篇集ですから、存分に僕僕と王弁ら一行の仲の良さ等々を楽しむことができます。

「避雨雙六」は雨の中、僕僕一行が双六をして遊びます。僕僕と王弁のちょっとした駈け引きが楽しい。
「雷のお届けもの」は、以前僕僕に助けられ、今は真の雷神となるため修行中の少年=董虔が主人公。龍神同士のゴタゴタ争いに巻き込まれた董虔はさて・・・・。
「競漕曲」は、結界が張られた島の港に閉じ込められてしまった僕僕一行、脱出をかけての海王側の船との勝負は如何・・・。
「第狸奴の殖」では、何と第狸奴が発情期! その世話を僕僕から命じられたものの王弁にそれができるのか?
「鏡の欠片」は、司馬承禎、布袋、本書のナビゲーターである2人の童子が主役。
「福毛」は何と現代ストーリィ。主人公=康介は高校の同級生だった香織と結婚し双子の女の子にも恵まれますが、入院した香織の病状は老衰と医者に言われて呆然・・・・。

はじめに/早わかりロードマップ&キャラクター紹介/避雨雙六/雷のお届けもの/競漕曲/第狸奴の殖/鏡の欠片/福毛/あとがき

            

仁木英之作品のページ No.2

    


  

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