村上春樹作品のページ


1949年京都府京都市生、兵庫県芦屋市育ち、早稲田大学第一文学部演劇学科卒。74年国分寺でジャズ喫茶を開店し、経営しながら大学を卒業。79年「風の歌を聴け」にて作家デビューし、同作品にて群像新人文学賞、82年「羊をめぐる冒険」にて野間文芸新人賞を受賞。87年「ノルウェーの森」がベストセラーとなる。小説家・翻訳家。

  


 

●「東京綺譚集」● ★★




2005年09月
新潮社刊
(1400円+税)

2007年12月
新潮文庫化

  

2005/10/26

「ノルウェーの森」を読んだのですが、私としてはあまり感じるものがありませんでした。村上作品とはどうも波長が合わないようだと思って、それ以来村上作品を手に取ることはありませんでした。ですから、本書はそれ以来となる2冊目の村上作品。
長篇ではなく短篇集ですから、その分気軽に手を出す気になりましたし、「綺譚集」という題名に惹かれた所為もあります(私の好きな濹東綺譚に感じが似ている)。

現代社会における、ちょっと不思議でありそうもない話を書き綴った5篇。さらっとした味わいが快い。
小説を読んでいて何より楽しいのは、ストーリィに疑問やもどかしさを感じることなく、そのまますっとその物語世界にひたれる時です。本書には、軽々とそんな雰囲気にひたれる快さがあります。そこが本書の大いなる魅力。
5篇の中では一番ありそうな話である「偶然の恋人」と、一番ありそうもない話の「品川猿」が心に残ります。
冒頭の「偶然の恋人」が素敵な短篇であったからこそ、それ以後の物語にもすんなり入り込めた次第。
5篇中とくに注目されているらしい「品川猿」は、品川区に棲みついた猿にからむ話。さてその猿が人から盗んだものとは、何だったのでしょうか。それは読んでのお楽しみ。

村上さんの長篇作品の評価が高いために、私のように「あまり面白くなかった」と思っても、はっきりそうとは言えず沈黙していた人も多い筈。そんな私でも、本書は肩肘はることなくすんなり楽しむことができました。ものは試し、ひとつ読んでみては如何とお勧めします。

偶然の恋人/ハナレイ・ベイ/どこであれそれが見つかりそうな場所で/日々移動する腎臓のかたちをした石/品川猿

 


  

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