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2.ふらんす物語 4.つゆのあとさき 5.墨東綺譚 ※.四畳半襖の下張 |
●「あめりか物語」● ★★☆ |
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1951年06月 2000年07月 |
明治36〜40年(1903〜07)、永井荷風が25〜29歳、約4年間のアメリカ滞在中に書いた文をまとめたものが、本書です。折々雑誌に投稿していたものを単行本としてまとめて博文館より刊行したのが、ちょうど荷風の帰朝時期と重なり、一躍荷風を新文学の中心人物にならしめた、という作品です。 船房夜話/牧場の道/岡の上/酔美人/長髪/春と秋/雪のやどり/林間/悪友/旧恨/寝覚め/一月一日/暁/市俄古の二日/夏の海/夜半の酒場/落葉/夜の女/ちゃいなたうんの記/夜あるき/六月の夜の夢/舎路港の一夜 (余篇)/夜の霧(余篇)/夏の海(異文) |
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●「ふらんす物語」● ★★★ |
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1951年07月 1991年05月 |
横浜正金銀行(東京銀行を経て現東京三菱銀行)リヨン支店勤務を命じられ、アメリカから渡仏した荷風のフランス滞在記。しかし、荷風のフランスへの熱い思いにも拘らず、滞在期間は11ヵ月半と短いものでした。 冒頭から、荷風には、勤める為に遠路旅して来たという雰囲気はまるでありません。むしろ旅行者のそれに近いと言えます。 船と車/ローン河のほとり/秋のちまた/蛇つかい/晩餐/祭りの夜がたり/霧の夜/おもかげ/再会/ひとり旅/雲/巴里のわかれ/黄昏の地中海/ポートセット/新嘉坡の数時間/西班牙料理/橡の落葉 |
●「すみだ川・新橋夜話」● ★★ |
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1909年発表
1995/09/21 |
「すみだ川」 「新橋夜話」 |
●「つゆのあとさき」● ★★ |
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1931年発表
1995/08/25 |
銀座にあるカフェの女給・
君江の奔放な生き方を描いた作品。
通俗作家の清岡というパトロンがいながら、君江は、矢田、若い舞踏家等、気分次第、なりゆき次第で関係を持ちます。罪悪感を持つわけでなく、生きたいがまま自由に生きている、という君江の姿が描かれています。 |
●「墨東綺譚(ぼくとうきたん)」● ★★★ |
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1991年07月 |
小説家大江匡は、小説の材料を探しに隅田川の向こう側へ足を伸ばした際に雨に降られ、それが縁で雪という若い私娼と知り合います。それから、大江は足繁く、向島・玉の井の私娼窟、雪の元へ通うことになります。本書はその玉の井を舞台に、大江と雪の関わり及び周辺の風情を、日記の如く綴った作品です。
読み始めから、面白さを予感させるゾクゾクするような思いに捕らわれました。文章のひとつ、ひとつが何とも面白く、滲み出るような味わいを感じさせられるのです。 |
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「四畳半襖の下張」 ★★☆ |
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「四畳半襖の下張」は永井荷風の作品ですが、もう一つ、作者不明である同名の春本があり、こちらの方が有名。 その春本は、1972年(昭和47年)に雑誌に掲載されて摘発を受け、裁判にもなったもの。 作者不明ながら、長く永井荷風の作として伝えられ、そうだとする説が今でも有力。 私も作品名だけは知っていたもののお目にかかったことはなかったのですが、新潮社の宣伝誌「波」の今月号に「伝・永井荷風」として掲載されていたことから、やっと読めた次第です。 作者である金阜山人が購入した元待合の家を買ったところ、四畳半の襖の下張から文反故を見つけると、それは男女の情交を詳細に綴ったものだった、というのが出だし。 一言、面白かったです。 今のようにAV作品が巷に溢れるまでは、確かに官能小説としてドキドキさせられたのでしょうが、現代ではもはや本作から覚える情感は薄れてしまったように感じます。 一方、スポーツの格闘技のような、当事者である男女間で勝負の駆け引きといったようなものが繰り返される、そこが実に面白いのです。 映像では得られない、文章だからこそ味わえる面白さだといって間違いありません。 こうした面白さがあるから、小説を読むのは止められません。 |