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31.めおと 32.べっぴん−あくじゃれ飄六捕物帖− 33.楠の実が熟すまで 34.きりきり舞い−きりきり舞い− 35.炎天の雪 38.春色恋ぐるい−天女湯おれん−(文庫改題:天女湯おれん 春色恋ぐるい) 39.恋かたみ−狸穴あいあい坂− 40.幽霊の涙−お鳥見女房− |
【作家歴】、まやかし草紙、誰そ彼れ心中、幽恋舟、氷葬、月を吐く、お鳥見女房、笠雲、あくじゃれ瓢六、源内狂恋、髭麻呂 |
其の一日、蛍の行方(お鳥見女房No.2)、犬吉、恋ほおずき、仇花、紅の袖、鷹姫さま(お鳥見女房No.3)、山流しさればこそ、末世炎上、昔日より |
こんちき(あくじゃれ瓢六)、天女湯おれん、木もれ陽の街で、狐狸の恋(お鳥見女房No.4)、奸婦にあらず、かってまま、狸穴あいあい坂、遊女のあと、美女いくさ、巣立ち(お鳥見女房No.5) |
四十八人目の忠臣、心がわり(狸穴あいあい坂)、来春まで(お鳥見女房No.7)、再会(あくじゃれ瓢六)、ともえ、相も変わらずきりきり舞い、王朝小遊記、破落戸、帰蝶、風聞き草墓標 |
今ひとたびの和泉式部、元禄お犬姫、尼子姫十勇士、旅は道づれきりきり舞い、別れの季節(お鳥見女房No.8)、嫁ぐ日(狸穴あいあい坂)、きりきり舞いのさようなら |
●「めおと」● ★☆ |
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諸田さんの初期作品を集めた短篇集。 本短篇集の題名が「めおと」とされているように、収録6篇に共通するのは、男女の関係を描いたストーリィであること。 「眩惑」は、諸田さんの処女作である単行本「眩惑」を文庫化する際に新たに書き加えた一篇とのこと。 諸田ファンなら充分に楽しめる短篇集です。 江戸褄の女/猫/佃心中/駆け落ち/虹/眩惑 |
●「べっぴん−あくじゃれ飄六捕物帖−」● ★ |
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2011年11月
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「あくじゃれ瓢六」「こんちき」に続く、“あくじゃれ瓢六捕物帖”シリーズ第3弾。 「女難」は、お袖のヒモでいるのに情けなさを感じた瓢六が、お袖と痴話喧嘩してその家を飛び出すという顛末。したたかな悪党だった筈の瓢六がこれではねぇ。 各章で起きる事件の数々、その脇になぜか若く美しい女の姿がちらつく。 後半一気に緊迫感が高まっていく辺りは流石ですが、結末が痛ましい。瓢六や弥左衛門の幸せそうな様子と余りに対照的で、すっきりしない気持ちが読後に残ってしまう故に、満足感いまいち。 きらら虫/女難/春の別れ/災い転じて/金平糖/べっぴん/杵蔵の涙 |
●「楠の実が熟すまで」● ★★ |
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2012年08月
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将軍家治の時代、京の禁裏では経費出費が異常な膨らみを見せていた。幕府側は内偵を進めるが、その手先とした人間が相次いで殺害される。 嫁いだ早々利津は、高屋家が何か秘密を隠していることを感じます。その一方、夫となった康昆は気さくな好人物であるうえに、継子となった幼い千代丸からはすっかり慕われるという按配。 サスペンスチックなストーリィですが、時代ものサイコ・サスペンスの傑作「誰そ彼れ心中」程のサスペンス性はありません。長篇時代小説としても、むしろ小ぶりという方でしょう。 ※なお、公家社会と聞いて華やかな世界を想像するのは誤り。当時の公家たち、貧乏だったのですから。 |
●「きりきり舞い」● ★☆ |
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2012年01月
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「東海道中膝栗毛」作者の十返舎一九といえば、昨年、松井今朝子さんの「そろそろ旅に」で読んだばかり。 娘の舞も継母のえつも、勝手なことばかりしている一九に振り回され、苦労ばかり。 好き勝手なことばかりしている奇人たちに囲まれる中、何とかそこから抜け出そうといつもきりきりしている年頃娘の“舞”、という趣向か。 いずれにせよ、奇人たちに囲まれ振り回されながら、きりきりと飛び回っている舞と、その奇人たち=一九、お栄、尚武らとのドタバタ騒動が楽しい一冊。 奇人がいっぱい/ああ、大晦日!/よりにもよって/くたびれ儲け/飛んで火に入る/逃がした魚/毒を食らわば |
●「炎天の雪」● ★★☆ |
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2013年07月
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加賀騒動の余波消え去らぬ、また短期間の内に相次いで藩主が急死するという世情穏やかならぬ加賀前田藩を舞台に、過酷な運命に翻弄される人々、苦難から人への怨みを募らせる人々、それと逆に怨みを捨て人のために尽くそうと奔走する人々と、様々な人間の姿を描き出す壮大な人間ドラマ。 時代は、6〜8代藩主が相次いで急死する後に藩主となった第9代藩主=重教の時代。2〜4代藩主下での加賀藩繁栄を描いた中村彰彦「われに千里の思いあり」と比較して、5代藩主=吉徳を境にしてここまで激変するものかと驚く思いです。 本ストーリィの主な人物は、武家娘にもかかわらず細工職人と駆け落ちした多美・白銀屋与左衛門の夫婦と、加賀騒動に連座して9年の牢獄生活を送り出牢したばかりという元鳥屋の佐七。 上下巻合計 900頁余りという大長編、当初は波乱の人生を送る人々の物語をただ読むという感じでしたが、後半では幾人もの人たちの真摯な思いに胸打たれます。そして結末近くに至ってくるともう圧巻、感動の胸いっぱいになります。 多美、佐七、多美の子=当吉、小笠原文次郎、若き藩主=重教、その生母=実成院、大槻伝蔵の遺児=ひさ・猪三郎の姉弟、橋番の富蔵爺等々、心の残る人々の姿が大勢あります。 |
●「天女湯おれん−これがはじまり−」● ★☆ |
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2012年05月
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美女おれんが女将となり、曲者揃いの仲間たちと共に湯屋を舞台に活躍する「天女湯おれん」シリーズ第2作・続編かと思ったのですが、「これがはじまり」という副題が示す通り、それより前のいきさつを描いたストーリィ。 神田佐久間町から出火した大火事は、おれんが養女となっていた八丁堀の湯屋、裏長屋を焼くばかりか、義父の利左衛門や長屋の支配・藤右衛門という頼りになる人物の命まで奪ってしまう。焼け出された人々はひとまずお救い小屋へ。 前夜ストーリィとあって気軽に楽しめる時代小説エンターテイメントになっていますが、前作の存在があってこそ。 |
●「お順−勝海舟の妹と五人の男−」● ★★ |
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2014年09月
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勝海舟ら男たち、そして幕末・明治という歴史の大変動期を、女性の視点から描いた長編歴史小説。 振り返ってみると、諸田さんには歴史上に大きな足跡を残した男たちを女性の視点から描いた作品が結構あります。 「五人の男」とは、父=勝小吉、恋した相手=島田虎之助、夫とした佐久間象山、兄=麟太郎、悪縁相手=村上俊五郎に他なりません。 小吉の放蕩/虎之助の野暮/象山の自惚れ/麟太郎の人たらし/俊五郎の無頼/お順のその後 |
●「春色恋ぐるい−天女湯おれん−」● ★☆ |
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2014年03月
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江戸は八丁堀の湯屋“天女湯”を舞台に、一人身の美人女将おれんとその仲間たちの色めいた活躍を描く“天女湯おれん”シリーズの第3弾。 老番頭の与平・おくめは元盗賊・元女郎という夫婦、下足番の弥助は欲求不満の女たちを相手とする色事師と、天女湯で働く仲間たちはいずれも訳ありばかり。 市井もの連作短篇集というと、町物語をはじめ、用心棒もの、青春、恋愛、捕り物といろいろな趣向がありますが、本シリーズは男女の艶めいた話という趣向が魅力です。 当時の江戸は圧倒的に女性人口が男性人口に比べ少なく、市井の女たちは結構たくましかった筈。その点、ストーリィは現在の日本にも通じる処が多々あり。 女、貰い受け候/昇天、鼬小僧/ソにして漏らさず/ホオズキの秘密/春色恋苦留異/大姦は忠に似たり/忍法、天遁の術 |
●「恋かたみ−狸穴あいあい坂−」● ★☆ |
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2014年07月
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火付盗賊改方の孫娘=溝口結寿と町方同心=妻木道三郎の、恋と様々な事件をほのぼのと描く時代物連作短篇集、「狸穴(まみあな)あいあい坂」の続編。 前作は、恋と事件、半々の構成という印象でしたが、本書では2人の思いが募りに募り、恋が主体、事件は2人が出会うための舞台設定に過ぎず、という印象です。 現代感覚をもった時代小説とはいえ、町人階層ではなく武家階層ともなれば、本人たちが想い合ったからといってそううまく進むものではない、という現実を見せつけられた気がします。 今後、2人の関係は、本物語は、一体どういう風に展開していくのか、まるで見当が付きません(こんなのは初めて)。 春の雪/鬼の宿/駆け落ち/星の坂/恋の形見/お婆さまの猫/雪見船/盗難騒ぎ |
●「幽霊の涙−お鳥見女房−」● ★☆ |
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2014年05月
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時代小説版ホームドラマ“お鳥見女房”シリーズ第6弾。 前巻で矢島家の隠居=久右衛門が死去。その存在がなくなってちと寂しさが漂います。冒頭の「幽霊の涙」は、その久右衛門の新盆を背景にした篇。久右衛門そっくりな人影を見た、という目撃談が相次ぎ、流石の珠世も動揺します。勇気を奮ってその姿を探しに行きますが・・・。 本巻では、子供たちの成長ぶりが印象的です。 致し様のない運命であったとは思うものの、本書の最後には言いようのない苦みが残ります。 幽霊の涙/春いちばん/ボタモチと恋/鷹は知っている/福寿草/白暁/海辺の朝 |
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