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【作家歴】、青森ドロップキッカーズ、虹の岬の喫茶店、ミーコの宝箱、ヒカルの卵、たまちゃんのおつかい便、おいしくて泣くとき、青い孤島、本が紡いだ五つの奇跡、ロールキャベツ、さやかの寿司 |
| 11. | |
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「桜が散っても」 ★★ |
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釣り好きの山川忠彦は、釣りに訪れた清流のある桑畑村で雑貨屋を営んでいる檜山浩之と出会い、すっかり意気投合して親友の仲に。そして桑畑村は、忠彦にとって“第二の故郷”といってよい存在になります。 しかし、その桑畑村の美しい自然を破壊するようなリゾート開発計画が進行していることを知らされたうえ、その開発に携わっているののが、自身は直接関係ない部署にいるとはいえ、勤務先である帝王建設と知る。 その後、釣りをしに桑畑村を訪れた忠彦の前で、信じ難い出来事が起こり、それは忠彦の人生、そして家族の運命を大きく変えてしまう。 冒頭のあらすじは上記のようなもの。 出版社紹介文には「不器用ながらも自分の信念を貫いた男と、その家族の絆を描いた感動の物語」とありますが、ちょっと違うのではないか、と思わざるを得ません。 大きな出来事の結果、忠彦と麻美の夫婦は離婚に至り、麻美は人生を台無しにされ、子ども2人(建斗と里奈)は父親に捨てられたという思いをずっと抱えることになります。 結果がどうであれ、父親と子どもの関係が断絶していた事実はなくならないし、離婚して20年も経てば元妻にとって元夫はもう他人でしかないのではないか。 それを、家族の復元とまとめてしまうのには、ちょっと疑問を感じます。 ただ、子ども2人にとって、その後に父親が歩んだ人生が、意義の無いものでは決してなかった、子どもたちのことを決して忘れたわけではなかった、と知ることは救いであったと思います。 以前だったら単純に感動的な家族の物語として感動できたかもしれませんが、家族の姿が変化してきた今にあっては、家族の物語としてまとめてしまうことには、残念ながら違和感が残ります。 プロローグ.辻村宏樹/1.山川忠彦/2.山川忠彦/3.松下麻美/4.松下里奈/5.松下建斗/エピローグ.松下春菜 |
| 12. | |
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「ハレーション」 ★★ |
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舞台は南国の離島、子泣き島。 そこで天馬拓海、鳥羽風太、白崎涼子は、三人だけの同級生にして幼なじみ。 ストーリーの始まりは12年前、三人が小五だった時。 釣りに出掛けた拓海は、涼子の飼猫が海に落ちたのを見かけ、防波堤にいた風太の父親=漁師の亮平に助けを求めます。軽く引き受けて海に飛び込んだ亮平でしたが、あろうことが溺死してしまう。 罪の意識から逃れられない拓海は、高校を卒業して都会に出て以来、一度も島に戻っていない。また、父親の死後、風太は母親に連れられて島を出て行ったきり。 そしてある日、拓海は偶然、近所で風太に再会します。 ヒモとなっていた女に追い出されたと言い、風太は拓海のアパートに転がり込んできて・・・・。 離散していた幼なじみの内二人が再会し、そして風太に引っ張られるようにして拓海は“ふるさと”である島に帰ります。 二人を歓迎する母親、妹の亜美、涼子と杏奈の姉妹・・・・。 拓海や風太たちの人生が再び動き出し、そして秘められていた親たちの関係が明らかになり・・・。 島という舞台だからですが、幼なじみ三人の関係が好いなぁ。 中三で親友関係という妹たち、亜美と杏奈の仲の良さも好い。 お互いに気心が知れていて、性格もよく分かっている、だからこそ踏み込んでいける、そんな関係は貴重に思えます。 三人が再び一堂に会したからこそ、それぞれの隠し事をやっと打ち明け、それによって新たな旅立ちへと迎える、そんな本ストーリーは快いばかり。 必ずしも良いことばかりでなく苦労も多いことだろうと思いますが、胸の内に、いつだって帰れる場所である<ふるさと>を抱いていられることはどんなに素敵なことだろうと思います。 最初こそ暗い雰囲気から始まったストーリーですが、読了後の気持ちはすこぶる晴れやかです。 1.十二年前の悪夢/2.愛すべきバンザイ/3.偶然の再会/4.それぞれの秘密/5.ハレーション |