破綻寸前の豪華ホテルを舞台にした、連作長編風ドタバタ型コメディ・サスペンス。
評判の豪華リゾートホテルだったが、副支配人が従業員を大量に引き抜いて同業ホテルに転職、その後支配人が自殺して客足が減り、その後をギャング一味が常連客として埋めているという状況に追い込まれた“ホテル・モーリス”。
そのホテルに6日間限定の支配人として送り込まれたのは、ホテルの筆頭株主となっているコンサルティング会社・芹川鷹次社長の甥でまだ若い美木准。ただし甥とはいっても亡兄の妾の子という関係であり、密かに准を警戒している叔父にどんな企みがあるのやら。
しかしホテルの支配人に就任した准は驚く。新人コンシェルジュ=那海の化粧はまるでキャバ嬢のよう。さらに同じ日チーフ・コンシェルジュとして戻ってきたという日野は伝説的な殺し屋“レディ・バード”では?
前ホテルオーナーの妻で現オーナーとなった星野るり子を支えながら、このメンバーで新興ギャング=鳥獣会の宴会を待ち受けることとなった准、果たしてどんな展開が待ち受けているのやら。
若い割に能力ありという評価の准、しかし本書では狂言廻りという役柄のようです。
次々とホテルに投宿する問題ありげな客たちを迎え撃つのは、日野+日野の人脈に連なる人物たち。
ホテルを舞台にした傑作小説としてはアーサー・ヘイリー「ホテル」があり、名作映画には「グランド・ホテル」がありますが、本作品の面白さはスリリングでユーモラスな日野と暴力団員たちとの攻防にあると言って良いでしょう。
ただ、部分的に安易過ぎる展開のあるところが、少々残念。
プロローグ/グリーン・ビートルをつかまえろ/ローチ氏を始末するには/けじめをつけろ、ドラゴン・フライ/シェルの歌でも聴け/バタフライを見失うな/エピローグ
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