アーサー・ヘイリー作品のページ


Arthur Hailey  1920年、イギリスのルートン生。イギリス空軍パイロット、カナダの出版社の編集者を経て作家。1965年「ホテル」がベストセラーになって以降、業界・組織をテーマにした作品にて人気を博す。2004年11月死去。

 
1.ホテル

2.殺人課刑事

  


      

1.

「ホテル」●  ★★★
 
原題:“HOTEL”     訳:高橋豊




1965年発表

1974年09月
新潮文庫刊

(上下)



1974/12/17



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ニューオーリンズの老舗ホテル、セント・グレゴリーを舞台にホテル業界を描いた長編小説。
数多いアーサー・ヘイリー作品の中で初めて読んだ作品でしたけれど、その面白さにすっかり惚れ込み、その後ヘイリー作品を愛読するきっかけとなった、私にとっては記念すべき小説です。

ホテルというのは多くの、しかもいろいろな人間が集まる場所。様々な人間ドラマを描くのに、これ以上ふさわしい舞台はないと言えます。
そのとおり、このセント・グレゴリーには様々な人間が集まり、様々なドラマが同時並行して展開されていきます。しかも、セント・グレゴリー自体、杜撰な経営から深刻な赤字を抱えて抵当期限が目前に迫り、チェーン・ホテルの買収提案に晒されていた。
轢き逃げ事故の隠蔽を図る公爵夫妻、彼らを脅迫し隠蔽工作に加担する警備主任、黒人医師への宿泊拒否というトラブル、富豪令嬢の強姦未遂事件に、ホテル専門の泥棒、買収を目論むホテル王とその愛人の登場と、どのストーリィをとっても面白いものばかり。
そんな様々なドラマが交錯するこのホテルの中にあって、主人公となるのが副総支配人のピーター・マックダーモット
この青年ピーターと、ホテルオーナーの秘書で彼の恋人となるクリスティン・フランシスの2人の存在が、実に爽快。
そして、2人に好意を抱くアルバート・ウェルズという老人泊り客の存在が、この物語を際立たせて面白いものにしています。
このピーターとクリスティン、ウェルズ老人、私がこれまで数多く読んできた小説の中でも、とりわけ好きな登場人物たちです。
そして、本書の最後を飾るクリスティンの言葉も。

本書はヘイリー作品の中でも特にお薦めしたい作品。すこぶる面白いこと、間違いありません。

       

2.

「殺人課刑事」●  ★★★
 
原題:“DETECTIVE”




1997年発表

1998年09月
新潮社刊
(2500円+税)

 2001年05月
新潮文庫化
(上下)


1998/10/24


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前作から8年ぶり、なんと77歳の新作! にもかかわらず、A・ヘイリーの健在ぶりを充分に堪能できる1冊です。
最初は、従来の業界小説なのか、ハードボイルド小説なのか見極めがつかず、おそるおそる読み出したのでした。

ストーリィは、死刑執行直前の連続殺人犯が、自分を捕らえた部長刑事エインズリー(主人公)を呼び出すところから始まります。その結果、解決済となっていた重要事件に再捜査の必要が発生、急務となります。
その捜査を縦軸とし、横軸として警察という人的組織、現代の捜査方法、刑事たちの個人問題、そして現在の社会問題までが詳らかに描き出されていきます。
さらに、その縦軸進行の途中に過去の回想を織り込むことによって、ストーリィに立体感が生まれています。

いくつかの事件のうち、ダナヴァル家事件の挿入はお見事。この作品がハードボイルド小説でなく、警察を舞台にした業界小説であることを明示する効果を挙げています。
最後には冒頭から始まった縦軸の事件に戻り、サスペンスとしての醍醐味も十分味わわせてくれます。従来の業界小説に、警察ものサスペンスを付け加えることによって、ぐんと面白みを増した1冊と言えるでしょう。

登場人物は各々魅力的なのですが、それ以上に黒人、女性にかかわりなく全員が精一杯に活躍している点に目を引かれます。
しかし、何と言っても秀逸なのは、元神父という経歴をもった主人公
マルコム・エインズリー。すべてはこの彼の経歴が鍵になっています。

  

読書りすと(アーサー・ヘイリー作品)

 


 

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