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1.告白 2.少女 3.贖罪 4.Nのために 5.夜行観覧車 6.往復書簡 7.花の鎖 8.境遇 9.サファイア 10.白ゆき姫殺人事件 |
高校入試、絶唱、未来 |
●「告 白」● ★★☆ 小説推理新人賞・本屋大賞 |
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2010年04月
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中学校の女性教諭が終業式の日、担任クラスの生徒たちに向かって教師を辞職することにしたと告げ、さらにその経緯を語り出すという形で始まるストーリィ。 その彼女の話は、生徒等に大きな衝撃を与えるものだった。先頃死んだ彼女の4歳の娘。学校のプールに転落しての事故死とされていたが、「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」と彼女は暴露したのだった。 語るという形式がもたらすリアリティ、迫真性。そしてさらに、生徒と同じ立場に置かれることによって、読み手もまた追いつめられるかのような緊張感を強いられます。 娘を殺された教師、担任クラスの女生徒、犯人の母親、犯人である生徒、もう一人の生徒と、語り手を次々に変えてそれぞれの立場から事件の隠された部分までもが語り出されていきます。 ストーリィ内容はまるで異なりますが、小杉健治「陰の判決」を読んだ時以来の興奮を味わった気がします。 1.聖職者/2.殉教者/3.慈愛者/4.求道者/5.信奉者/6.伝道者 |
※ 映画化 → 「告白」
●「少 女」● ★★ |
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2012年02月
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「告白」で衝撃的なデビューを飾った湊さんの第2作目。 前作のような斬新なストーリィという訳には行きませんが、本作品も入り口(はいりぐち)は面白い。 まず女子高生が書いたらしい遺書をプロローグとし、本章に入ると「人の死ぬ瞬間を見てみたい」という女子高生2人が登場。 この敦子と由紀の2人、親友なのか、関係がこじれて憎み合う関係なのか、冒頭では定かに判りません。 でも、女子高生が何故「人の死ぬ瞬間を見たい」と言うのか? 乙一「GOTH」を連想してしまうところですが、ストーリィはそれから意外な転がりをみせます。 冒頭では、これからどう展開して行くのか予想もつかないといった、緊迫感と畏怖を孕んだ雰囲気だったのですが、読み終える頃には、笑っちゃう、とまるで正反対の一言。 人と人とを結ぶ縁の糸は、とかく絡むものではありますが、こうまで絡んでしまうと、不自然と思うか、それとも私のように笑っちゃうと思うか。 |
●「贖 罪」● ★★ |
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2012年06月
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田舎町の盆休み。小学校の校庭で遊んでいた少女たちを悲劇が襲います。 彼女たち+αが、各々自分の身に起きた思いも寄らない事件について語る、という形で綴られていく連作形式の長篇ミステリ。 本ストーリィの陰惨さを嫌う人がいても不思議ではありません。でも、私としては、本書の趣向を買いたい。 フランス人形/PTA臨時総会/くまの兄妹/とつきとおか/償い/終章 |
●「Nのために」● ★ |
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高級タワーマンションの一室で起きた夫婦殺人事件。 殺されたのは、大企業勤めで実家も資産家という野口貴弘42歳、妻の奈央子29歳。 関係者一人一人の述懐形式でストーリィを展開する、真相を明らかにしていくという手法は、「告白」以来著者お得意のものと思いますが、如何せん長ったらしい。 さて、登場人物が皆々、頭文字「N」。各人にとってNとは誰だったのか、それを確かめるのも、本作品の趣向のひとつ。 |
●「夜行観覧車 Ferris wheel at night」● ★★ |
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2013年01月
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高級住宅地のエリート一家で起きた衝撃的な事件。 遠藤家の親子、高橋家の兄妹弟を交互に描き、その間に小島さと子を挟むという構成で綴る、家族小説。 遠藤家の3人+高橋家の3人+小島さと子と、語り手を随意に変えて一人称で綴り、一人一人見える景色は異なるという前提で描く、その構成が何といっても上手い。 |
●「往復書簡」● ★☆ |
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2012年08月
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デビュー作「告白」以来、次々と新趣向によるミステリ風作品を刊行してきた湊さんが今回用いた趣向は、往復書簡を題材にしたもの。 基本的に私は、書簡体小説、大好きです。 ・「十年後の卒業文集」:高校放送部の元部員たちが元部員同士の結婚式に列席した後、元部員の間で手紙が交わされる。出席しなかったあの子は今? 十年後の卒業文集/二十年後の宿題/十五年後の補習 |
●「花の鎖」● ★☆ |
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2013年09月
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3人の女性の生きる姿を描いた長篇ストーリィ。 本作品の構図は、早い段階で判ります。でもそれは、作者の湊さんにとっては想定内のことでしょう。 その結果はというと、十分面白かった。ただし、感動までには至らなかったことが、ちと残念。 |
●「境 遇」● ★☆ |
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2015年10月
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高倉陽子36歳は二世議員の妻。陽子の親友である相田晴美は、独身の新聞記者。 そんな陽子が名だたる絵本賞を受賞したことから、現職国会議員の妻ということもあって世間で評判となります。 「告白」という衝撃作でデビューした所為か、湊さんの作品には常に、斬新な趣向が求められる、あるいは求めがちです。 |
9. | |
●「サファイア」● ★☆ |
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2015年05月
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宝石を共通のモチーフに、趣向を凝らした湊さんの初短篇集。 本書中私が好きなのは「ダイヤモンド」。7篇の中でも異色の一篇で、現代版“つるの恩返し”ならぬ“雀の恩返し”といったストーリィ。雀の小さな胸の内が切なくて、この篇、私は好きですねぇ。 最後の「サファイア」「ガーネット」は連作ストーリィ。読者をひっかける仕掛けがない分、すっきりとした後味です。 冒頭の2篇を読んだ時点で面白く感じられない、と思ったのですが、その後の「ダイヤモンド」と「ムーンストーン」で何とか持ち直した、というのが私の読後感です。 真珠/ルビー/ダイヤモンド/猫目石/ムーンストーン/サファイア/ガーネット |
10. | |
●「白ゆき姫殺人事件」● ★☆ |
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2014年02月
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社内でも評判の良かった美人OLの殺害事件。 10箇所も刺された上に灯油をかけられ火まで付けられた死体となって発見された女性は、“白ゆき石鹸”というヒット商品を持つ化粧品会社に勤める美人OL=三木典子25歳。それ故に“白ゆき姫殺人事件”という訳です。 ストーリィ本文と本書末尾に添付された「資料」とを組み合わせて読んでいくスタイルは十分面白かったですが、事件の真相自体は平凡なもの。 1.同僚T/2.同僚U/3.同級生/4.地元住民/5.当事者/「しぐれ谷OL殺人事件」関連資料 |