三上 延
(えん)作品のページ


1971年神奈川県生。大学卒業後、中古レコード店、古書店勤務を経て、2002年「ダーク・バイオレッツ」にて作家デビュー。2011年「ビブリア古書店の事件手帖」を発表し、ベストセラーシリーズとなる。

  


       

「同潤会代官山アパートメント」 ★★


同潤会代官山アパート

2019年04月
新潮社

(1500円+税)

2022年02月
新潮文庫



2019/05/12



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関東大震災の後、大正末期から昭和初期にかけて東京・横浜の各地に建設された鉄筋コンクリート造りの集合住宅、同潤会アパートの一つ、代官山アパートを舞台にしたストーリィ。

ダストシュートに水洗式便所など、当時最先端の近代的な設備を備えていた集合住宅。
その代官山アパートで新婚生活をスタートさせた竹井夫婦、それから4代にわたる家族物語を連作風に描いた長編ストーリィ。

これが木造住宅だったら、おそらく何度も建て替えられ、あるいは売却して転居していたことでしょう。
しかし、鉄筋コンクリート造りの集合住宅だったからこそ、長い年月を生き延び、4世代に亘る家族共通の思い出ある場所になっています。
そこに、4世代にまたがる家族の繋がりと、一つ夫婦から広がった家族の温かさ、優しさが感じられて、胸にじ〜んと来る思いです。

冒頭で主人公となった
八重竹井光生と結婚したのは、竹井の婚約者であった妹=愛子が関東大震災で死去したため。
竹井との間に漂う微妙な感情、近代的と言いつつ住みづらいところもあり、また3階の住居は高い処が苦手だった八重にとっては好ましいとは思えない家でした。
何故光生はここを新居に選んだのか。新しいもの好きだった愛子への思いをまだ残している所為か。
また、ひ孫である
千夏は、何故執拗に曾祖母の住むこのアパートに住みたいと願うのか、ミステリアスと、世代を超えた愛情が感じられて心に残ります。

関東大震災、太平洋戦争、戦後の混乱、現代のイジメ問題まで、時代を辿る面白さもあります。
温かな家族の歴史を語った長編。その優しさが心に残ります。

※私は同潤会アパートに馴染みはありませんが、子供の頃近くに赤羽台団地があったので、雰囲気は判る気がします。

プロローグ 1995/月の砂漠を 1927/恵みの露 1937/楽園 1947/銀杏の下で 1958/ホワイト・アルバム 1968/この部屋に君と 1977/森の家族 1988/みんなのおうち 1997/エピローグ 1927

   


  

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