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1.梟の月 2.銀座ともしび探偵社 3.綺羅星−銀座ともしび探偵社− |
「梟の月」 ★★ | |
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主人公が目覚めると、そこは妖怪の世界だった。 しかし、何故自分がここにいるのか、そもそも自分に関する記憶は一切なし。 傍らにいるのは、自分のことを知っているらしいアオバズク。 妖怪たちに許され住む家を得た主人公は、その家で妖怪たちに人間の文字を教え、「先生」と呼ばれるようになる。 何とも不思議な感覚に浸されるストーリィなのです。 「鬼太郎」に誘い込まれて妖怪の世界に入り込んだ、というお話とはかなり違います。スタート時点で既に妖怪の世界にいるのですから。 人間とは感覚の異なる妖怪たちがわんさと主人公の周りに出没して、とにかく賑わしい。そんな妖怪たちとの関わり、やり取りにはくすぐったいような可笑しさがあります。 そんな玄妙な味わいが、本作品の類まれな魅力。 川赤子や貧乏神、天邪鬼、河童、木霊等々、いろいろな妖怪たちが登場して主人公をからかったり、心配したり。 妖怪たちの中に一人だけ人間がいるという状況は、妖怪たちの方が自然な存在で、主人公の方がむしろ異物のようです。 各章にて、主人公は様々な妖怪たち、様々な事象に出会います。さてさてそれは一体何のためか。 そして最後の章、妖怪の世界に来る前に主人公にどんなことがあったのか、何故この世界に入り込んだのか、そしてアオバズクの正体は何ものなのか、が順次明かされていきます。 二つの月を目にした時、元の世界に戻れる、と主人公は告げられます。 しかし、それは新たな試練の始まりのように思えます。喜ぶべきことなのでしょうけれど、むしろ切なさを感じます。 湖底の都/仮の宿り/腹北山/あやし夜/夢の通い路/梟の月 |
「銀座ともしび探偵社」 ★☆ | |
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このところ結構読んでいる新潮文庫nex。 3月新刊の「綺羅星」を読もうかと思っていたらそれは続編、前作があると知り、急遽読んでみた次第です。 大正末期の銀座が舞台。 題名と舞台設定から、レトロな探偵譚と思ってしまいますが、それは大きな間違い。 この探偵社、江戸の頃には多く溢れていたのに今は少なくなってしまった<不思議>を集め、ランプに入れて持ち帰っては所長のランプに移し替えるというのが仕事。 「ともしび」とは、そのランプに揺らめく光のこと。 当然ながら謎の人物である所長の三咲正之助を始め、能瀬亜子、小山田道郎、木下研吾というメンバーは、<不思議>を見ることのできる能力を持った人物。唯一の例外が、研究室から転職した温厚な40歳である町川秋人。 江戸からの流れを汲むと言っても畠中恵さんのような妖ファンタジーではなく、といって小野不由美さんのような怪異でもなく、本作で描かれるのはちょっと不思議な出来事、です。 何故、所長の三咲は<不思議>を集めているのか。今後どんな展開へと進むのか。続編が楽しみです。 プロローグ/サチの足跡/白い箱/知らない声/まわる時/エピローグ |
「綺羅星−銀座ともしび探偵社−」 ★☆ | |
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「銀座ともしび探偵社」の続編。 前作については、ストーリィ以上に、時代・状況といった舞台設定の案内、登場人物たちの紹介という印象が強かったのですが、本作では冒頭から本格的に“不思議”な出来事を描いたという印象。 ストーリィ的がきちんと絞られたということなのでしょうか、それに相応する読み応えを感じました。 各篇で主役となるのはもっぱら、小山田道郎と木下研吾の2人。 ・「蓑介の仇討ち」:小山田。小舟に乗った処、活動写真館で「蓑介の仇討ち」を見ることになり、その後<不思議>と出会う。 ・「開かずの間」:木下。苦手な女学生からの依頼で女学校へ。開かずの間の謎解きがその依頼内容。 ・「十二階下の少女」:小山田。さる家の家令である老人から、代々続く呪いを解いてほしい、との依頼。 ・「綺羅星」:町川、最近<不思議>が減っていると指摘。その理由は同業者か? 探偵社の4人が協力して、真相を掴もうと動き出します。 プロローグ/蓑介の仇討ち/開かずの間/十二階下の少女/綺羅星/エピローグ |