君嶋彼方
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1989年生、東京都出身。2021年「水平線は回転する」にて第12回小説野性時代新人賞を受賞し、受賞作を改題した「君の顔では泣けない」にて作家デビュー。

  


       

「君の顔では泣けない CAN'T CRY WITH YOUR FACE ★★☆  小説野性時代新人賞


君の顔では泣けない

2021年09月
角川書店

(1600円+税)



2021/10/16



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男女の身体入れ替わりを題材にしたストーリィ。

入れ替わりといってすぐ思い出すのは、
山中恒「おれがあいつであいつがおれで
ただ、同作は一時的な入れ替わりだったことから、その間の混乱と戸惑い等を描いてユーモラスな面白さがありましたが、本作はずっと入れ替わったまま、という点で異なります。

主人公は
坂平陸、高校一年のある朝、突然同級生の水村なおみと身体が入れ替わり、以来15年ずっと水村なおみとして生きて来ました。今は結婚して娘も産まれ、家族3人での暮らし。
高校一年から今日までの15年に亘る日々が、回想として描かれていきます。

本作の良さは、二人それぞれの立場から描くのではなく、一貫して坂平陸側からのみ描いている点にあります。
人に言えない秘密を分け合い、情報交換を絶やさないことから2人は同志というべき関係にありますが、坂平が悩み、苦しさを水村にいろいろと吐き出し、水村はそんな坂平を常に励ます、というのが二人の関係。
坂平曰く、いずれ元通りになる時まで、水村の身体を預かっているから大事にしないとけない、と坂平は使命感を抱いています。

面白いのは、お互いに性関係についてもあけすけに情報交換、あるいは報告している点。お互いに元男、元女というキャラクターから、冷静に観察しているところが面白いのですが、とくに、坂下の初体験場面は読み処です。

全てを打ち明けられる関係って奇跡的でしょう。本作の坂下と水村は、望んだことではないとはいえ、そうした間柄と言えます。
単なる入れ替わり物語を越えて、2人自身、親子の問題、そして一部においてはジェンダーの問題も描いた多様な作品。
見事なデビュー作、お薦めです!

    


  

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