川上弘美作品のページ No.3



21.ぼくの死体をよろしくたのむ


22.森へ行きましょう

23.

24.三度目の恋

【作家歴】、物語が始まる、椰子・椰子、おめでとう、センセイの鞄、ゆっくりさよならをとなえる、光ってみえるものあれは、ニシノユキヒコの恋と冒険、古道具中野商店、東京日記、東京日記2

 → 川上弘美作品のページ No.1


風花、どこから行っても遠い町、これでよろしくて?
、ナマズの幸運、天頂より少し下って、七夜物語、なめらかで熱くて甘苦しくて、猫を拾いに、水声、大きな鳥にさらわれないよう

 → 川上弘美作品のページ No.2

  


                     

21.

「ぼくの死体をよろしくたのむ ★★


ぼくの死体をよろしくたのむ

2017年03月
小学館刊

(1500円+税)



2017/03/24



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現実的にはあり得ない話だったり、現実ではあるものの風変わりだったり、如何にも川上弘美さんならではのストーリィ世界、18篇。

軽やかで、どこかカラッとした明るさあり。そんな居心地良さを堪能できる短篇集です。

18篇の中では次のストーリィが私は楽しめました。
「大聖堂」:格安の賃貸物件を借りる条件は愛玩動物一匹を飼うこと。背中に一対の羽根があるその動物を主人公は「つばさ」と名づけ、お互いに馴染んでいくというストーリィ。
「二人でお茶を」:同い年の従姉妹トーコさんとの共同生活。外国育ちのトーコさんのちょっとしたズレが楽しい。
「銀座 午後二時 歌舞伎座あたり」:偶然に出会ってしまった小さな人。彼から頼まれ、狂暴猫から彼女を奪い返すことに。
「バタフライ・エフェクト」:2人の男女、出会うべき運命なのか? 迫真性を感じてドキドキしていたのに・・・。
「二百十日」:伯母の代わりに訪ねてきた少年るか。果たしてその正体は? これって楽しいなァ。
「スミレ」:実年齢ではなく精神年齢に応じた外見を持つことが出来るようになった未来社会。さてそこでの恋愛は・・・。
「無人島」:子供も成人し、家族解散を決定。私自身は御免ですが、他人事となるとなんとなく楽しい。
「廊下」:幕切れがきれい。人生が愛おしくなります。

鍵/大聖堂/ずっと雨が降っていたような気がしたけれど/二人でお茶を/銀座 午後二時 歌舞伎座あたり/なくしたものは/儀式/バタフライ・エフェクト/二百十日/お金は大切/ルル秋桜/憎い二人/ぼくの死体をよろしくたのむ/いいラクダを得る/土曜日には映画を見に/スミレ/無人島から/廊下

                

22.

「森へ行きましょう ★★


森へ行きましょう

2017年10月
日本経済
新聞社刊

(1700円+税)

2020年12月
文春文庫


2017/11/27


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留津ルツ、同じ日に同じ雪子という母親から生まれた2人の、成長〜恋愛〜結婚〜中高年という人生を、パラレルワールドとして描いた長編。

パラレルワールドであるが故に2人の人生はまるで異なり、対照的。それは2人の人生岐路における選択の違いと言えますが、単に選択の問題だけではなく、そもそも生まれた時からの性格の違いという点も大きいと感じます。だから違って当たり前。
それでも、本作を読むと、人生とは様々な切っ掛け、選択、状況の違いによって様々に変わっていく流動的なものである、という思いを強くします。
なお、2人の違いだけでなく、2人に関わる人物もみな違いが生じているという点が、妙に面白い。

終盤に至ると、岐路での選択によってさらに分岐は増えていくのですが、そのどれが正しく誤っているか、どの選択により幸せが得られたか得られなかったか、ということはありません。
要はどんな人生になろうと、自分自身がそれを納得できるかどうかが、自分の選択ゆえの結果と容認できるかどうかが、鍵なのだろうと思います。

留津にしろルツにしろ、他の誰かにしろ、ドラマチックな人生という印象はなく、多少の誇張はあるにしろいずれもごく普通のもの。
それでも、本作のように大きな視点から傍観者的に眺めると、人間の人生というのは選択があっての変容もあり、面白いものだなと感じます。

            

23.
(ぼう)  ★★


某

2019年09月
幻冬舎

(1600円+税)

2021年08月
幻冬舎文庫



2019/10/12



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川上弘美作品というと不思議な物語が多いのですが、本作はその中でもインパクト充分。
なにしろ長い、変遷を繰り返す人生ドラマなのですから。

主人公が自分の存在を認識した時、名前を年齢も、性別すら分からず。一番古い記憶は、10分前。
そういう者が時々いると聞いたことがある、という病院医師の
と看護師の水沢に指導されるまま、人に擬態を繰り返していく。

まずは女子高生の
丹羽ハルカ・16歳に。次は男子高校生の野田春眠(はるみ)、その次には高校事務職員の山中文夫・22歳へ。
男女、年齢を自由に変え、人への擬態を繰り返しますが、
マリの時に蔵医師と水沢看護師の保護下から抜け出し・・・。
そして、自分と同様な
<誰でもない者>たちとも出会い、長い年月を送っていく。

人間は生まれた時から性別も、性格もある程度決まっています。それに対し、彼らは自由に自分を変えることができ、選択することが出来ます。
しかし、それって幸せなことなのだろうか・・・。
人間に備わっていて、彼らに備わっていないものとは、何か。

彼らの宿命、運命を思うと同時に、人は何のために生きるのか、どう生きるべきなのかと、考えさせられました。
読み応えたっぷり、ある意味での一生ストーリィ。


ハルカ/春眠/文夫/マリ/ラモーナ/片山冬樹/ひかり/みのり−ひかり

                   

24.
「三度目の恋 ★☆


三度目の恋

2020年09月
中央公論新社

(1700円+税)



2020/10/15



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大人の女性の恋愛ストーリィはもう腹いっぱい、という状況で本作に当たってしまったような気がします。

主人公の
梨子、幼い頃から恋していた相手=ナーちゃん(原田生矢)と長じて結婚。
これでもう満足できる幸せな人生を手に入れたと思いきや、ナーちゃんが幾人もの女性と関わり合うのを止めようとはしないことを梨子は知ることになります。

一方、梨子は夢を見るようになります。
その夢の中で梨子は、
「昔の章」では江戸時代の吉原花魁=春月に、「昔昔の章」では平安時代の貴族の邸に仕える女房となり、その時代の恋愛を経験することになります。
その度に梨子の恋愛の相手となるのは、通った小学校で用務員であり結婚後にたまたま再会した
高丘という男性。

子供心のまま無心にナーちゃんを恋した梨子は、他の時代の恋愛を経験することによってナーちゃんとの結婚生活を比較して見ることができるようになり・・・というストーリィ。

恋愛とは何ぞや、時代を超えて思考してみようとした作品、と言えるのではないでしょうか。
ただ、率直に言って、私としてはどうでもいいや、という気分。
時代によって恋愛形態も変われば、大恋愛しても結婚に至れば変わってくる部分もあろうと思いますので。

表題の「三度目の恋」とは、二度の恋模様を描いた本ストーリィの次に訪れるだろう恋のこと。

なお、「昔昔の章」では、主人公が使える姫さまの夫となるのは在原業平、また業平かとつい呻いてしまいました。


昔の章/昔昔の章/今の章

     

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