過去の時間を5分だけ削除できる機械。外見はデジカメそっくりのその機械を、主人公は偶然に手に入れます。
同級生の女の子を不良高校生から救ったところを褒められ、フリマのおっさんから貰ったのが、この機械。 さて、自分が手に入れたものがそんな機械だと知って、主人公はどう行動するのか。
中学生の兄は引きこもり状態だし、親友のハルはある事件が原因で車イス生活となり、主人公がとりまく状況決して良好とはいえません。だからこそ・・・・。
読む前は梶尾真治さんのようなSFものかと思ったのですが、ちと違う。SFというより少年たちの冒険物語、と言ったほうが良いでしょう。
率直に言って、私としてはイマイチ。その理由は、主人公のことがあまり好きになれなかったから。
ある面、優しさ、気配りのできる少年のようですが、この機械の操作についてひとりで大騒ぎするうえに、極めて安易、そして軽率という気がしてならない。
一方、それまでガキ大将的だったのが車イス生活者となりその分思慮深くなったハル、暗くて無愛想な印象だったが意外と純情な女の子・浮石藍、この2人の人物造形には魅力があります。
主人公のグッチ(川口直都)やハル、浮石にしてもとても小学生とは思えません。頭の中ではストーリィから自然に中学生をイメージしていました。しかし、主人公のあの騒ぎ立てぶりは、やはり小学生がふさわしいのか。
結局、ぐるりぐるり回って最初に戻る、という観のある作品。それなら一体このストーリィは何だったのか、という気分になりますけれど、ハルと浮石、新たな友情で結ばれた彼らの関係がなくなることはない、と信じたい。
お互いへの思いやり、友情が後に残った分、彼らの成長物語として受け留めると後味は良い。
※イジメが問題化している現在、本書は子供たちに読んでもらえるといいなぁと思う作品です。
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