稲葉 稔作品のページ


1955年熊本県生。脚本家・放送作家等を経て、94年作家デビュー。

  


     

●「圓朝語り」● ★★


圓朝語り画像

2011年06月
徳間書店刊
(1500円+税)

  

2011/08/15

  

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落語中興の祖として、また言文一致体を完成させた日本語の祖として知られる、初代三遊亭圓朝(天保10〜明治33年)を主役に据えた時代物ミステリ。

時は幕末、大川のほとりで絞殺された蕎麦屋の娘。
たまたま壁にぶつかっていたところの圓朝、この事件をきっかけに今までにないような新作噺を生み出せるのではないかと、御家人から転じた弟子の
文朝を助手にして犯人探しに乗り出します。
その一方、犯人探しの途中に聞いた怨念話、贔屓客から教えてもらった人情話等々も創作の糧に加え、人情、男女の情愛と、人間というものを深く掘り下げた噺作りに力を注ぐ、というストーリィ。

実在した噺家名人が探偵役というのは珍しい趣向のように思えますが、田牧大和「花合わせのように役者が探偵役を務める作品もあれば、文豪が探偵役という文豪ディケンズと倒錯の館という作品もあるので、そう特筆すべきものではありません。
本作品については、時代物ミステリとしてもそれなりに楽しめるのですが、その面白さの真髄は、若き圓朝が名作
「牡丹燈籠」を作り上げていく、その創作秘話という趣向にあります。
圓朝という噺家、落語に興味がある方には、お薦めの時代小説です。

※既読の円朝ものに、辻原登「円朝芝居噺 夫婦幽霊もあり。

 


  

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