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1.バガージマヌパナス 2.海神の島 |
「バガージマヌパナス−わが島のはなし−」 ★★ 日本ファンタジーノベル大賞 |
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1998年12月 2010年01月 2005/04/05 |
主人公は沖縄諸島で生まれ育った根っからのシマンチュ(島人の意)、仲宗根綾乃19歳。 フユクサラー(怠け者)でフラー(ばか)という評判が定着している綾乃ですから同年代の娘と好みが合うわけもなく、日がな一日、86歳になる大親友オージャーガンマー(大謝家の次女の意)とユンタク(おしゃべり)して過しています。 「ワジワジーッ」(不愉快の意)を初めとして琉球言葉が盛んに飛び交い、神様たちも気安げに登場し、日本であって日本とは全く異なった世界が、本書の中に繰り広げられます。それがとても楽しい。 どこまでも明るい、濃密な南国の雰囲気溢れる、沖縄の物語。 |
2. | |
「海神(わだつみ)の島」 ★★ |
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2023年06月
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祖母の漣が三姉妹に示した遺言書は、曾祖父=石嶺賢治が発見した“海神の秘宝”を探し出した者を墓の祭祀者とし、米軍海兵隊補給基地内の所有土地を相続させる、というもの。 その土地の年間地代収入は、何と5億円余。 その内容に花城三姉妹(汀・泉・澪)は、それぞれ色めき立ちます。その資金があれば、渚は銀座の一等土地のビルが手中に出来るし、泉は有人深海潜水艇の賃借が可能になる、澪は自分主演の映画制作が可能になると目論んだため。 そこから、個性的な三姉妹の、東京〜沖縄〜台湾をまたにかけての、容赦ない争奪戦が始まるのですが、石嶺賢治が秘宝を見つけた場所が○○○と判ると、争奪戦は自衛隊どころが中国海軍、米軍海兵隊まで巻き込んだ大騒動にまで発展してしまうのですが、この三姉妹の強欲さと行動力には呆れるばかり。 とにかく三姉妹の個性が桁外れ。 長女の汀は、躍進中の銀座クラブのママ。次女の泉は、国際的に名を売った水中考古学者。そして三女の澪は、すべった発言で2度もしくじり今は地下アイドル。 それぞれに対する呼び名も凄まじい。泉は汀と澪を「エロ」「ロリ」と呼び、汀は泉を「処女」と大声で呼ぶのですから。 題名だけなら“ダーク・ピット”シリーズの大向こうを張る海洋冒険物語という印象なのですが、これがもうハチャメチャ、三姉妹それぞれの持ち味を生かした行動ぶりがまた桁外れ。 ストーリィ展開もすこぶる破天荒、奇想天外といった、豪快なドタバタ冒険活劇。コロナの沈鬱さを完全に吹き飛ばすような面白さです。 なお、見過ごしてならないのは、ドタバタ劇の背景で、太平洋戦争中そして戦後ずっと、沖縄が味わうことになった苦渋の大きさです。 石嶺賢治、娘の漣をはじめとして犠牲になった多くの沖縄の人たちに申し訳ありませんでしたと頭を下げる気持ちになります。 1.失われた秘宝/2.三姉妹の夢/3.相続人の行方/4.古墳は囁く/5.銅鏡と貝輪/6.暗躍する男/7.純白の平和と黒いアイドル/8.海神島の正体/9.見捨てられた疎開船/10.海底の決闘/11.禁断の島へ/12.太古からのメッセージ |