ほしおさなえ作品のページ


1964年東京都生、東京学芸大学卒。“萩山綾音”名義で発表した「影をめくるとき」にて1995年第38回群像新人文学賞小説部門優秀賞を受賞。また、同年詩人デビュー。それ以降は“大下さなえ”名義にて作品を発表。2002年第12回鮎川哲也賞最終候補となった「ヘビイチゴ・サナトリウム」にてミステリ・デビュー。同作の刊行をきっかけに2003年筆名を再び変更し、それ以来“ほしおさなえ”名義にて活動。

 
1.空き家課まぼろし譚

2.オレンジの陽の向こうに

3.東京のぼる坂くだる坂

 


                 

1.

●「空き家課まぼろし譚」● 


空き家課まぼろし譚画像

2011年01月
講談社

NOVELS
(900円+税)



2011/02/05



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「空き家課」「まぼろし譚」という題名の言葉に惹かれて手に取ったのですが、期待した程のファンタジー性はなし。
それでも、ノベル作品らしく、気軽に楽しめるライト・ファンタジー・ミステリ連作短篇集です。

舞台となるのは
“海市”という名前の架空の水上都市(いくつかの島の間を埋め立てて築かれたヴェニスのような街)。
その海市の景観保護再生を目的に設立されたのが
「水の都海市協会」で、協会内に歴史的建造物の再利用(要は賃貸)を促すため設置されたのが「空き家課」という次第。
主人公はその空き家課の新米職員=
間宮明ですが、狂言回しといった役どころで、本書に登場する謎を解決する探偵役は、三上敦課長の一人娘で小学校五年生の汀(みぎわ)ちゃん
空き家課に持ち込まれた物件にまつわる謎、トラブルを、年上男性であるにも関わらず好きなように引っ張りまわす汀ちゃんと間宮のコンビが解決する、というストーリィ。

実は汀ちゃん、冒頭で不思議な能力を秘めていたことが明らかになります。そしてその能力が、毎回の謎・トラブルを解決するのに役立つ、というのが本ミステリの肝心な部分。それ故に「まぼろし譚」という次第。
 
「ロイヤルサンセットローズ」:有名なバラ屋敷、しかし所有者家族が空き家課への依頼を白紙撤回?
「まやかし師」:かつての石炭王が建てた黒ダイヤ屋敷、宝探しの宝は本当にあるのか?
「オルガン奏者」:かつてのお嬢様学校の建物。その寮に現れるという幽霊話は真実か?
「五〇年祭」:汀ちゃんの亡き母親をめぐる謎とは? 
 
ロイヤルサンセットローズ/まやかし師/オルガン奏者/五〇年祭

               

2.

●「オレンジの陽の向こうに」● 


オレンジの陽の向こうに画像

2011年03月
東京創元社

(1900円+税)



2011/05/01



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友人と起こしたIT企業に勤める鳥沢真と、偶然に真と知り合い、ふとしたことから真のマンションに居候している森泉棗、という若い男女が主人公。
生活パターンが基本的に擦れ違っているとはいえ、クリスマスくらいは一緒に食事しに行こうと約束した2人。
ところが、真が家に帰ると棗の姿はなく、棗もまた真の姿を見つけることができない。相手に携帯で連絡しようとしても繋がらず、という常態。
やっとマンションのリビングで再会したと思ったものの、それは現実だったのか、それとも夢だったのか。
やがて2人は思い当たります。真は事故に巻き込まれて死んだのではないか。真が現在いる世界は、死後の世界ではないか、ということに。

現世と死後の世界にまたがり、真と棗という若い男女2人の想いを描いたファンタジー・ストーリィ。
ところが、後半はミステリ風、悪計を企んでいるらしい犯人を追う、という展開に一変していきます。
本来はファンタジー・ロマンスへ向かうのが自然なところを、強引にミステリへ持って行った、という印象。
そう考えると思い出されるのは、
梶尾真治「黄泉がえり。構想に似たところがありますが、「黄泉がえり」の謎はファンタジーそのものに置いていたため、全体としての調和が見事に取れていたと思います。

ファンタジー+ミステリにほしお作品の特徴があるのでしょうけれど、無理やりという印象が最後まで残りました。

             

3.
「東京のぼる坂くだる坂 ★★




2021年05月
筑摩書房

(1600円+税)



2021/07/08



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東京の坂を巡り歩く、“街&坂歩き小説”。

主人公はアラフォーの独身女性、
富野蓉子
5年前に死んだ父親は引っ越し好きの変人。しかも、住む家はいつも坂道に立っていることが条件。
そのおかげで蓉子も引っ越しを4回。しかし、父親は蓉子が8歳の時にふらりと家を出て戻らず、そのまま蓉子が再び父親と会うことはなかった。
その後も父親は引っ越しを繰り返し、その度に転居通知の葉書を蓉子に送って来た。そして死んだ父親が蓉子に遺したものは、自分が住んだ坂の一覧。
いったい父親はどんな人間だったのだろうか。それを感じることができるだろうかと、蓉子はリストにある坂を巡り歩くことになります。

最後の方では亡き父親の人物像が蓉子にも見えてくる、という展開はありますが、本作の内容は、東京のあちこちにある坂を巡って歩き回る、という街歩き、いや坂歩き小説。
改めて、東京とは坂の多い街なのだ、と感じさせられます。

各章の最後には、イラストマップが付され、見所の説明等々も細かく記載されていますから、主人公と同じように散歩してみようという方には、とても便利。
さぁ私も、とは思ったのですが、出不精である故にまず行かないだろうなァ。

※なお、驚いたのは16番目の「蛇坂」。
私の実家のする近くにある坂です。実際の上り下りすることは余りありませんでしたが、懐かしい名前。まさか本作に登場するとは思いませんでした。


1.幽霊坂/2.闇坂/3.狸穴坂/4.梯子坂/5.胸突坂/6.別所坂/7.王子稲荷の坂/8.くらぼね坂/9.異人坂/10.桜坂/11.三折坂/12.明神男坂/13.氷川坂/14.本氷川坂/15.相生坂、赤城坂/16.蛇坂/17.蓬莱坂

       


   

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