一雫ライオン
(ひとしずく)作品のページ


1973年生、東京都出身、明治大学政治経済学部第二部中退。俳優としての活動を経て、演劇ユニット「東京深夜舞台」を結成後、脚本家。2017年「ダー・天使」にて作家デビュー。

  


       

「二人の嘘 ★★★   


二人の嘘

2021年06月
幻冬舎

(1800円+税)



2021/09/09



amazon.co.jp

全く視界に入っていなかった作品ですが、書評を読んで知り、読んだ次第です。
その結果はというと、ただただ圧倒され尽くしました。

主人公は、東大法学部、司法修習所を首席で卒業し「十年に一人の逸材」と評される女性判事=
片陵礼子・33歳
周囲から憧れられるのに対し、本人の心の内は寂しいもの。
8歳の時母親から置き捨てられ、伯母に育てられる。金がないから東大に入学、確実に職を得るために司法修習、人と交わらなくても済むから裁判官。夢も幸せも感じることなく、ただ生きていられればいい、というただそれだけ

その礼子が出会ったのは、かつて礼子が判決を下した
蛭間隆也。過剰防衛により雇用主を殺害した罪で、懲役4年。
出所した蛭間が、毎朝裁判所の前に佇んでいるのだという。
礼子の判決に不満があるのか、自分は何か過ちを犯したのか。
・・・まさか、蛭間は誰かを庇って罪に服したのか?

間違いを犯してはならないという思いから蛭間に接触した礼子は、蛭間に自分と似た境遇を感じ、さらに自分が持たない優しさ、人間的な感情を蛭間が持っているのを感じて、彼に惹きつけられていきます。
そしてその結果、礼子はどう行動し、それに応じて蛭間もどう行動したのか・・・・。

蛭間、そして礼子が選んだ生き方の何と痛ましいことか。
その一方、礼子の夫である
貴志と義母、殺害された吉住という男らの何とおぞましいことか。

裁判所は、正しく裁けなかった事件に対し、平然としていて良いのでしょうか。
読み進んでいる最中、本ストーリィがどういう結末になるのか、全く見当もつかず。ただただ、圧倒されているばかりです。
せめて、本ストーリィの幕が下りた後、礼子が人間らしい生き方を手に入れることができたらと、祈るように思うばかりです。
 お薦め!

プロローグ/1.ある判事の日常/2.門前の人/3.接触/4.過去を消したい男/5.いまを大事にする女/6.真実/7.あなたのために/8.走る/9.悲劇

   


  

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