原 宏一作品のページ No.2



11.築地の門出
-ヤッさんⅢ-(文庫改題:ヤッさんⅢ-築地の門出-)

12.料理人の光-ヤッさんⅣ-(文庫改題:ヤッさんⅣ-料理人の光-)

13.星をつける女

14.踊れぬ天使-佳代のキッチン3-

15.穢れ舌(文庫改題:星をつける女-疑惑のウニ-)

16.廃墟ラブ-閉店屋五郎2-

17.ねじれびと

18.春とび娘-ヤッさんⅤ-

19.ヤスの本懐-ヤッさんファイナル-

20.ラストツアー-佳代のキッチン4-


【作家歴】、トイレのポツポツ、東京箱庭鉄道、へんてこ隣人図鑑、ヤッさん、佳代のキッチン、東京ポロロッカ、ファイヤーボール、神楽坂のマリエ、閉店屋五郎、女神めし

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11.

「築地の門出-ヤッさんⅢ- ★☆
 (文庫改題:ヤッさんⅢ-築地の門出-)


築地の門出

2015年11月
双葉社刊
(1500円+税)

2018年10月
双葉文庫化



2015/12/19



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銀座でホームレス、しかし“食のコーディネーター”として信望高いヤッさんを描く、シリーズ3作目。

第1作の主人公だったタカオが復活、本書主人公を務めます。
蕎麦打ち職人の
ミサキと結婚したタカオですが、ミサキがその技を極めたいと茨城県の蕎麦農家に住み込こんで働くことを決意して否応なくタカオは応諾させられ、2年間予定の別居生活となります。
そうした経緯からミサキと共に蕎麦屋の名店「はし田」を辞めたタカオ、思うところあって再びヤッさんの押し掛け助手となります。
折しも築地は、豊洲への移転問題が再燃というかますます正念場というか、それに伴う揉め事、困難事が次々と起こり、タカオはヤッさんと共に問題解決のため奔走する、というストーリィ。

率直に言って前半、タカオはまるで腑抜けた感じで、そのうえ表面的なことしか目に入れず浅はか丸出しという風。ヤッさんも含めてストーリィにキレ、斬新さがなくなってしまったなァと思わざるを得ないところ。
それでも
「鮨まな」で盛り返し、「杉さんの本懐」で意外さを見せ、終盤の2篇へと読み手の興味を繋げていきます。

「白い花の里」と「築地の門出」は、自分たちの店を持つことを目標としていたタカオとミサキが、気持ちのすれ違いも経験しながら夢に向かって大きく前進するという、長編ストーリィとしてのケジメを付ける篇。
「築地の門出」は同時に、築地市場移転後も築地に残って頑張ろうと決意した人たちへエールを送る展開にもなっています。

それにしてもタカオ、ミサキに振り回されてばかりで大変だなーと少し同情を覚えます。まぁ若くて夢に向かって一直線の娘を妻にしたのですから、そのぐらい我慢しろよ、という処か。

ヤッさん襲撃事件/モーニン!東京/鮨まな/杉さんの本懐/白い花の里/築地の門出

       

12.

「料理人の光-ヤッさんⅣ- ★★
 (文庫改題:ヤッさんⅣ-料理人の光-)


料理人の光

2016年12月
双葉社刊

(1500円+税)

2019年10月
双葉文庫



2017/01/24



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築地の門出に続く“ヤッさん”第4弾。
今回ヤッさんが弟子にするのは、イタリアの料理店で修業してきたという吹聴しているものの、今はホームレスの元に寄寓。足立市場で食材を盗んできてはその材料を使ってホームレスたちに料理を作り、僅かな代金を稼いでいる
ショータ

要は、成り行きで動き、他人の言動にすぐつられ、考えは浅く、さらに料理人としての基礎も矜持も持ち合わせていない(言葉の意味も知らない)と、どうしようもない奴。そんなショータのどこをヤッさんは見込んだのやら。
これまでの
タカオマリエと違って“料理人”であるだけに、ヤッさんの仕掛けるショータへの指導はこれまで以上に手厳しい、と感じます。
だからこその面白さもありますし、ショータの成長ストーリィと合わせるように描かれる、先輩料理人たちの奮闘、挫折、悩む様子を傍から見ていく楽しさは、本シリーズ定番のものです。

また、これまでの弟子たち、タカオやマリエ、
ヨナスといった面々も顔をのぞかせ、彼らの現在の状況を知ることができるのも、4作目ならではの楽しさ。
本シリーズ、まだまだ読みたいですねぇ~。

「河川敷食堂」:ショータがヤッさんに弟子入りする経緯。
「寮姉の献立」:社員寮の賄いを一時的に任されたショータでしたが、見事に失敗。
「タケ坊の道」:有名ホテルで将来の総料理長を嘱望されながら、何故タケ坊は独立したいと言い出したのか。
「料理人の光」:独立してすぐシュミランの星を獲得した評判店のオーナー料理人は、何故自殺未遂に至ったのか。
「日向灘の恋」:ショータの恋の行方は?
「旅立つ舌」:ショータに担わされた課題は・・・。

読了後は爽快、スカッとした気分です。


河川敷食堂/寮姉の献立/タケ坊の道/料理人の光/日向灘の恋/旅立つ舌

     

13.

「星をつける女 ★★


星をつける女

2017年01月
角川書店刊

(1500円+税)

2019年02月
角川文庫化



2017/02/16



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主人公の牧村紗英は、依頼を受けて人気飲食店の実情を確かめる覆面調査員。
元々はフランス系の格付(星評価)会社の覆面調査員でしたが、調査方法を巡って会社と意見対立した末に退職、独りで
“牧村イート&リサーチ”を開業したバツイチ、30代のシングルマザー。

本書、
ヤッさん”シリーズと相似関係にあるストーリィと言って間違いないでしょう。
“食のコーディネーター”にして基本はボランティアというヤッさんに対して、紗英の行動はあくまで投資を検討中といった先からの依頼に基づく仕事なのですが、評価判定だけならストーリィになる筈もなく、<仕事+行き過ぎたお節介>というのが本書のパターン。その点、ヤッさんに比べて少々ムリ感もあり、という印象です。

冒頭、紗英と共に覆面調査を行う相手役(バイト)として、大学時代の先輩で今は小劇団を主宰する
真山幸太郎が登場します。
真山は常に紗英の協力者なのですが、私としては真山より、紗英の娘で中学生の
杏奈の存在にいずれ化けそうな、未知数の魅力を感じます。
「メゾン・ド・カミキ」で紗英は、人気フランス料理店での食材偽装事件に関わります。
「麺屋勝秀」では、ブラック企業、経営幹部による会社乗っ取りという現場を目のあたりにします。
そして
「白浜温泉紀州ノ庵」では、同族経営の旅館における兄弟の主導権争いに、紗英が首を突っ込みます。

冒頭、紗英一人で出発した“牧村イート&リサーチ”も本書の最後では新たな仲間が加わり、4人体制に。
その意味で本書は、新たなシリーズものの幕開け、仲間が揃うまでのストーリィといった観あり。本格的な展開は次巻以降のお楽しみ、という処か。
今後への期待感を含めて、★2つ評価です。


メゾン・ド・カミキ/麵屋勝秀/白浜温泉紀州ノ庵

     

14.

「踊れぬ天使-佳代のキッチン- ★★


踊れぬ天使

2017年05月
祥伝社刊

(1600円+税)

2020年01月
祥伝社文庫



2017/06/07



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軽ワンボックスカーを改装した厨房車を駆って、気儘に全国津々浦々を回る調理屋、佳代を主人公としたロードサイドノベル。
女神めしに続く第3弾。
佳代の旅は、今回も前作に引き続き、調理屋をやってみたいという人探しのため。

本シリーズを私が好きな理由は、次の3点に尽きます。
・ロードサイドノベルの楽しさ。
・地方それぞれの味を絡めた食の楽しさ。
・人と人との出会いという、楽しさ、喜び。

「おみちょの涙」:金沢の近江市場が舞台。雅美という女性客は、何故大量注文を続けるのか・・・。
「チャバラの男」:静岡で茶畑に惹かれた佳代、脱サラ4年目という玉木の茶畑を手伝い始めますが・・・。
「ロングライド・ラブ」:金沢で知り合った自転車旅中の女性=麻耶から誘われ、佳代は佐渡へ。そこでは・・・。
「踊れぬ天使」:ブラジル人が多く住む群馬県の大泉町、そこで佳代は、ラウラという日系三世の女性から、ブラジル人好みの味を教わることになります。
「モンクス・ドリーム」:山形市で、プロの夢破れたジャズ・ピアニストの棚橋源太に出会った佳代は、何とか棚橋再挑戦させたいと思うのですが・・・。
「カフカの娘」:厨房車の故障で困っていたところを助けてくれたのは、元ヤン女子で今は“移動スーパー”稼業の莉子。その莉子にはいろいろ悩み事があり・・・。

1.おみちょの涙/2.チャバラの男/3.ロングライド・ラブ/4.踊れぬ天使/5.モンクス・ドリーム/最終話.カフカの娘

          

15.

「穢れ舌 ★☆
 (文庫改題:星をつける女-疑惑のウニ-)


穢れ舌

2018年03月
角川書店

(1500円+税)

2021年03月
角川文庫



2018/03/26



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星をつける女第2弾。
“ヤッさん”“佳代のキッチン”に続くシリーズものになるのでしょうね。

前作で元劇団主宰者の
真山幸太郎、元フレンチシェフの五十嵐智也、元チェーンラーメン店で契約店長だった門倉七海という面々が牧村紗英の元に集まり、人気店の覆面調査を請け負う“牧村イート&リサーチ”が本書で本格稼働です。

・「ユウコの厨房」:カリスマ料理研究家の須賀ユウコの店、飛びぬけているとは言えないものの、味・見栄えともそつのない仕上がり。しかし、当人の須賀ユウコはその疲れ切った顔を隠しきれない様子。背景にどんなことがあるのか。
「酒蔵烏鵲」:妻の実家である烏鵲酒造の五代目社長となった早川祐樹による戦略が当たり、酒販売、東京での居酒屋展開と事業は好調。しかし、地元の酒造メーカーの杜氏兼社長の急死が綻びとなり・・・・。
「すし海将」:将来は地元に戻って亡き父親の<鮨ごとう>を復活させたいと東京で修業中の後藤順次。しかし、高級鮨チェーンの職人となってみると、社長の経営戦略はいかにもあざとく、耐え難い。そんな順次、社長の突然の命令により仕入れのため現地へ向かいますが・・・・。

“牧村イート&リサーチ”の4人がそれぞれの個性を生かして覆面調査に邁進、しかもお決まりのように突進し過ぎるところが本ストーリィの面白さ。
食に関する蘊蓄もあって、それなりに楽しめます。


1.ユウコの厨房/2.酒蔵烏鵲/3.すし海将

        

16.

「廃墟ラブ-閉店屋五郎2- ★☆


廃墟ラブ

2018年08月
文芸春秋

(1800円+税)

2021年01月
文春文庫



2018/09/21



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廃業等で不要になった機器・備品等を買い取り中古品として販売する中古屋業を営む中年男の五郎を主人公とする連作ストーリィ閉店屋五郎の第2弾。

お人好しどころか脇が甘く、赤字仕事も多い
五郎と、しっかり者の娘=小百合というコンビによる、ドタバタ気味でコミカルなところの多い人情劇、というのがこの作品の持ち味でしょう。
それはこの第2弾でも変わらず、むしろエスカレートしているかもしれません。

「バリケード本店」:食品スーパーチェーンから閉店する店の機材引き取り話だから今後の取引が期待できると楽観的な五郎に対し、小百合は冷ややか。案の定、とんだ揉め事に巻き込まれ、小百合に助けを求める羽目に・・・。
「廃墟ラブ」:債権者である銀行から依頼された、廃業済ラブホテルの片づけに赴いた五郎、利用客たちが利用した“ラブノート”に気になる書き込みを発見して・・・。
「スリーチートデイズ」:倒産したタクシー会社、その社長であった波多野良江は社長兼運転手だったという50代女性。次の仕事先である白河へ向かうのに、自分の運転するタクシーで割安にという良江からの申し出で、五郎は彼女と道中を共にすることになります。しかし、良江にはある事情があり・・・。

こんな商売をやっていたら、またまた赤字倒産では、と心配になる五郎の商売ぶりですが、そうならずに済んでいるのは小百合の支えがあるからでしょうか。
こんな父親を見捨てずにいる娘の小百合に、五郎は感謝しなくてはいけませんねぇ。

新たなシリーズものとして、まだまだ続く気配有り。


1.バリケード本店/2.廃墟ラブ/3.スリーチートデイズ

      

17.

「ねじれびと ★☆


ねじれびと

2018年10月
祥伝社

(1600円+税)

2021年10月
祥伝社文庫



2018/11/04



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出版社紹介文には「衝撃の奇想小説!?」とありましたが、それ程でもないのでは、と思うところ。

たしかに冒頭2篇の「平凡組合」「逃げろ真紀」は奇想だろうなぁと思いますが、「テツコの部屋」は主人公が異色というだけのことで、本篇で折り返し。
後半の「エクスキューザー」「ロング ロング シャワー」は都合よく行き過ぎという面があっても、極めて私好みです。
おかげで、前半は気味悪くイマイチと感じた本書が、後半で盛り返し、楽しかったという気持ちで読了。
原宏一さん、いつも感じるところですが、曲者ですよね。

「平凡組合」:ホームズの「赤毛組合」のような題名ですが、平凡と自覚する主人公、予想外にその活動にハマります。しかし、その果てにあったものは・・・。
「逃げろ真紀」:突如として夫が、主人公を狙うストーカーがいると言い出します。その挙げ句、夫自身がストーカーのストーカーに・・・。
「テツコの部屋」:中年男の主人公が駅構内で出会った、駅アイドルのようなテツコ。彼女に誘われ、一緒に鉄道旅行に出掛けますが・・・。
 ふと、佐川光晴「鉄童の旅」を思い起こさせられました。
「エクスキューザー」:言い訳上手な20代=文香に若社長が命じたのは、エキスキューズ開発室の立ち上げと室長の辞令。
「ロング ロング シャワー」:カノ女いない歴28歳の主人公、合コン終了後、意外や意外その内の一人とラブホ入りに成功したのですが、その直後仲間から、彼女がうるさ型上司の部長の娘、しかも元ヤンと知らされ・・・。

平凡組合/逃げろ真紀/テツコの部屋/エクスキューザー/ロング ロング シャワー

          

18.

「春とび娘-ヤッさんⅤ- ★★


春とび娘

2019年12月
双葉社

(1500円+税)



2020/01/25



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3年ぶりとなるシリーズ第5弾。
すっかり間が空いてしまった所為か、“ヤッさん”も勢い低潮かと思ったのですが、まるでそんなことはなく、冒頭篇からぐいっと読み手の興味を鷲掴みしてくれます。

「夫婦の触れ太鼓」
節目節目に登場するのがこの2人の役割なのか? 
冒頭篇は
<そば処みさき>を営むタカオミサキ夫婦の話。
築地市場の豊洲移転に今後への不安を抱く関係者たち。タカオもその例外ではなく、ミサキに何の相談もしないまま狂暴走をし始め、ミサキが心配する言葉も聞かず、全く止まりません。
タカオ・ミサキ夫婦、そして<そば処みさき>はもはや崩壊か。また、タカオだけが悪いのか。ミサキに問題はなかったのか。またもやヤッさんがミサキに手を差し伸べます。

「ニューウェイブの調べ」
主人公は、築地場外の卵焼き屋である<
玉勝屋>の跡取り娘=香津子。劇団の道を断念し三代目となることを決意しましたが、卵焼き職人としてはまだまだ修行中の身。
その香津子の前に現れたのが、外国放浪から帰国し
<テンペイロ(ポルトガル風の揚げ物)屋>を開業しようとしている片桐礼音(れおん) 。一方、かつて恋人関係にあったが10年前に別れた正ちゃん(今や「カネマサ水産」の社長)が、よりを戻さないかと言ってきて、店の伝統を守らなくてはいけないと思い込んでいる香津子の心は千々に乱れるばかり。
そこでやはりヤッさんが登場、香津子を一喝します。

「春とび娘」
本巻3篇中、白眉は表題作である本篇でしょう。
主人公を務めるのは、ヤッさんの古い馴染みである
オモニ
珍しくヤッさんが風邪を引いたか体調不良。
しかし、若い女性ながら腕の良い割烹料理人の
南里菜のためだからと、TV番組取材のため八丈島へ。心配してオモニもヤッさんたちに同行します。
一方、そのオモニも店舗兼自宅の立退きを迫られているという難題に直面しているのですが、ヤッさんに相談する間もないという具合。
阿漕な経営者に翻弄されている里菜のため、ヤッさん、オモニが活躍します。ヤッさんがどう始末をつけるのか。ヤッさんやオモニを慕う人たちの協力があってのことなのですが、いつもどおりの惚れ惚れする痛快さ、そして気持ち良さが堪能できます。


夫婦の触れ太鼓/ニュ-ウェイブの調べ/春とび娘

            

19.
「ヤスの本懐-ヤッさんファイナル- ★★☆


ヤスの本懐

2021年08月
双葉社

(1500円+税)



2021/09/15



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毎回痛快な面白さを味わって来た本シリーズも、ついに最終巻。
もうそろそろとは思っていましたが。
残念というより、最終巻をどう締めくくってくれるのか、読む始める前はその期待の方が大きかったです。

ヤッさんオモニの姿が消え、連絡も取れなくなったことから、2人を慕う皆がその身を心配します。
しかし、そうした中でもトラブルは起き、進んでいきます。

「マリエの覚醒」では、看板メニューの鯖サンドがすっかり評判となったマリエに、銀座の老舗百貨店から出店しないかという声が掛かります。しかし、思いもしない要求が・・・。
こんな時に相談したいヤッさんは見つからず、マリエの迷いは深まるばかり。でも最後にマリエが思い出したのは、再三ヤッさんから教えられたこと・・・。

「タカオの矜持」では、真菜親方の店「鮨まな」がネット上で誹謗な中傷に晒されるという事態が発生。真菜の弟子である勇斗から相談を受けたタカオ、ヤッさんがいない今自分が動くしかないと覚悟、ヤッさんの行動に倣って活動します。その結果解ったことは・・・。

「ヤスの本懐」は、ヤスとオモニの現状を描いた篇。
思わぬ苦境からこれまでの宿無し生活に幕を下ろしたヤッさんですが、今までのヤッさんとは思えぬ気弱さぶりが現れます。
そんな時、ヤッさんに相談を持ち掛けてきたのは・・・、そしてヤッさんの元に駆け付けてきたのは・・・。

ヤッさんに鍛えられた次世代の人たちが、自分の力で危機を乗り越え、さらに人の繋がりを築き広げていく、そんな展開がこれまでの巻以上に爽快です。
一人前になったら弟子を育て上げるのも務め、という言葉がタカオやマリエ、真菜たちだけに対する言葉ではない、と感じられて胸がじ~んとなります。

ファイナルに相応しい、天晴れな巻。ファンは読み逃しなく!

マリエの覚醒/タカオの矜持/ヤスの本懐

        

20.

「ラストツアー-佳代のキッチン- ★★   


ラストツアー

2021年12月
祥伝社

(1600円+税)



2022/01/10



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“佳代のキッチン”シリーズ第4弾。
「ラストツアー」という題名が、最終巻ということを示しているようですが、さてどうなのか。

コロナ感染蔓延により
佳代の調理屋稼業も影響を受け休業状態。弟の和馬日向子夫婦のマンションに居候していますが、それもそろそろ限界。
そんな折、
“魚介めし”ゆかりの函館の食堂<自由海亭>が閉店したと聞き、函館へ様子を見に行こうと決断します。
そこから佳代の調理屋稼業、再開です。

といっても今回は、函館の
タエさんをはじめとして、これまでに出会った人たちのその後の状況を確認したいと、全国をめぐる再会の旅になっています。
それでも新しい出会いはあるもので、相も変わらず困っている人のために、また再会した人たちの今を後押しするために、佳代が奮闘するというストーリィ。
ただし、皆から言われ、佳代自身の幸せを探すストーリィも織り込まれています。

“ヤッさん”同様、これまで十分楽しませてもらったシリーズがこれで最後になるかと思うと寂しい。
なお、本書中、
“ヤッさん”シリーズでお馴染みの人たちが登場し、あるいはその存在が口に上るところが楽しい。最終巻だからこそのサービスでしょうか。

「漁火とダルバート」:函館にタエさんを訪ねて・・・。
「ご近所の国境」:北関東、ブラジル人が多く住む大泉町に刈谷と結婚したラウラを訪ねて・・・。
「せんべろのマサ」:大阪の十三、たかりのマサと知り合った佳代は、マサの実家である神戸の宍倉酒造へ・・・。
「ざんぎり娘」:五島列島の福江島に住む沙良に会いに行ったところ、長崎の高校を中退して居場所不明と聞き・・・。
「ドンボロの島」:佐賀の正江さんの処に寄ると、背中を叩かれ小豆島へ向かうことに。小豆島で再会する人は・・・。

1.漁火とダルバート/2.ご近所の国境/3.せんべろのマサ/4.ざんぎり娘/最終話.トンボロの島

    

 原宏一作品のページ No.1

   


  

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