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21.一橋桐子(76)の犯罪日記 22.サンドの女−三人屋− 23.ランチ酒−今日もまんぷく− 24.母親からの小包はなぜこんなにダサいのか 25.古本食堂 26.財布は踊る 27.老人ホテル 28.図書館のお夜食 29.喫茶おじさん 30.定食屋「雑」 |
【作家歴】、はじまらないティータイム、東京ロンダリング、人生オークション、母親ウエスタン、アイビー・ハウス、彼女のための家計簿、ミチルさん今日も上機嫌、三人屋、ギリギリ、復讐屋成海慶介の事件簿 |
虫たちの家、失踪.com、ラジオ・ガガガ、ランチ酒、三千円の使いかた、DRY、おっぱいマンション改修争議、ランチ酒−おかわり日和−、まずはこれ食べて、口福のレシピ |
古本食堂新装開店 |
「一橋桐子(76)の犯罪日記」 ★★ | |
2022年08月
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題名からして如何にも一橋桐子は常習犯罪者、という雰囲気ですが、その主人公像はどこにでもいる平凡な老女。 ずっと両親の介護をしてきたため、独身でもはや身寄りはなく、今は清掃パートの仕事で暮らす。 その夫の死をきっかけに高校からの友人トモと一緒に暮らしていましたが、僅か3年でトモは死去、取り残されて初めて自分の寄る辺なさを感じている処。 刑務所に入れば衣食住の心配はなし、おまけに介護もしてくれるというTV報道を見て、それなら自分もと思ったのですが、そう簡単に都合よく犯罪を犯せるわけでもなく・・・・。 そうした一橋桐子・76歳の、割の良い罪を犯すための苦心譚。 どことなくユーモラスなストーリィなのですが、基にある介護プアの問題、現在そして今後の日本にとっては重たい問題です。 それなのにどこかのんびりした雰囲気があるのは、一橋桐子という老女の人柄の良さでしょう。 自分の過去を悔いて嘆いたりせず、今の境遇を誰の所為にもしていない。そして、誰に対しても誠実にきちんと向かい合う姿勢があります。 だからこそ結末には、心から安堵する思いです。 社会の一員である以上高齢者とはいえ、いや高齢者だからこそ、人と人の繋がりが大切なのだと、改めて感じさせられるストーリィ。 同時に、人と人の繋がりを保つことこそ社会の役割ではないかとも思います。単に金銭的な補助をしていれば良いということではない筈。 1.万引/2.偽札/3.闇金/4.詐欺/5.誘拐/最終章.殺人 |
「サンドの女−三人屋−」 ★★ | |
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「三人屋」の続編、前作から3年後。 美人三姉妹の三女=朝日が就職したため、朝の喫茶店と昼の讃岐うどん屋は営業終了。 今は朝日が焼いたパンを使った自家製の卵玉子サンドをシングルマザーとなった次女=まひるが売るというサンド屋に業態転換したところ、これが好評。なお、長女=夜月が夜に営むスナックはこれまでどおり、という状況です。 三人屋(通称)を中心舞台に、志野原家の美人三姉妹と常連客たちが織りなす身近な群像劇、という構成は前作どおり。 この「三人屋」の魅力は何と言っても、三姉妹と常連客たちのごちゃごちゃ感にあります。 目次構成から見てわかるとおり、一人一人の人生ドラマではあるのですが、主人公となる人物に三姉妹のいづれかと、他の登場人物が密接に絡みあっていて、要は「ごちゃごちゃ」なのです。 そのブレンド感が何と言っても良い!のです。 最終的に朝日の結婚が決まり、それに伴いまひるの生活も変わることとなり、夜月のスナックが残るといっても「三人屋」と周囲から呼ばれたこの店の特殊な有り様は、お終いのようです。 残念というより、変らないものは無いという点から、いっそ潔いと喝采を送りたい。 ・「近藤理人(26)の場合」:フケ専のゲイ。商店街の豆腐屋の愛人だったが、夜月のスナックを手伝うことに。 ・「中里一也(29)の場合」:受賞作以降、まるで作品が書けないでいる小説家。夜月の恋人に・・・。 ・「望月 亘(30)の場合」:格安携帯屋のワンオペ店長。まひるとセフレになるのですが・・・。 ・「加納 透(35)の場合」:朝日と結婚する予定なのですが、朝日に隠していることがあり・・・。 ・「飯島大輔(39)の場合」:前作から引き続き登場。今なお夜月のことが思いきれず・・・。 ・「森野俊生(29)の場合」:前作から引き続き登場。何やらもう一つピリッとしない人物なのですけど・・・。 近藤理人(26)の場合/中里一也(29)の場合/望月亘(30)の場合/加納透(35)の場合/飯島大輔(39)の場合/森野俊生(29)の場合 |
「ランチ酒−今日もまんぷく−」 ★★ | |
2024年05月
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「ランチ酒−おかわり日和−」に続く、シリーズ第3弾。 主人公の犬森祥子、相変わらず夜を徹しての見守り屋の仕事を続けており、仕事明けにはお酒と美味しい食事を満喫、という連作ストーリィ。 これが、本当に美味しそうなんですよね〜。これだけ美味しいメニューに出会えるのなら、それだけでも充分幸せ、と感じます。しかし、不安定な仕事なのですから、節約しなくて良いのかなぁとついつい余計な心配をしてしまいます。 ただ、その中でも着実に変化は生じています。 母娘の関係が改善した今、娘の明里から相談したいことがあるという連絡あり。実の母親として祥子は、娘のためを思ってきちんと明里に向かい合おうとします。 一方、以前に仕事で出会った角谷から食事に誘われ、その席できちんとお付き合いをしていきたい、という申し出を受けます。 酒、食事と気の合う相手ですが、角谷の仕事が定まらないところに不安もあり。 明里もどんどん成長していきますし、祥子だっていつまでも「離婚したばかりの女性」という立場に留まっていられる訳ではありません。 本巻では、前に向かって歩み出そう、そう祥子の気持ちが定まっていく経緯が描かれます。 バツイチ女性とその幼い娘との成長ストーリィ、まだまだ続きそうです。今後の展開が楽しみです。 第一酒:蒲田 餃子/第二酒:西麻布 フレンチ/第三酒:新大久保 サムギョプサル/第四酒:稲荷町 ピリヤニ/第五酒:新宿御苑前 タイ料理/第六酒:五反田 朝食ビュッフェ/第七酒:五反田 ハンバーグ/第八酒:池尻大橋 よだれ鶏/第九酒:銀座一丁目 広島風お好み焼き/第十酒:高円寺 天ぷら/第十一酒:秩父 蕎麦 わらじカツ/第十二酒:荻窪 ザンギ/第十三酒:広島 ビール/第十四酒:六本木 イタリアン/第十五酒:新橋 鰤しらす丼/第十六酒:末広町 白いオムライス |
「母親からの小包はなぜこんなにダサいのか」 ★★ | |
2024年08月
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本作の題名、含蓄があるなぁ、とまず感じます。 余計なものを大量にいろいろ送ってこられたらたしかに邪魔臭いのかもしれませんが、母親の娘に対する愛情が籠っていると感じられますし、そこに母親と娘の強い繋がりが感じられます。 (6篇中、5篇が女性主人公、娘なので) ・「上京物語」:盛岡第一の母親の反対を押し切って東京の短大に進学した吉川美羽。母親が送って来た段ボール箱には故郷の味がぎっしり。 ・「ママはキャリアウーマン」:損保会社に勤める夫に帯同して北海道に引っ越した新井莉奈。離婚して以来必死に働いてきた母の松永敬子は、莉奈にも働けと口煩い。札幌にやって来た母親と莉奈はついに激突。 ・「疑似家族」:石井愛華、同棲中の恋人である幸多にひとつ嘘をつき続けている。実家から送られてくる米や野菜、実はメルカリで購入したもの。 ・「お母さんの小包、お作りします」:5年にわたる不倫関係に夢破れ、群馬の実家に戻ってきた都築さとみ。母親のめぐみがやっているメルカリ・LINEでの自家野菜販売を手伝い始めますが、母親がさとみに言った言葉は・・・。 ・「北の国から」:広島の実家で一人暮らしをしていた父親が死去。内藤拓也は、毎年父親に昆布を送り続けてきた女性=槇恵子に事情を確かめる為、恋人の奈端菜と共に羅臼へ向かう。 ・「最後の小包」:長年母娘二人で生活してきたのに、母は54歳で突然再婚。義父となったまさおを受け容れられなかった後藤弓香はそれ以来母親と疎遠。しかし、その母親が急死したと連絡を受け駆け付けるが、相手のまさお一家が主導で葬儀が進められて行くことに反発し・・・。 1.上京物語/2.ママはキャリアウーマン/3.疑似家族/4.お母さんの小包、お作りします/5.北の国から/6.最後の小包 |
「古本食堂」 ★★ | |
2023年09月
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大叔父の鷹島滋郎が遺した神保町の小さな古書店が舞台。 とりあえずその店を引き継いだ大叔母の珊瑚と、その店を手伝う大学院生の美希喜の2人が共に主人公となり、鷹島古書店を訪れる様々な客たちと楽しい時間を作り出す連作ストーリィ。 神保町に古書店、大叔母と孫娘、と設定は何やら北村薫さんの世界のように感じてしまうのですが、古書以外に美味しいフードも加えられているのは、やはり原田ひ香さんの世界。 大叔母の珊瑚さん、古書店商売はまるで初めてという設定なのですが、本好きらしく、客の相談に対して適切な本を勧めている処が楽しい。 大学院で中古文学研究室に所属している美希喜は、今回初めて出会った関係にもかかわらず、良いコンビです。 かなりの年齢差があるというのに年代を越えて仲が良い、というのは楽しいですね。 それでも2人、胸の内にある思いを隠して、お互いに様子を窺っているという関係でもあるのですから、愉快です。 軽く読めて、ささやかに古書・グルメも楽しめる連作ストーリィ。気分転換には格好です。 「古本食堂」という題名、古本も売っている食堂? 古本屋の一角で食堂経営?と思ったのですが、要は神保町という町が、古書店も美味しいレストランもある“古本&食堂”のようなもの、ということらしいです。 なお、最終話に登場する丸谷才一「輝く日の宮」、そういえば読んだなぁと久しぶりに思い出しました。 第一話.「お弁当づくり ハッと驚く秘訣集」 小林カツ代著と三百年前のお寿司 第二話.「極限の民族」 本多勝一著と日本一のビーフカレー 第三話.「十七歳の地図」 樋口譲二著と揚げたてピロシキ 第四話.「お伽草子」とあつあつカレーパン 第五話.「馬車が買いたい!」 鹿島茂著と池波正太郎が愛した焼きそば 最終話.「輝く日の宮」 丸谷才一著と文豪たちが愛したビール |
「財布は踊る Dances with the Wallet」 ★★ | |
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60万部を超えるヒットとなった「三千円の使い方」が<お金の使い方>を描いたものであったのに対し、本作は<お金の作り方>を描く連作ストーリィとのこと。 ・「財布は疑う」:専業主婦のみづほ、夫がクレジットのリボ払いを繰り返してきたことに気づき、調べてみると今やクレジット債務が2百万円超になっていると分かり、夫婦で愕然。 ・「財布は騙る」:FX絡みのマルチ商法に携わっている水野文夫、借金からは何時までも脱せられない。その挙げ句・・・。 ・「財布は盗む」:会社勤めの傍ら株式投資に勤しんでいた野田裕一郎、株式投資に失敗し資金も仕事も失い・・・。 ・「財布は悩む」:節約記事で注目されていたライターの善財夏実、ここにきて担当編集者から厳しい言葉を受け・・・。 ・「財布は学ぶ」:平原麻衣子と斉田彩、奨学金返済の負担が重く、先に何の希望も見いだせず・・・。 ・「財布は踊る」:前5篇の主人公たちのその後を描く篇。 連作ストーリィですが、全篇を通じて、夫ともに窮地に追い込まれたみづほが、自分の力で立ち上がろうと奮闘する姿がお見事。 こううまく運ぶものか、とは思いますが、金銭感覚の欠けている人間に頼っても駄目とばかり、自立の道を目指すところが痛快。 クレジットのリボ払い、投資勧誘、株式投資、奨学金負債と、お金にまつわる問題は数えきれない程あると感じさせられます。 今まで知らなかったこれら問題について、具体的かつリアルに学ぶことができる作品。 投資は、上手くいくこともあれば損失を招くこともあります。そんなとき、どう冷静に対処できるか、欲をかかずに済むか、が大切だと思います。 なお、本作題名は、みづほがお金を貯めてようやく購入したルイ・ヴィトンの長財布が、各篇主人公たちの手に転々と移っていく様を言い表したものでしょう。 1.財布は疑う/2.財布は騙る/3.財布は盗む/4.財布は悩む/5.財布は学ぶ/6.財布は踊る |
「老人ホテル」 ★☆ | |
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働くことを全くせず、生活保護の金を貰ってのうのうと暮らしている両親の元を高校中退で出奔、それ以来色々な仕事をしてきたものの、今なお先に希望を持てずにいる日村天使(えんじぇる)・24歳が主人公。 その天使が数年前、大宮のキャバクラでキャバ嬢として働いていた時に知った相手が、入居ビルのオーナーだという綾小路光子という老女。 たまたまその光子に再会した天使は、お金を貯める方法を光子から教えてもらおうと、現在光子が棲みついているビジネスホテルで掃除婦として働きだすのですが・・・・。 最近、お金関連の作品で注目を集めている原田ひ香さん、本作もまたそれに連なる作品です。 ただし、光子から天使がレクチャーを受けるに至る迄のストーリィが、興味深い。 節約の仕方も食事についてもまるで知らない天使には呆れるばかりですが、誰からも、何も教えて貰えることなく育った天使を、何もできないからと批判するのは適切ではないでしょう。 また、そうであっても、また光子との接触が動機であっても、天使は基本的に真面目ですし、人を気遣う心も持っているという点は、救いと言えます。だから光子も、手取り足取り、天使に指導する気持ちになったのでしょう。 普通に育ったなら当然に身につけているであろう知恵を、何ら身につけることなく大人になってしまった人がいる、何とも切実な問題だと思います。 光子の指導により、天使の心に希望が生まれてきたことが何より嬉しい。 とはいえ、やはり現実は現実。最後の天使の行動を責める気にはなりません。 ※本作で取り上げられる不動産投資。ただし、負担が大きいですし、柔軟に対応することも難しいので、私は余り良い投資方法とは思わないのですが、考え方は人それぞれですから。 |
「図書館のお夜食」 ★☆ | |
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郷里でもある、東北のターミナル駅にある書店に契約社員として勤務していた樋口乙葉(20代)は、店長とのいざこざから退職、SNSでオーナーから誘われ、東京郊外にある“夜の図書館”に転職します。 そこはちょっと不思議な図書館。 亡くなった作家の蔵書を引き取って保管・展示している、博物館のような処。開館時間は19時から24時、そして利用は有料、という具合。 マネージャーだという篠井弓弦(33歳)は余り自分を見せないが、他のスタッフは気のいい人ばかり。そして隣に無料で住めるアパートが用意されている上に、図書館内に設けられているカフェでは、小説に登場した料理が賄いとして供されていると、嬉しいばかり。 何とも不思議で、本好きなら楽しくなるような職場ですが、一般に公開されている以上、それなりにトラブルも起きる、という展開です。 作家の蔵書、小説の中で紹介された料理、スタッフそれぞれが抱えている秘密あるいは問題と、その部分、部分では面白く読めるのですが、それらを踏まえてこの作品の狙いは何なのか?と考えてみるとちょっと戸惑う処があります。 心に何らかの痛みを抱いている人に、ホッとできる居心地の良い場所を提供する、というだけのことではない筈。 本作は“夜の図書館”の紹介編、次作で本格的なストーリィを展開ということなら、次作でもっと理解は進むように感じるのですが、どうなのでしょうね。 1.しろばんばのカレー/2.「ままや」の人参ご飯/3.赤毛のアンのパンとバタときゅうり/4.田辺聖子の鰯のたいたんとおからのたいたん/5.森瑤子の缶詰料理 |
「喫茶おじさん」 ★☆ | |
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松尾純一郎、57歳。長く勤めた建設会社を早期退職し、現在は無職。自由気ままな今を利用して、コーヒー好きなところから喫茶店巡りを続け、趣味と自称。 あちこちの店を巡っては、コーヒー、一緒に注文したタマゴサンド等々を味わい、「おいしいなあ」と満足気な一言を漏らすのが常。 問題点は、割増退職金で開いた喫茶店を半年で潰したこと、社内不倫で再婚した妻の亜希子に家を出ていかれたこと(大学生である娘のアパートに同居中)。 都内のあちこちに出掛けては、名店と言われるような店に入り、コーヒーと食べ物メニューを注文しては「おいしいなあ」と満足するのが常のこと。 その一方で、娘、元妻、元バイト店員、会社での同期ら皆から、「本当に、何もわかっていない」と嘆かれるのもまた常。 いくら小説の主人公とはいえ、松尾純一郎、能天気過ぎますよ。 50代後半で呑気に退職後生活など送っていられませんし、喫茶店を失敗して割増退職金を大きく毀損してしまったというのに、一日に複数店を巡ってそれぞれコーヒー以外の品物まで注文する経済的余裕など、あり得ないと思うばかり。 松尾純一郎は何が分かっていなかったのか。後半、次第に読み手にもそれが見えてきます。 でも純一郎、最後まで人が好いというか、呑気というか、現実離れしているというか。 退職後の第二の人生をどう過ごすのか、それは本人の気持ち次第ですし、とりあえず純一郎は満足な様子ですが、私にはとても選べない道ですね。 出来うるなら、半年後、一年後の純一郎の姿を見てみたい。 ※各店の、タマゴサンド、ケーキ、フルーツサンド等々、ストーリィの中で楽しめます。 一月:正午の東銀座/二月:午後二時の新橋/三月:午後三時の学芸大学/四月:午後五時の東京駅/五月:朝十時のアメ横/六月:正午の渋谷/七月:夕方の谷中/八月:午後一時の新橋/九月:日曜日の朝の赤羽/十月:夜十時の池袋/十一月:朝の京都/十二月:午前十時の淡路町/エピローグ |
「定食屋「雑」」 ★★ | |
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夫に健康的な食事をと務めてきた沙也加、夫から、町の定食屋でビールを飲みながら食べる方がいいと言われてショック。 さらに離婚まで切り出された沙也加、もしかして浮気か?と疑い、夫が通っているという定食屋に行ってみる。 しかし、その店「雑」は、建物が古い上に、不愛想な老女がひとりで切り盛りしている店、しかもその味と言ったら、とても濃くて甘い! 夫が家を出て行き、週4日の非正規社員働きではやっていけなくなった沙也加、その店で店員を募集していると知り、夫が離婚したいといった理由が分かるのではと思い、早速応募し、この店で働きはじめます。 「雑」の店主である「ぞうさん」こと雑色みさえの味が濃くて甘い理由、それには思わず笑ってしまいますが、それから後の二人の関係が好い。 真面目で几帳面な沙也加と、不愛想でぶっきらぼうなみさえ、年代も大きく違えば性格も対照的ですが、どこかウマがあったのでしょう。 お互い、他の人には打ち明けられなかった想いを打ち明けることもできるようにない、二人の生活ぶりも改善していくようです。 「雑」の常連客で一人暮らしの老人=高津が直面する問題ごとも本ストーリーの一要素として欠かせません。 そしてコロナ、二人はどういう道を選択するのか・・・。 対照的な二人のシスターフッドものとしても楽しめるのですが、店で出される庶民的なメニューの内幕話も魅力的です。 気取った雰囲気で行く凝った店も時には良いですけど、日常的にはこうした普段着で行ける定食屋が良いですよね。 1.コロッケ/2.トンカツ/3.から揚げ/4.ハムカツ/5.カレー/6.握り飯/エピローグ |
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