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2.サイテーなあいつ 10.徳治郎とボク |
落窪物語 |
「ドラゴンといっしょ」 ★★☆ 野間児童文芸新人賞 | |
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是非読みたいと思っていたのですが、中々機会を掴めなかった花形さんの代表作のひとつ。ようやく読むことができました。 主人公の宇史(たかし)は、都内の私立有名進学校に通う中学生。 半年前に母親が交通事故死し、今は働き詰めの父親と、6歳下の弟である小一のトキオ(宙夫)と3人暮らし、とは言うものの3人とも全くバラバラの状況。 そんなある日、珍しく主人公が早く帰宅すると、家政婦は時間前に帰ってしまっていてトキオは一人きり。 そのトキオが、ポチと名付けたドラゴンを飼っているんだ、と言い出したことから、主人公は流石に慌てます。 良いなぁと思うのは、これまで弟を無視してきた(それなりの理由があるのですが)主人公が、きちんとトキオと向かい合おうとするところ。 そこから始まる兄と弟の物語には、とても心が温まります。 さて、ドラゴンのポチは果たして実在するのでしょうか? それは終盤における危機一髪のドラマまでお待ちください。 最後のオチが、これまた良いのですよねぇ。 花形みつる作品、大好きです! |
「サイテーなあいつ」 ★★★ 新美南吉児童文学賞 |
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4年生になった新学期。カオルちゃんが憂鬱になったのは、汚くて、気持ち悪くって、クラス皆からの嫌われ者=ソメヤの隣の席になったため。 でもそれが、次の章、ソメヤの方から見ると、物事は随分違ってくる。 カオルちゃんは、かなりしっかりした女の子。だから、ソメヤにもずけずけとしたものの言い方をしますが、ソメヤにはそれが決して悪意からの文句ではないと判る。 ソメヤは気持ち悪いところも可愛いところもある少年、大人になった今なら受け入れることができるかもしれません。 |
「ぎりぎりトライアングル」 ★★★ 日本児童文学者協会賞・野間児童文芸賞 |
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主人公のコタニノリコは小学5年生、気が弱くて臆病で、いつもできるだけ目立たないようにしている。 「イヤ」という言葉を口にできないコタニ、2人に振り回されるばかり。でも振り回されているうちに、何となく楽しい、それに自分自身、少し変わったような・・・・。 コタニから見るとクラスで浮きまくっている2人ですが、逆に2人からしても、コタニは浮いている、いつもひとり、モタモタしてるし、ビクビクしているし、からかったらおもしろそー、ということらしい。 最後に振り返ってみると、コタニもいい子だし、シノちゃん、アリサも結構いい子。そして、クラスでイケメンのサワムラくんもおとなしいイクオくんも皆、いい子。 |
4. | |
「アート少女−根岸節子とゆかいな仲間たち−」 ★★ |
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2011年09月
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本書ストーリィには前段となる話があり、「Fragile−こわれもの」というティーンズ向けアンソロジーの中に収録された「アート少女」という篇がそれだそうです。 本書はそれ以来さらに校長から睨まれた節子と美術部員たちが、部室がないために学校内をさ迷いながら、再三に亘る美術部存続の危機を撥ね退けようと奇想天外な活動を繰り広げ、その都度校長に睨まれるという、愉快な学園ストーリィ。 ユニークで痛快な、根岸節子とその仲間たちが繰り広げるティーンズ・エンターテインメント。 ※是非「アート少女」も読んでみようと思っています。 |
「遠まわりして、遊びに行こう」 ★★☆ |
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子供の頃から真面目で素直な優等生、中里新太郎。 学習塾はともかく、問題は遊び塾の方。対象は小学1年生から3年生、子供には遊びが大事というのが謳い文句ですが、肝心の子供たちは乱暴な悪戯っ子ばかり(新太郎名付けて「おサルたち」)。一方、新太郎は「キタロー」と呼び捨てにされ、最初からもみくちゃ、正宗さんはいい加減と、とんでもない羽目に。 優等生が悪ガキたちに取り囲まれ悪戦苦闘、という筋立てなのですが、次第に新太郎に変化が感じられていくストーリィ。 読了後はきっと、新太郎と子供たちに喝采を送りたい、という気分になるに違いありません。お薦め! |
6. | |
「君の夜を抱きしめる」 ★★☆ |
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「遠まわりして、遊びに行こう」の続編。 それなりに大学&バイト生活が軌道に乗ってきた新太郎に、新たに降ってきた災難は赤ん坊の世話。 慣れないどころかどうしたらいいのか見当もつかないまま、正宗さんから押し付けられるようにして、新太郎の子育て生活が始まります。 ※中学生の男の子が子育てに奮闘するという、本作品に似ながらも印象の異なるものとして山本幸久「ヤングアダルトパパ」があります。こちらも合わせてお薦めします。 |
「おひさまへんにブルー」 ★★☆ |
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主人公は小学5年生の拓実。 母親が息子よりリストラされた再婚相手を選んだことで、祖母テルの家に預けられます。しかし、その祖母が厳格で気難しい性格なうえに母親とかねてより折り合いが悪く、孫の拓実に対しても迷惑顔を全く隠さない。拓実自身も前の学校でイジメに遭い、新しい小学校でも不登校のまま。そのため拓実は祖母の家で息をひそめるように暮している、という状況。 そんな拓実、やがて強引に登校へ引っ張り出されるようになるのですが、それでも何時また同級生たちに弾かれるかと戦々恐々。 そんな状況を救ったのが、近所に住む“オイカワくん”一家の噂話。貧乏で子沢山、あちこちで何かと問題を起しており、近所でも学校内でも有名な存在。 このオイカワくんの存在が本作品の中で光っています。気の毒としか言えないような惨状なのですが、それでもオイカワくん兄弟たちは明るさを失っていません。善悪を超えて惹かれてしまうのがこのオイカワくんの存在であるとして過言ではありません。 他人の目を避けるようにしていた拓実が変わっていくきっかけになったのがオイカワくんの存在であり、そして稲小祭で共同作業をすることになった1年坊主たちとの関わりです。 そして拓実やオイカワくんとの関わりは、人を寄せ付けない姿勢を取り続けていた祖母の気持ちも次第に変化させていきます。 無理矢理や強引ではなく、自然な形で拓実、そして祖母の姿勢が変わっていく姿が素晴らしい。 自分のことばかり心配しているのではなく、他の人に関心を持つことによって人は成長していけるのだなぁと感じさせられるストーリィ。 わざわざ考えるのではなく、自然にそうと感じさせてくれる、花形さんのストーリィ運びはいつもながら本当に上手い! |
「しばしとどめん北斎羽衣」 ★★ | |
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あの葛飾北斎が江戸時代から現代にタイムスリップ。 奇妙な風体の行き倒れ老人とした見えないその北斎を拾い上げて帰ってきた父親のおかげで、現在不登校中の中学生である主人公の林為一は、気まぐれな北斎につき合いながらその世話をすることになります。 為一の父親、家業である骨董屋を継いだものの、鑑識眼まるでないうえに、これまで新規事業を手掛けては失敗し、その尻拭いを祖父にさせてきたというどうしようもない人物。北斎に間違いないと、ありえない事実をすんなり受け入れたのは良いのですが、その北斎に画を描かせて街金からの借金を返済しよういう企みは果たしてうまく行くのかどうか・・・・。 為一と北斎というコンビによる、江戸と現代東京を見比べながらの東京見物という辺りは、北斎による未来探検記というべきところで十分楽しめます。しかし肝心なことは、北斎が何故タイムスリップしたのかという事情と、為一が不登校になった理由。 ところで、本書表紙を飾る女子高生らしい姿が気になるところですが、その彼女こそ為一が不登校になるに至った原因である、部活の先輩女子らしい。 北斎と為一の悩み、実は共通するものだったらしい。そんな為一が北斎に背中を押される形で問題にカタを付け、ようやく足を前に踏み出す、というストーリィ。 北斎と為一のコンビ、まるで祖父と孫のようで楽しい。父親から得られないことでも祖父からならすんなり助言を聞けることもある、という象徴的な出来事のように感じられます。 ※なお、北斎の娘である応為を描いた朝井まかて「眩」を読んで間もない所為か、北斎に親近感が持てたこともストーリィに溶け込めた理由かもしれません。 1.墨田川両岸一覧/2.唐土名所之図/3.北斎漫画/4.甲の小松/5.千絵の海/6.酔余美人図/7.深川万年橋下/8.相州浦賀/9.陸奥野田能玉川/エピローグ |
「Go Forward! ゴーフォワード!−櫻木学院高校ラグビー部の熱闘−」 ★★☆ |
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2019年09月
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花形みつるさんの作品はどれをとっても面白いなぁ。本作は初めて?の本格的スポーツ小説ですが、その例外ではありません。 第一の主人公は、進学校である私立櫻木学院高校の臨時体育教師となった酒田公男。根っからのラグビー男ですが、名門大学ラグビー部ではついにAチームになれず、そのうえ内定した企業が不祥事発覚により経営危機、内定取消となり就職浪人の危機。 やっと臨時教師の口を得ますが、若い女性理事長の宝生実日子からラグビー部創設、試合で好成績を残すことを契約条件として付きつけられます。 ラグビー部の顧問・監督となった酒田と、彼の元に集まった、いやかき集められた個性的な部員たちが繰り広げる、新米ラグビー部の熱闘記。 個性的なメンバー、部活動の中で鍛えられ、心身ともに成長するというのは高校スポーツ小説の常道とも言うべき展開ですが、本ストーリィもまさにその通り。 それでも、個性的に過ぎる部員たち、無茶ぶりの実日子理事長、それにビビりまくりの酒田、新米監督を易々と凌駕したクレバーさを発揮する3年特進クラスきっての俊才=司馬史記等々、この青春スポーツ群像劇は実に面白くって堪えられません! そのうえ、その面白さをたっぷり堪能できる 490頁という分量。 最初こそコミカルなだけでしたが、顔ぶれが増えるにつれ面白さ・読み応えは加速していき、終盤の激突場面では読んでいるだけでも部員たちと一緒に熱くなってしまいます。 青春スポーツ小説の醍醐味、まさにここに在り、という風。 面白さ、熱さ、読み応えともまさに圧巻、青春スポーツ小説の傑作と言って過言ではありません。是非、お薦め! |
「徳治郎とボク」 ★★ 産経児童出版文化賞大賞 | |
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偏屈で頑固者、そのうえ怒りっぽい祖父と、孫息子であるボクとの物語。 ボクが生まれた時にもう祖母は死去済。 三浦半島の浦賀で畑仕事をしながら、雑種犬のシロと共に暮らす祖父の元を訪れるのは、盆と正月、祖母の命日というのが恒例。 その時に集まるのは、次女であるボクの母を含め3人の娘+α、従姉2人とボクという顔ぶれ。 しかし、その中で祖父と一緒に喜んで裏山の上にある畑へ向かうのはボク一人。 祖父と男孫、そこにはやはり喜んだり、楽しいと感じるところが男同士共通するところがあるのでしょうね。 4歳の時から小学6年まで、ボクと祖父の物語が綴られます。 祖父からその「ちっせぇとき」の話を聞くのが大好きだった幼い頃、小学生になって祖父と共に語り合えた頃、そして身体が弱ってからは祖父の身を案じるようになった時。 今では核家族が当たり前ですから、祖父と2人だけの時間を過ごし(両親が離婚したという事情も大きいでしょう)、祖父の思い出話を聞いたりする等、祖父と繋がり合うことができたというのは、とても貴重なことだろうと思います。 とくに本物語では、頑固だけれど腕白児めいた男気のある祖父から、知らず知らずのうちに主人公は勇気をもらっていたのではないでしょうか。 心温まる、祖父と孫の物語。気持ち良い家族ストーリィです。 おじいちゃん/畑/夏休み/ご先祖さま/峠の茶屋/石合戦/平作川/エリカちゃん/ホットレモン/納豆/富士山/シロ/引っ越し/ヨシオさん/お月見/えらばれた人/イーグルス |