蜂須賀敬明
(たかあき)作品のページ


1987年生、神奈川県横浜市出身、早稲田大学第二文学部卒。2016年「待ってよ」にて第23回松本清張賞を受賞し作家デビュー。18年「横浜大戦争」にて第4回神奈川本大賞を受賞。

  


       

「焼餃子 Smashing Dumpling ★★★




2020年10月
双葉社

(1900円+税)



2020/12/26



amazon.co.jp

これはもう、抜群の面白さ!
焼餃子を巡る、時代を、国境を越えた大河ロマン小説、です。

第一部は1944年。東条首相暗殺計画に失敗した検見軍蔵中尉は瀕死の状態で海に流されますが、死の淵で美味な食べ物を知り、息を吹き返します。
そこから朝鮮〜中国〜モンゴルと、
<究極の餃子>を探し求めるグンゾーの旅が始まります。その道連れとなったのは、釜山で知り合った朝鮮人女性のウンジャ
日本の敗残兵、朝鮮人、中国人、モンゴル人と多くの人々との出会いを重ねるグンゾーは、その餃子への熱情を以て皆を巻き込んでいく。その間に出会った餃子類は、朝鮮の
マンドゥ>、本場中国では<水餃子>に高級料理の<蒸餃子>、モンゴルの<ボーズ>、ソビエトの<ペリメニ>、という具合。
まさに国境を越えて餃子を追い求める興奮尽きない冒険譚。

第二部は戦後日本。グンゾーは姿を見せませんが、グンゾーの影響を受けた人間たちが、戦後日本でビジネス化し餃子を広めようとするストーリィ。
使命感をもって日本に渡った
ウンジャ、グンゾーの餃子手帳を盗み取った六浦、グンゾーを敵視していた九鬼という面々。
その彼らに絡むのが、次世代の若者たち(
タミオ、ダッシュ、イソ等々)。餃子を巡る、こちらも興奮するビジネス群像譚。

とにかく面白い! 頁をめくる手が止まりません。何と言っても題材が焼餃子なのですから。
そして、各国の色々な餃子類、湯気の上がる焼餃子の何と美味しそうなことか!
餃子を食べずに、餃子の美味しさを満喫できる快作、お薦め!

※カレーを巡る長編もありました。
竹内真「カレーライフ

【第一部】1.受肉/2.邂逅/3.この世で焼いていいものはただ一つ/4.転向/5.身のほどを知ること/6.手づかみは最高だ/7.大地を包み込むこと/8.文句は言いつつ、残さず食べる/9.死線/10.なじむ/11.その日、彼らは/12.広がる枝葉
【第二部】1.どの面下げて/2.上陸/3.立身出世/4.それぞれの知恵/5.餃子帝国勃興史/6.君とどこまでも/7.分岐/8.出家/9.氷の世界/10.雪解け/11.青天の霹靂/12.落日/13.継承/終章

   


  

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