芦辺 拓
(あしべたく)作品のページ


1958年生、同志社大学法学部卒。新聞社勤務の傍ら作家活動入り。90年「殺人喜劇の13人」にて鮎川哲也賞を受賞。

  


 

●「裁判員法廷」● 




2008年03月
文芸春秋刊

(1500円+税)

2010年05月
文春文庫化

   

2008/03/15

 

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2009年からいよいよ始まる裁判員制度。本書はその裁判員制度を先取りした法廷ミステリ。
読み手を選ばれた裁判員の1人、「あなた」としてストーリィの只中に引き入れる、という趣向です。

法廷での検事と弁護士の丁々発止のやり取りを描いた「審理」、有罪か無罪かの意見が分かれ裁判官3人+裁判員6人が評議を尽くす「評議」、被告人が有罪を主張し弁護士が無罪を主張して裁判員が困惑するという「自白」という、3つの事件、3つの事件パターンという3章構成。
ミステリとしてもそれなりに楽しめますが、味わうべきは実際に裁判員になったことを想定しての臨場感でしょう。
そしてあなたの他の裁判員は、年齢も性別も職業も、てんでばらばら、実に多様です。
本当に裁判員として召集されたら、こうした状況に直面すること無きにしも非ず。まぁ、実際には有罪か無罪かを争う事件というのは少ないでしょうけど。でも、痴漢冤罪事件というのもありますし。

法廷を構成する裁判官は、藤巻脩吾裁判長に、40代女性の玉村君枝、若手でお調子者のきらいある青井涼太という陪席裁判官。
原告側には若い女性である菊園綾子検事、被告側には刑事コロンボを思わせる森江春策弁護士、というのが毎度の組み合わせ。
そして裁判員の1人が、読み手である「あなた」なのです。

プロローグにかわるメッセージ/審理/評議/自白/あとがき−あるいは好事家のためのノート

 


  

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