明里桜良(あかり・さくら)作品のページ


1985年愛知県生。初めて書いた小説「ひらりと天狗−神棲まう里の物語」にて日本ファンタジーノベル大賞2025大賞を受賞し作家デビュー。

 


                    

「ひらりと天狗−神棲まう里の物語− ★★    日本ファンタジーノベル大賞


ひらりと天狗

2025年06月
新潮社

(1800円+税)



2025/07/12



amazon.co.jp

主人公は大月ひらり、大卒後、地元の豊穂市役所に就職し、「すぐやる課」に配属。
自宅から市役所までは遠いため、空き家となっていた亡母の実家で一人住まい。
すると、
<ナカヤシキ>の孫娘が戻ってきたと聞いた人たちが、“天狗への願掛け”をして欲しいと、家にひらりを訪ねてくるようになります。
亡くなった祖父母や母から何も聞かされていないひらり、何にも知りませんと断るのですが、不思議な夢を見て以降、ひらりの周りには不思議な出来事が相次ぎ・・・。

主人公のひらり、のほほんとした性格のようです。
その所為か、不思議なことが次々起きても、どこか他人事のようにのんびりしているというか、驚きがないというか。そんな脱力系キャラクター。

気付けば、ひらりの周りには不思議な存在ばかり。カフェの店主である
飯野は天狗の照雲坊らしいし、アナグマの夜三郎、狸の平蔵、猪のツバキといった面々がごく普通に話しかけてくるかと思えば、氏神様山の神様までも登場する、といった具合。

読み始めた最初は、それなりの面白さ、という感想でしたが、読み進むにつれ次第に面白くなってきました。
ひらり、天狗と特別な関わりを持つ家の生まれと知っても、自分を特別視するとか、何か利用してやれ、という意識が一切ないところが好い。
むしろ面倒だくらいに思っているひらりと、<ナカヤシキ>の孫娘だからと関心を持って眺めている、次々に登場する怪異や神様たちとの間に、意識のズレがあって面白い。

数多く怪異や神様が登場するといえば、
畠中恵“しゃばけが思い浮かびますが、同作ではやはり特殊な世界に接しているという印象。それに対して本作では、日常生活の中でごく普通に怪異たちと接している雰囲気がすこぶる良い。

なお、最後にはひらりのちょっとした成長が感じられます。
そうとなれば是非、続編も期待したいところです。


1.神隠し/2.迷い家/3.化け物の嫁様/4.桃源郷

       


   

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