ピーター・シェファー作品のページ


Peter Shaffer  1926年英国ロンドン生。劇作家。

 


   

●「アマデウス」●  ★★★
 
原題:AMADEUS     訳:江守徹
    
1981年ブロードウェイにおいてトニー賞受賞




1979年発表

1982年4月
劇書房刊

 

1984/07/23
2001/04/13

私の中で鮮烈な印象を残している戯曲です。その理由は、読む以前に観た、市川染五郎 (現・松本幸四郎)の舞台。モーツァルト役は江守徹、コンスタンツェ役は藤真梨子でした。老年から壮年のサリエリへと、染五郎さんの切れ味良い変わり身から始まるスピーディな展開が、この劇の見所でした。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、1791年貧困と不遇の内に死にます。その32年後、ウィーンで高名な作曲家・サリエリがモーツァルトを暗殺したのではないか、という噂が流れます。その真相は如何? それを題材にしたのが本作品です。これは、かなり広く話題となった噂のようで、本作品だけでなく、プーシキンにもモーツァルトとサリエーリという劇詩があります。
“アマデウス”という名前は、「神の愛」という原義がある由。ストーリィは、単にサリエリの嫉妬によるモーツァルト蹴落としという低レベルのものではありません。音楽の才能という神の恩寵は、敬虔なサリエリより、モーツァルトに与えられているのかという、サリエリの神への疑いから始まるのです。そして、神はサリエリよりモーツァルトを選択したのか、という神への問いは、モーツァルト迫害というサリエリの行為をどこまで神は許容するのか、という神への挑戦に帰結します。まさに迫真のストーリィ、思わず息を呑みます。
なお、劇の進行に沿い、フィガロの結婚」、「魔笛」という傑作オペラの創作過程が描かれ、一部の曲が背後に流れます。その点でも、この戯曲は魅力的です。
本を読まずとも、観劇を是非お薦めします。

 

〔補足〕

アントニオ・サリエリ
1750-1825 イタリア生まれのオペラ作曲家、指揮者。16歳の時ウィーンに出、後皇帝ヨーゼフの知遇を得て宮廷付作曲家となり、1788年ウィーン宮廷楽長の要職に就く。代表作は、パリ上演で成功を得たオペラ「ダナイード」、「オラース」。ベートーヴェンやシューベルト等多くの音楽家が、彼の教えを受けた。モーツァルトと同時代を生きた音楽家。

 


   

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