ジョアン・ハリス作品のページ


Joanne Harris フランス人の母とイギリス人の父との間に出生。現在、夫・娘と共にイングランド北部の街に居住。


1.ショコラ

2.ブラックベリー・ワイン

 


    

1.

「ショコラ」● ★★☆
 
原題:“CHOCOLAT”      訳:那波かおり




1999年発表

2001年03月
角川書店刊
(1000円+税)

2002年06月
角川文庫化

  
2001/05/31

映画が評判になっていると聞いて、手が出ました。
ショコラ」という題名おり、なかなか味わいのある作品です。芳醇なチョコレートの香りに終始包まれて、じっくり味わうように楽しめた、という一言に尽きます。
主人公はヴィアンヌ・ロシェ6歳になるアヌーの2人。カーニバル風に乗ってフランス南西部の小さな町にやってきた2人は、根っからの旅人という雰囲気ですが、この町を気に入って住むことを決めます。元パン屋を借りてヴィアンヌが開店したのは、チョコレートの店。都会でならともかく、小さな禁欲的な町に突如開かれたこの誘惑的な店は、小波の如く住民達の間に波紋を呼び起こします。好意的に迎え入れる人、冷たく批判的に眺める人。それが対照的に描かれ、ストーリィ展開の軸になっています。
ヴィアンヌに対して、町の人々を禁欲的かつ自分の支配下に置こうとする
司祭レノーが配されています。ストーリィは、途中からヴィアンヌとレノーによって交互に一人称で描かれます。それによって、2つの側の対立構図が明らかとなり、スリリングな面白さが加わます。
最後の思いがけない結末には驚きましたが、ヴィアンヌ、アクリーヌ、そしてレノーも含めて、
登場人物たち皆に対する愛おしさがこみあげてきました。その点が本作品の嬉しいところです。
映画を私は見ていませんが、本作品は登場人物の心の内を描いていくストーリィですので、多分映画と本書の面白さは異なったものでしょう。
したがって、映画を見た人も、本書を読むことによってまた別の面白さを味わうことができると思います。

      ※映画化 → 「ショコラ」

 

2.

「ブラックベリー・ワイン」● 
 
原題:"Blackberry Wine"     訳:那波かおり




2000年発表

2001年11月
角川書店刊
(1000円+税)

2004年09月
角川文庫化

 

2002/03/02

ショコラと同様、フランスの小さな村ランスクネ・スー・タンヌを舞台にしたストーリィ。
ヴィヴィエンヌとアヌークの母娘は既に村を去っており、今回の主人公は、ロンドンからやってきたイギリスの作家、ジェイ・マッキントシュです。
冒頭は、ジェイの現在の生活と、少年時代の思い出が交互に語られます。ジェイの少年時代にある大切な思い出は、老炭坑夫ジョーにまつわるもの。
そのジョーがジェイに残したのが、6本の果実ワイン。ジェイが再びその6本をワインを思い出した時、ワインはざわめき始め、ジェイはフランスの土地つき農家を衝動買いしてしまいます。
そしてジェイはランスクネにやって来ることとなった次第。読者は再び、カフェの女主人となったジョゼフィーヌ、クレルモン夫婦、ルーと再会することになります。

「ショコラ」のヴィアンヌに比べると、ジェイの存在感が薄く、ワクワクするような楽しさは感じられません。また、ブラックベリー・ワインのイメージが広がるということもない。
主人公ジェイが平凡な人物である故、「ショコラ」と同じような面白さを期待するのは無理なようです。
本作品は、そんなジェイが、昔懐かしいジョーの幻影、6本のワインに導かれ、自分が本心から望む生活を遂に手に入れる、というストーリィ。
興味を惹かれる部分は、孤立して暮すジェイの隣人マリーズ・ダピローザの母娘と。ジェイの関わり。しかし、具体的にストーリィが進展するのはかなり後半に至ってからですから、読む以上は我慢してそこまで読みましょう。

  


 

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