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●「グリム童話集」● |
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新潮文庫刊 1976/05/21 |
以下の感想はもう20年以上前のものです。でも、今読んでも多分同じことを感じるのではないか、と思います。 ひどく残酷な点のあることに驚かされた。これが果たして童話なのか。民話と言ってさえ、まだそぐわない気がする。 トルストイ「イワンの馬鹿」の場合、イワンの善良な好意と結果として王女と結婚するわけだが、この童話集の中では、最初から王女を貰うために云々の行為をするというように、利益獲得が目的となっている。ドイツ国民はこんな童話を語り合っていたのかと思うと、索漠したものを感じてしまう。 そんな全体を童話的にしているのは、ヴィルヘルムの力に負うものだろうと思う。「つぐみのひげの王様」は、これを教訓的な話として親しみを持たせているし、「賢いちびの仕立屋」では、「うそだと思う人は、1ターラー払ってくださいよ」という言葉でユーモアを与えている。この文章で、グリムの元に1ターラー払いに女の子が訪れた、という話は微笑ましい。 |