セス・グレアム=スミス作品のページ


Seth Grahame-Smith 1976年米国ニューヨーク州生。作家、TV・映画の脚本家、プロデューサー。

 


     

「高慢と偏見とゾンビ」 ★★        訳:安原和見
 原題:"PRIDE AND PREJUDICE AND ZOMBIES" Jane Austen and Seth Grahame-Smith


高慢と偏見とゾンビ画像

2009年発表

2010年02月
二見文庫刊
(952円+税)

  

2013/03/10

  

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J・オースティンの名作高慢と偏見のゾンビ版マッシュアップ作品。

作者名として
「ジェイン・オースティン&セス・グレアム=スミス」とあり不思議に感じたのですが、それもその筈、「高慢と偏見」そのままのストーリィ展開なのです。つまり、殆どの部分は原作そのまま。それにゾンビと戦士要素が付け加えられたという作品なのです。
ベネット5姉妹は、中国で修行を積み近郊でも評判の戦士たち。中でも高い戦闘能力を誇っているのが我らの主人公である次女のエリザベスという設定。
そんな5姉妹の住むロングボーンに
ビングリー兄妹とその友人であるダーシーがやって来て、そこから原作のまま結婚ストーリィが始まります。ビングリーは戦士訓練を受けていない人の好い青年ですが、一方のダーシーは優秀な戦士という次第。
外出すればゾンビが襲ってきますし、舞踏会を開けばゾンビがやはり襲ってくるというストーリィ。そこを平然とリジーたちが打ち倒すのですから、原作を知る方はさぞおやおやと思われることでしょう。
それでも原作を損なうことなく、自然に「高慢と偏見」の世界に嵌っているのですから、ゾンビ版とはいえお見事。
本書も十分面白いのですが、その面白さはあくまで原作どおりのストーリィ展開にこそあるのですから、「高慢と偏見」の面白さはやはり比類がないと改めて感じます。
 
リジーがゾンビを易々と撃退したり、
レディ・キャサリン配下のニンジャと対決する等、原作者真っ青の展開もありますが、原作と比較して本書だから面白いという主なところは次の箇所。
・何故
シャーロット・ルーカスコリンズと結婚したか。
・何故ダーシーはビングリーとジェインの恋を妨げたか。
・ダーシーはどんな条件で
ウィカム支援を承知したか。
 
原作の面白さが損なわれることはまずありませんので、「高慢と偏見」ファンは心配せずに本書を読んでみてください。原作からちょっとアレンジされた部分をかえって痛快と楽しめるのではないかと思います。


※「マッシュアップ小説」とは、名作の枠組みや筋立てを借用し、そこに別の要素を組み合わせたり、時代設定を変えたりして別ものに作り替えた作品のことだそうです。

※映画 → 「高慢と偏見とゾンビ

    


      

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