ニーナ・ゲオルゲ作品のページ


Nina George  1973年ドイツ生。作家、ジャーナリスト、コラムニスト。小説、ミステリー、ノンフィクションを含め27冊の本 600以上の短編とコラムを執筆。
「セーヌ川の書店主」はドイツ国内でロングセラーになったほか、37ヶ国で出版され、累計 150あmン部を超える世界的ヒット作となった。

 


             

「セーヌ川の書店主」 ★★
 原題:"Das Lavendelzimmer" 
    訳:遠山明子


セーヌ川の書店主

2013年発表

2018年07月
集英社

(2100円+税)



2019/06/11



amazon.co.jp

艀を改造した書店船“文学処方船”の店主はジャン・ベルデュ、50歳。その命名は、文学は心の処方箋になりうる、という考えから。
しかし、そのジャン自身はというと、20年前、恋人に裏切られたという心の傷を今も抱え、人生も恋とその時から止まったまま。

ふとした偶然から、その恋人
マノンから届いた手紙、読まずに放り出していたその手紙を、20年を経て読むことになります。
それがきっかけとなってベルデュは文学処方船の綱をほどき、マノンの故郷であるボニューを目指して川を下り始めます。
お供は、2匹の野良猫と、一緒に連れていってくれと強引に乗り込んできた若い作家の
マックス・ジョルダン
そして旅の途中から、
サルヴォ・クーネオという料理上手の中年ナポリ男が仲間に加わります。
ジャン、マックス、サルヴォ、それぞれが胸に抱えた問題ごとを乗せ、船は
セーヌ川〜ソーヌ川〜ローヌ川と下っていきます。

<ロードノベル>というものは、見知らぬ場所、新たな出会いがあるからこそ楽しいもの。本ストーリィは船、川という違いはあっても、ロードノベルの面白さには変わりありません。
しかも“文学処方船”という設定がユニーク。

一言でいえば、恋を失い本の世界に閉じこもっていた主人公が、漸くにして過去の恋に向かい合い、新たな恋に向けて再び時計の針を進め始めようとするための船出、というストーリィ。

川を下るストーリィというと、筏でミシシッピ川を下った
ハックルベリー・フィンの冒険を思い起こしますが、ハックの冒険と違い、男3人の船旅にはいろいろ重たいものもあるようです。
それでも、新たなスタートを3人が切るまでの経緯、新たな恋の始まりという展開は、新たな世界が幕を開けるような清々しい幸福感があります。
良い味わいの、本&恋愛ストーリィです。

     


   

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