エドゥアルド・ベルティ作品のページ


Eduardo Berti 1964年アルゼンチン・ブエノスアイレス生。ジャーナリスト、テレビ・ドキュメンタリー作家としても活躍。

  


 

●「ウェイクフィールドウェイクフィールドの妻」● ★★★
 
原題:"WAKEFIELD/La Mujer de WAKEFIELD"
     訳:青木健史




1999年発表

2004年10月
新潮社刊

(1600円+税)



2005/01/05



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謎の失踪をとげた挙句、その20年後に何事もなかったように自宅へ戻ったという夫を描いたホーソンの「ウェイクフィールド」。本書はそれを、妻の側から描いた長篇小説です。

「ウェイクフィールド」は短篇小説に過ぎませんが、ストーリィのあらゆる点に謎があり、それでいてその謎が明らかにされないまま書き終えられているという作品です。
夫であるウェイクフィールドの行動は謎ですが、その一方で、放置された妻の側にも謎は多くあるのです。

その意味で、いったん「ウェイクフィールド」を読んだならば、本書「ウェイクフィールドの妻」に興味そそられること、間違いありません。原作においてまるで触れられていない妻の状況が、そこに描かれているのですから。
もちろん、原作から1世紀半も隔たって現代作家の手により書かれた小説ですから、本書はホーソンの意図がどのようなものだったかを明らかにしたものではなく、あくまでベルティの創作です。
そしてそのストーリィはと言うと、予想をはるかに越えてミステリアス、かつスリリング。昨今のミステリ小説を陵駕する面白さに充ちています。
夫の失踪という単純な出来事に端を発しているストーリィだからこそ、かえって妻・エリザベスの心理状況はいかなるものだったのか、という面白さが際立ちます。

原作「ウェイクフィールド」の謎はそのまま謎として残し、原作を損なうことなく魅力に富んだ新たなる小説を生み出した、という風なのです。。
小説の面白さの原点に立ち返った作品、そう感じます。

 


  

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