ジャバ・ザ・ハットをはじめとするハット人の言葉。中央の権勢が及ばない外縁領(Outer Rim Territories)にはハットのギャング組織が牛耳っている地域も少なくありません。そのようなところでも銀河基準語が優勢ですが、ハット語の勢力もかなり強くなっています。
ハット語の初登場は「新たなる希望」のグリードの台詞です。公開当時はそれがハット語であるという情報はなかったのですが、「ジェダイの復讐」でハット語が登場した結果、さかのぼってグリードの言葉もハット語であるという設定になったようです。「ファントム・メナス」でもハット語の出番は多く、シリーズ中でももっとも知名度の高い異言語となっています。
このハット語に関連した面白い現象として、一方は基準語、もう一方はハット語で話しながら会話が成立するということがあります。「新たなる希望」でのハン・ソロとグリードのやりとり、「新たなる希望《特別篇》」でのハンとジャバの掛け合いなどがそうです。これは一体どういうことなのでしょうか。おそらく、お互いに相手の言語は話せるが、自分を優位に立たせるために自分の言語を使い通しているのではないでしょうか。これは、上の2つの会話が交される状況を考えれば、うなずけます。
一方、「ファントム・メナス」でのワトーの例のように、商売などの場面では客に合わせて臨機応変に言語を使い分けています。ただしジャワ族や「ジェダイの復讐」でのランドとナイン・ナンの会話は、これでは説明がつきません。現実的なことを言ってしまうと、これら異言語同士の会話は基本的にハンとチューバッカの会話や3POとR2の会話の延長上にあり、その影響を強く受けているため、自然にそうなってしまったのではないでしょうか。この2つの例では、お互いの言語は理解できるが、発声・調音器官の都合から相手の言語を話せないという状況になっています。(3POはR2の言語も話せるでしょうけど。)多少の矛盾があろうと、ルーカスの言語に対する感性はとても鋭いと言えます。
■ハット語の例
ハット語の創造に関する情報は少ないものです。「ファントム・メナス」のメイキング本によると、ハット語はインカ諸語のひとつでカトゥアと呼ばれる言語が元になっているとのことです。実はこのカトゥア語というのも謎でして、手持ちの言語一覧をいくつか参照しても載っていません。原書の Catua は邦訳書ではクタとなっていますが、どう考えてもそうは読めません。また、AFAではクエチャ語、SWUではクエンチュア語となっています。語感からするとどうもケチュア語(Quechua)のことを言っているようです。グリードの台詞はそれほどでもありませんが、ジャバの台詞は確かに部分的にケチュア語っぽいところがあるのは事実です。
FODE/BEED: ...tah oos azalus ooval Podraces全部がそうではないのですが、特に上の例などは英語を崩して創ったのは明らかです。推測の域を出ませんが、 脚本の時点で既にハット語が書かれてあるということは、「ファントム・メナス」のハット語はベン・バートではなく、ジョージ・ルーカスが自分で書いているのかもしれません。 似たような意味を含む台詞に同じ単語が使われているところがあるので、多少は意識しているようですが、大部分はその場の勢いで割と自由気ままに書き綴っているように見受けられます。結果として、時々英語の影響をまともに受けてしまう部分もあるのでしょう。
(the most hazardous of all Podraces)
(すべてのポッドレースの中でもっとも危険なもの)
■引用集
■日本語に聞こえるハット語
JABBA (in Huttese subtitled): There will be no bargain.この後半部分に、この言葉が聞こえてきます。まるで「ソロを取り引きする気はない」の意で「ソロ、まけちゃいや」と言っているみたいです。日本語で「バーゲン」と言うと「安売り」のことですが、英語の bargain は本来は「値段や条件についてお互い納得のいくまで話しあう」ことを意味します。一言で言えば「交渉する」あるいは「取り引きする」といった感じになります。このうち、「納得のいくまで」という部分に注目すると、「安く手に入れることが出来た」という「安売り」の概念が派生します。最初の台詞の bargain はもちろん「交渉」の意味で使われているわけですが、日本語に詳しくない人が適当に辞書から単語を拾うと「bargain=安く売る=まける」になる可能性があります。「まけちゃいや」だなんてジャバも可愛い言い方をしますね。
(ジャバ(字幕付きのハット語で):交渉の余地はない。)
THREEPIO: We're doomed.
(3PO:私らはおしまいだ。)
JABBA (in Huttese subtitled): I will not give up my favorite decoration. I like Captain Solo where he is.
(ジャバ(字幕付きのハット語で):お気に入りの飾りを手放す気はない。ソロ船長はあそこに置いておくのが良い。)
BIB: He's no Jedi.
JABBA (in Huttese subtitled): This bounty hunter is my kind of scum. Fearless and inventive.
(ジャバ(字幕付きのハット語で):この賞金稼ぎは気に入ったぞ。怖いもの知らずで、頭も良い。)
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THREEPIO: Jabba offers the sum of thirty-five. And I suggest you take it
(3PO:ジャバ様は計3万5千お出しになるそうです。受けた方がよろしいですよ。)
JABBA (in Huttese subtitled): It's too late for that, Solo. You may have been a good smuggler, but now you're Bantha fodder.しかしCCGにはこの台詞のハット語版が収録されていて、ここでは bis kachata となっています。ということは、日本語に聞こえたのは単なる偶然だということです。日本語もハット語も音節構造が単純ですので、このように似た音が生じやすいのでしょう。ただCCGのハット語が、どこまで正確なのかはわかりません。もしかしたら、デサイファー社の担当者が自分の耳で聞いて書き取ったものかもしれません。あるいは、そもそもベン・バートが日本語を聞いて書き取る時点で「見つかっちゃった」の mitsu が bis になったのかもしれません。
(ジャバ(字幕付きのハット語で):もう遅いわ、ソロ。お前さんもいい運び屋だったかもしれんが、今じゃバンサのエサだわい。)
Uu a'kingsa riika pagh bagla bis kachata weenow con bantha poodoo. [CCG]
JABBA (in Huttese subtitled): Your mind powers will not work on me, boy.
(ジャバ(字幕付きのハット語で):おまえの心理力なんぞ、このわしには効かんぞ、小僧。)
「ハット語の創造」の項で紹介した通り、ハット語は一部ケチュア語が元になっているようです。ここでは、ケチュア語を手がかりに解読したハット語を紹介するために準備中です。
炭素冷凍から解放されたソロを連行させる時、およびルークとハンをサーラックの刑に連行させる時
ハット語 | ヤチャニチュー |
ケチュア語 | Yachanichu |
英語 | Take him/them away! |
日本語 | 連れていけ! |
ジェダイ・ロックの歌詞より
ハット語 | Ee-ma ta-ka-moo nan-kee |
ケチュア語 | Imataqa munanki |
英語 | "What" do you want? |
日本語 | あなたは一体何が望みなの? |
ハット語については今後さらに詳しく解説していく予定です。ご期待ください。 2000.3.2現在の状況:遅れています。 |